ヤンソンスのワーグナーにまつわる憶測 |
曲目/ワーグナー
1.歌劇「タンホイザー」:序曲 14:35
2.歌劇「タンホイザー」:バッカナール 12:47
3.歌劇「ローエングリン」:第1幕への前奏曲 7:46
4.歌劇「ローエングリン」:第3幕への前奏曲 3:20
5.楽劇「ワルキューレ」:ワルキューレの騎行 5:16
6.楽劇「神々のたそがれ」:ジークフリートのラインへの旅 13:33
7楽劇「神々のたそがれ」:ジークフリートの葬送行進曲 8:15
指揮/マリス・ヤンソンス
演奏/バイエルン放送交響楽団
演奏/バイエルン放送交響楽団
録音/200/03/16 ルツェルン
P:ウィルヘルム・マイスター
E:ディートリッヒ・スーロウ
P:ウィルヘルム・マイスター
E:ディートリッヒ・スーロウ
ソニー SICC-1172

最近聴いたCDの中で、気になった演奏であったので取り上げる事にしました。ヤンソンスは、オスロフィルの常任時代にEMIに一度ワーグナーのアルバムを録音しています。ただし、これは余り話題になりませんでした。この当時は北欧のオスロフィルとアメリカのピッツバーグ交響楽団の掛け持ちでシェフを務めていたバリバリの人気指揮者でした。まあ、小生が注目したのもこの時代で、2000年代になると今度はバイエルン放送交響楽団とロイヤル・コンセルトヘボウ管のシェフになります。大した出世です。そして、あれよあれよという間にウィーンにも進出して、何とニューイャーコンサートにも登場しています。そして、2016年も登場する事になっていますが、これは2000年以降で登場した指揮者の中で最多となる3度目です。そのヤンソンスは、今シーズンでロイヤル・コンセルトヘボウを退任し、このバイエルン放送交響楽団も噂では2018年に退任するようです。この2018年という数字はちょいと注目です。
そう、ベルリンフィルの常任のラトルがまた2018年で辞めると表明しているからです既に2017年からロンドン響の音楽監督になる事が決まっています。うーん、後継者争いの一角に参戦するという事なんでしょうか。ただ、ヤンソンスには弱みがあります。オペラを余り手がけていない事です。特にバイロイトにはお呼びが掛かっていません。要するにワーグナー指揮者とは認められていないんですなぁ。そんなことで、一念発起して再度ワーグナーのアルバムを録音して世に問うたというのがこのライブ録音では無いでしょうか。まあ、同世代ではラトルと最後まで争ったバレンボイムがいますからね。ヤンソンスも負けていられないのでしょう。ヨーロッパでは、ウィーンフィル、ベルリンフィル、コンセルトヘボウが何時もトップを争っているオーケストラです。その一角のコンセルトヘボウのシェフを務めたという事はヤンソンスをポイントの上では後押ししています。また、ウィーンフィルのニューイヤーに登場しているというのもポイントでしょう。ただ、コンセルトヘボウとベルリンフィルの両方のシェフを務めた指揮者は今までいませんから、ちよっと引っかかる所でもあります。
そういう下地があって、さらに足場を固めるためにはワーグナーのオペラが必要でしょう。そういう意味での成長の跡が伺えるのがこのディスクでしょう。オケがドイツというのもプラスに作用しているとは思いますが、1曲目のタンホイザー序曲からして、朗々としながら重厚な響きを導き出しています。それでいて、ヴァイオリンの響きはマイルドでシルキーなサウンドでアメリカのオケのようなキンキンとした響きではありません。正に2000年代のヤンソンスのワーグナーの音なんでしょう。選曲にもこだわりがあるようで、オスロ時代は金管バリバリの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」がトップで収録されていて、これ見よがしにオケを鳴らしていたのですが、ここでは、タンホイザーで金管と弦のバランスとアンサンブルの妙を前面に押し出しています。ただ、惜しむらくは普通のオーケストラコンサート用の演出になっている事で、本当の意味でのオペラの序曲という観点では演奏されていないという事でしょうか。
まあ、1曲目からしてちょいと方向性に疑問符が付きました。で、更に聴き進めていくと、ローエングリーンもオーケストラは美しい音色なんですが、どうもワーグナーの真髄から離れた所で音楽が進んで行きます。正直言って、最初聴いた時はこのアルバムほとんど印象に残りませんでした。聴き直してみて、オーケストラの響きには惹き付けられるものがあるにも関わらず、ヤンソンスの解釈にはちょいと強引な節回しが耳につき着いていけなかった所があるというのが本音です。
ところで、2009年の来日公演では後半にこのワーグナーの管弦楽曲を持って来たプログラムが演奏されています。で、ネットでその評価を拾ってみてもどうも、同じような印象の人が多いのに驚きました。うーん、ヤンソンスにとってワーグナーは鬼門なのでしょうかね。下は「楽劇「神々のたそがれ」:ジークフリートのラインへの旅」の演奏です。
閑話休題、2018年はヤンソンス75歳。ベルリンフィルの常任には最後のチャンスでしょうか。ネットではショートリリーフでの登板の可能性ありとなっていますが、ほんとうでしょうか。もっぱらの噂は、ペトレンコ、ネルソンス、ドゥダメルという事になっていますがどうもここにきてドタキャンのペトレンコが一歩後退という事で、年齢的に他のふたりはまだ30代という事もあり、ヤンソンスが浮上という事です。ただし、小生は伏兵としてハーディング辺りがきそうな気がしています。年齢的には40代ですし、ペトレンコのドタキャンの代役に立って株を上げたという事もありますし、2008年にDGと専属契約を結んでいるというのもプラス材料です。ただ、ネルソンスもDGの専属で2014年からボストン響の常任指揮者に就任し、ただいまボストン響とショスタコの全集に取り組んでいます。
ネルソンスとボストン響の録音スケジュールは下記を参照
この5月11日に開催されたベルリン・フィルの首席指揮者を決定するオーケストラ団員総会では、結局後任は決まりませんでした。まだまだ紆余曲折がありそうですね。
ベルリン・フィルの首席指揮者を決定するオーケストラ団員総会の模様は下記で知る事が出来ます。