イ・ムジチの四季-オリジナル・ジャケット・コレクション | geezenstacの森

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イ・ムジチの四季
オリジナル・ジャケット・コレクション

曲目/ヴィヴァルディ:協奏曲集《四季》(協奏曲集『和声と創意への試み』作品8から)
[CD 1~ CD 6]

 

協奏曲 第1番 ホ長調 RV269 《春》
01. 第1楽章: Allegro
02. 第2楽章: Largo
03. 第3楽章: Allegro (Danza pastorale)

 

協奏曲 第2番 ト短調 RV315 《夏》
04. 第1楽章: Allegro non molto
05. 第2楽章: Adagio - Presto - Adagio
06. 第3楽章: Presto

 

協奏曲 第3番 ヘ長調 RV293 《秋》
07. 第1楽章: Allegro
08. 第2楽章: Adagio molto
09. 第3楽章: Allegro

 

協奏曲 第4番 ヘ短調 RV297 《冬》
10. 第1楽章: Allegro non molto
11. 第2楽章: Largo
12. 第3楽章: Allegro

 

01. 01. 第1楽章: Allegro
02. 第2楽章: Largo
03. 第3楽章: Allegro (Danza pastorale)

 

1.フェリックス・アーヨ(1955年7月18-21日 モノラル録音)
2.フェリックス・アーヨ(1959年4-5月 ステレオ録音)
3.ロベルト・ミケルッチ(1969年9月 ステレオ録音)
4.ピーナ・カルミレッリ(1982年7月21-24日 デジタル録音)
5.フェデリーコ・アゴスティーニ(1988年7月18-26日 デジタル録音)
6.マリアーナ・シルブ(1995年7-8月 デジタル録音)

 

演奏/イ・ムジチ合奏団
  野入志津子(リュート:6)
  フランチェスコ・ブッカレッラ(チェンバロ:6)

 

録音/ アムステルダム(1)、ウィーン(2)、ラ・ショード・フォン、スイス(3-6)
 
DECCA UCCD-4826/31

 

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 このアルバムは、イ・ムジチによる6種類の『四季』を新マスターにより復刻され、オリジナル・ジャケットをあしらった紙ケースにそれぞれ収納し、紙ボックス仕様で2013年の来日コンサートに合わせて発売されたもので、日本独自の企画盤です。こういう企画は、多分日本だけしか出来ないでしょうね。何しろ「四季」しか収録されていません。CPは無茶苦茶悪いです。1955年の初録音から1995年のデジタル録音まで、6種類の『四季』をフィリップス・レーベルに録音し、1995年までの累計売上が280万枚、2013年現在までに300万枚近くを売り上げているイ・ムジチ合奏団です。ミケルッチ盤やカルミレッリ盤は毎週のようにクラシック・チャート50位以内にランクインしており、2013年のSound Scanクラシック累計チャートでは、現在入手可能なロベルト・ミケルッチ盤が27位、ピーナ・カルミレッリ盤が53位にランクインしており(7月3日現在)、今なお日本人の心に響き続ける永遠のベストセラーといえるでしょう。

 

 現在までに、イ・ムジチ合奏団は8人のコンサートマスターが歴任し、「四季」の録音を7種リリースしています。最新のものは2012年に録音していますが、こちらはデッカではなく、Dynamicレーベルです。コンサートマスターは、8人目のアントニオ・アンセルミですが、殆ど話題にはならなかったのではないでしょうか。カップリングも今までとは毛色が違い、ブリテンの「シンプル・シンフォニー」なので、そういう面でもちょっと違和感があるのは否めません。ちなみに、コンマスで「四季」を録音していないのは、3代目のサルヴァトーレ・アッカルドと第7代のアントニオ・サルヴァトーレになります。

 

 まずは、創設3年後の1955年に、初代フェリックス・アーヨの元で録音したモノラル盤です。この録音はオランダではもちろんフィリップス・レーベルで発売されましたが、アメリカではコロンビアと提携したいた関係でEPICレーベルから発売されました。で、日本では発売の窓口が無かったので米コロンビアのEPICを通じて原盤を供給という事で日本コロムビアが設立した日本エピックが発売窓口になり1959年に発売されました。ところが、1960年代になり、フィリップスは日本に進出する事になり、このエピック盤は当然廃盤になります。当然フィリップスは既に録音されていたステレオ盤を投入する事になりますから、このモノラル盤のレコードは発売から2年足らずで市場から消える事になります。殆ど幻の存在だったといっても過言ではないでしょう。下がそのジャケット写真です。このモノラル盤がレコードで再発されるのは廉価盤時代になってからです。

 

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 当時22歳のアーヨのソロは流麗ながらも引き締まった演奏でアンサンブルは今聴いても高水準なものです。意外と通奏低音としてのチェンバロの音が大きめに収録されているのに驚きます。デビューコンサートには御大のトスカニーニが聴きに来ていて、この演奏にえらく感激したそうで、彼らに最高の賛辞を送ったそうです。それが下記の言葉になって残っています。

 

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 このモノラルの演奏、ネットでは見つけられませんでしたのでアップしてみました。聴いてみて下さい。ちなみに、このボックスに納められている演奏の中では最短の演奏です。ちなみに最長は同じアーヨの59年盤。ということで、アーヨの2枚が最短と最長なのは興味深い結果です。これではその後の演奏は何かしら工夫をしないといけないというプレッシャーがありますわな。

 

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 さて、次は有名な1959年アーヨのステレオ録音です。日本に「四季」ブームを巻き起こした一枚です。そして、イ・ムジチの四季は一家に一枚といわれるほどにヒットしました。当然我が家にもこの四季は鎮座していました。ただし、最初入手したのはアメリカ盤でした。今はもう手放してしまいましたが黄色い派手なジャケットデザインで、国内盤とのセンスの違いに驚いたものです。現在手元に有る国内盤は、四季の楽譜つきの豪華なアルバムです。単品ではカラヤンなんか目ではなかったのです。それまでのミュンヒンガーなどのドイツ的でがっしりした表現とは違う流麗な演奏で、それは「春」冒頭を聴けば一目瞭然です。これは何処かカラヤン得意のレガート奏法を取り入れ、なめらかで角のとれたフレージングで、艶やかさを増したアーヨのソロはまさにイタリアの陽光輝く「四季」そのものといった風情です。日本の四季の感性にこれほどマッチした演奏はそれまで無かったのでしょう。「秋」は秋らしく落ち着きがあり、「冬」は冬らしく厳しい表情が聴いて取れます。これぞまさしく四季という1960年代を代表する演奏です。この時期からイ・ムジチの来日は頻繁になり、また、日本全国津々浦々まで足を伸ばして生の四季を届けてくれたのです。こういうプロモーションも後押ししたんでしょうな。

 

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 アーヨのステレオ録音から10年後の1969年、2代目ロベルト・ミケルッチが録音した1枚は、これまたアーヨ盤を引き継ぐ形でベストセラーを続けます。アーヨのステレオ盤は、チェンバロがちょっと奥まった響きで通奏低音に徹している感じがありますが、このミケルッチ盤は即興性も加え、かなり自由にチェンバロが撥ねます。多分同時期に録音されたマリナー/ASMFの演奏を意識しているのではと思われます。そして、アタックが明確になり、サウンドはスッキリし、全体にキビキビしている印象があります。ここら辺は創設メンバーであるミケルッチは、アーヨ盤にも参加していたはずなので、同盤は59年盤へのアンチテーゼともとれるところです。まあ、今でもこの演奏が聴き継がれているのには、現代楽器での四季のスタンダード的なアプローチとしての評価ではないでしょうか。

 

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 2年間はアッカルドとの2人体制の後、1973年に就任したピーナ・カルミレッリの録音は、イ・ムジチとしては初のデジタル録音です。彼女は当時68歳という歴代最高齢のコンマスでした。今でも人気のあるのはアーヨとミケルッチの中間的なアプローチがなされ、女性らしく繊細でソロは品がよく伸びやかでよく歌っています。、他楽器とのバランスが一番いいのではないでしょうか。デジタル初期とはいえ、その録音のよさが手伝い、各パートの動きもクリアーに捉えられています。

 

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 1987年、45歳若いフェデリーコ・アゴスティーニが就任し、「四季」は直後の1988年に録音しています。もう。この時代は古楽器による演奏がかなり幅を利かしていました。そんな中での現代楽器のアプローチはオルガンを採用する事で今度は一転、幻想的なムードも漂わせる演出になっています。このアゴスティーニの演奏は映像でも公開され奇抜な衣裳と過去と現代を交えた演出が話題にもなりました。しかし、発売当時はバラバラでしたから、今ならCDとDVDとセットで発売したらそれなりに話題になる演奏として評価されるのではないでしょうかね。

 

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 デッカのこのボックスの最後を飾るのは、1992年に就任したマリアーナ・シルブのソロによる録音です。初のイタリア人以外(ルーマニア生まれ)のコンサートマスターで、その1995年録音では、バロック音楽の自由な装飾を生かしてオルガンにリュートも加わりこれまでの方向性に新鮮な効果を付け加えているようです。ただ、このシルブ盤はこれまで聴いたことがありませんでした。もう、時代はイムジチの時代では無くなっているんでしょうな。小生も購入するCDはすべからく古楽器の演奏に変わっていました。ですから、この汁部の演奏はこのセットで初めて耳にした事になります。ここで聴き競べている春の演奏では、シルブは第1楽章と第3楽章は最速です。それでいて叙情楽章はお染めのテンポを採ってメリハリをつけています。多分に古楽器の演奏を意識した演出といえるでしょう。ただし、この演奏はもう注目されるものではなくなっているのかネットでは見つける事が出来ませんでした。

 

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 次は参考までに、最新のアンセルミがソロをとる最新の演奏のプロモーションの映像です。

 


 四季三昧できるこのセット、イ・ムジチファンには堪らないアイテムでしょう。