
駆け落ちした旗本の妻女と若党の捜索を頼まれた佐平次たち。彼らの子分になった三太がふたりの居場所を突き止めるのだが、何者かがふたりをどこかへか連れ去り、三太は尾久村の荒れ寺に監禁されてしまう。一方、深川一帯の裏社会を取り仕切っている又蔵は、清廉潔白で袖の下がきかない岡っ引きの佐平次を邪魔に思い、佐平次の人気を落とそうと謀るのだった。美貌の男・鶴吉を岡っ引きに仕立て、佐平次に対抗させるのだが・・・・・・。書き下ろしで贈る大好評シリーズ第十弾!--データベース---
前巻の続きのような設定のストーリー展開です。バラエティさを持たせるために旗本の妻女と若党の駆落ちが冒頭描かれ、新しく子分になった三太が活躍します。しかし、雨の張り込みの中で動きがあり、その時三太は尾久村の荒れ寺に監禁されてしまいます。この三太、たまたま訪れた旅者の渡世人に偶然助けられます。これが意外な伏線になります。
前巻では、鳥越の岡っ引の松五郎が登場しましたが、ここでも深川の遊女屋の「加納屋」の主人又蔵とくんでまたぞろ佐平次の評判を落とそうと画策します。この又蔵は深川・本所一帯のならず者の親玉でもあるのです。あれ、前作ではその役目を末五郎が演じていたのですが、ここでもう一人現われたことになります。うーん、又蔵は松五郎の上に立つ者という設定のようです。そして、ここで登場するのが佐平次と張り合うことの出来る美貌を持った鶴吉です。そして、またぞろ事件をおこして佐平次をおとしめようとするのです。
今回の事件はちょっとスケールがでかくて、遠州から流れて来た盗賊を使っての仕掛けです。佐平次の近所でばかり、商家を襲わせ一家を皆殺しにするという残虐な手口です。しかし、盗んだ金銭は大した額ではありません。ここが不思議な所です。この事件を佐平次と南町の押田敬四郎の鑑札をもらった鶴吉が同時に追いかけ競わせるのです。佐平次に負けない美貌を持つ鶴吉の人気は急上昇していきます。ただ、この鶴吉は晒を巻いています。読んでいてここが引っかかる所です。さて、鶴吉の正体とは・・・・
この巻の章立てです。
第一章 駆落ち
第二章 鶴吉親分登場
第三章 竜虎の対決
第四章 佐平次の危機
第二章 鶴吉親分登場
第三章 竜虎の対決
第四章 佐平次の危機
事件は佐平次たちの視点で描かれていきます。平助の鋭い鑑札で、犯人一味に軽業師が関わっていることを突き止めます。実はこの盗賊たち、駆け落ちした旗本の妻女と若党の捜索をしていた三太かせ捕らわれて廃寺に閉じ込められている所を助けてくれるのです。そんなことで三太は恩人と思っているのですが、佐平次が調べを進めるとこの者たちが一味と確信します。一人は軽業師の源七、常吉、そして熊五郎という三人組です。彼らは又蔵の息のかかった金三(古道具屋、野上屋の主)から指図を受け、江戸で盗みを働いているのです。しかし、この金蔵は実は鶴吉に通じてもいるのです。鶴吉の正体は寺の稚児で又三が見つけて来た者です。佐平次と美貌を争うということは何かしら曰くがあります。
鶴吉はモテますが、決して女好きではないようです。このところが引っかかる所で、最初佐平次たちは衆道(ホモ)ではないかと疑います。しかし、違ったんですなぁ。何と鶴吉は女だったのです。これは佐助の女である芸者の小染めが女の感で見抜いたことです。そう言えば胸高に晒を巻いているのは胸のふくらみを隠すためだったようなのです。しかし、江戸時代、女が月代を剃ることなんて出来たのでしょうかね?小説は具体的な映像を伴わないのでどのようにもストーリーが作れますが、この小説のカバー絵を見ても解るように二人ともちょんまげ姿です。鶴吉が女だてらにこんな髪型にするもんでしょうかね。また、声も伴えばすぐに女だと解ってしまいそうなものです。ましてや、喉仏の有無でも判別は着くでしょうに・・・・とまあ、粗を探したらきりがありません。
さて、事件は鶴吉の活躍で盗賊は一網打尽で捕まります。これも佐平次たちには寝耳に水です。今まで佐平次の済む長谷川超周辺で起きていたのに、賊が捕まったのは芝です。鶴吉たちは張り込んでいて、未然に押込みを阻止して捕縛しています。これには裏があると読んだ佐平次たちは、三太を尾行をつけ裏で金三以下の又三の仕組んだ一部始終の天松を探り出します。
で、押田敬四郎の口利きで、牢屋同心の藤原安次郎らに手を回し、獄中の源七らに面会をし、事の真相を明らかにするように説得します。はたして、事件は佐平次たちが読んだような筋書きで終焉を迎えます。
そうそう、この源七らとの面会で三太の捕まっていた廃寺の床下に侍の死体があったことが知れ、もう一つの駆落ち事件もあっという間に解決してしまいます。早い話しが、大した事件ではなかったのです。
ところで、鶴吉の正体を暴いた佐平次ですが、鶴吉ことお鶴が女として佐助に迫ることになります。はたして、次巻以降どういう展開になることやら・・・・