ルービンシュタイン/ドラティのグリーグ
曲目/グリーグ
ピアノ協奏曲イ長調 op.16
1.第1楽章 allegro molto moderato 12:21
2.第2楽章 adagio‐attacca 5:17
3.第3楽章 allegro moderate malt e marcato‐Quasi Presto‐andante maestoso 9:19
「ペール・ギュント」 op.46より*
1.朝 4:19
2.アニトラの踊り 3:44
3.アラビアの踊り 4:33
4.オーゼの死 4:47
ピアノ/アルトゥール・ルービンシュタイン
指揮/アンタール・ドラティ
アンダース・ノルキスト*
演奏/RCAビクター交響楽団
デンマーク放送交響楽団*
指揮/アンタール・ドラティ
アンダース・ノルキスト*
演奏/RCAビクター交響楽団
デンマーク放送交響楽団*
録音/1949 ニューヨーク
1956*
1956*
Membran 233425-13

レコード時代はルービンシュタインにはまったく興味がありませんでした。というか、60年代はRCAというレーベル自体に興味が無かったのでほとんどレコードを買いませんでした。小生にとってアーティストが地味というのもあったのでしょう。ハイフェッツも名演といわれるメンデルスゾーンやチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を聴いてもちっとも良さが分りませんでした。のちに、ルービンシュタインはバレンボイムと組んでベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を録音しましたが、どうもバレンボイムがよそよそしく購入しても一度聴いたきりでうっちゃってしまったのを覚えています。
ルービンシュタインはポーランド生まれですからやはりお国もののショパンは聴きものなのでしょうが、どうもサポート陣がちょいとひ弱という印象があり、食指は動きませんでした。全般に当時のRCAのソリストはアメリカ国内のオーケストラを伴奏に宛てがわれていてマーケット的に失敗していたのではないでしょうかね。まあ、これは当時のCBSにも当てはまる事ですけどね。
ルービンシュタインは1887年生まれで1982年まの95歳で亡くなっています。さすがに視力の低下で1977に引退していますがそれでも膨大な曲目を録音しています。協奏曲も名盤のショパンを筆頭にチャイコフスキー、ラフマニノフ、ベートーヴェン、シューマンなど主だった作曲家のものを録音しています。ですがどうしてもグリーグはイメージ出来ないでいました。これはメンブランの歴史的録音集「マスターピース・オブ・クラシカル・ミュージック」に含まれる一枚ですが、なんでグリーグ?という印象を持った一枚です。それも、伴奏はドラティ指揮のRCAビクター交響楽団です。まあ、このオーケストラに関しては色々な説があり、ニュヨークフィルの別名であったり、臨時編成のオーケストラであったりしたようです。ルービンシュタインはこの録音の後に、ウォーレンシュタイン/RCA管弦楽団とも再録(1961)していますが、やはり伴奏がぱっとしません。そして、もう一つ、1942年に録音したオーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団というのもあるようですが、小生は未聴です。
で、この演奏ですが、ルービンシュタイン62歳、ドラティ47歳の時の録音です。オーケストラビルダーとしてデラス響を立て直し、次のミネアポリス交響楽団のポストに就いた年です。RCAに抜擢されたのでしょうが、まだまだ頭角を現す前です。その後のマーキュリーでの活躍を鑑みるにRCA見る目が無かったんでしょうかね。ともかく、あまりこちらも期待しないで聴いた一枚です。

ところが、これがことのほか名演です。多分ルービンシュタインのグリーグも初めて聴いたのですが、さすがルービンシュタインの一番充実していた時期の録音になるのでしょう。ルービンシュタインの粒立ち良いピアノが冒頭から炸裂します。これに対して、ドラティもルービンシュタインのゆっくりとしたテンポにぴったりと合わせています。そんなことで、引き立て役に徹しているかと言えば、決してそうでは無くオーケストラを伸び伸びと響かせ、ソロをクローズアップさせて要所々々をきっちりと押さえると言う理想的な伴奏を務めています。というわけで、結構スケールの大きい演奏です。ステレオでの再録とほぼ同じテンポですが、オーケストラはまったく雰囲気が違います。ウォーレンシュタインはロマンティックすぎて響きがベチャとしているのに比べ、ドラティはすっきりさっぱりという響きで良い意味ルービンシュタインのピアノを引き立てる演奏に徹しているのですなぁ。何時ものようにYouTubeの音源で確認してみましょう。
で、下がウォーレンシュタインとの録音です。同じオーケストラでありながらまったくイメージが異なります。
第2楽章は豪快な跳ねるメロディの奔出から一転し、広大な草原をはるか上空から見下ろすような開放感があり、そこに吹き渡る風を思わせるタッチでピアノが奏でられます。この演奏を聴いてグリーグの伝記映画「ソング・オブ・ノルウェー」が目の前に浮かびました。この映画、一度VHSで発売された事がありますがDVDで一度もリリースされないのが不思議です。グリーグの素晴らしい伝記映画なんですけどねぇ。
第3楽章はアタッカによって繋がっていますが、開放感のある明るいムードを維持したままピアノが奏でるフレーズが踊ります。快活なアレグロでスケール感を残したまま第1楽章とは好対照の演奏になっています。リストが「これが本当の北欧だ!」と叫んだと言われる北欧の舞曲的メロディが溢れています。中間部のピアノ・ソロの美しいメロディはまるでショパンを思わせる響きで自由に歌っている雰囲気があります。テクニックは完璧なルービンシュタインの奏でるグリーグは音楽の中にストーリーを感じる事が出来ます。これを万全にサポートするドラティにも感服です。こういう録音も含めて、ドラティは膨大な録音を残していますが、レーベルを超えてどこかが集大成して欲しいものです。多分カラヤンやマリナーに匹敵する録音を残しているでしょうね。
第3楽章はアタッカによって繋がっていますが、開放感のある明るいムードを維持したままピアノが奏でるフレーズが踊ります。快活なアレグロでスケール感を残したまま第1楽章とは好対照の演奏になっています。リストが「これが本当の北欧だ!」と叫んだと言われる北欧の舞曲的メロディが溢れています。中間部のピアノ・ソロの美しいメロディはまるでショパンを思わせる響きで自由に歌っている雰囲気があります。テクニックは完璧なルービンシュタインの奏でるグリーグは音楽の中にストーリーを感じる事が出来ます。これを万全にサポートするドラティにも感服です。こういう録音も含めて、ドラティは膨大な録音を残していますが、レーベルを超えてどこかが集大成して欲しいものです。多分カラヤンやマリナーに匹敵する録音を残しているでしょうね。
さて、このCDメインのピアノ協奏曲にプラスして「ペール・ギュント」の音楽が収録されています。何とも付け足し的録音で、第1組曲から2曲、第2組曲から2曲という変則的な収録です。しかし、この演奏以外といけます。1956年というクレジットがありますが立派なステレオ録音です。しかし、多分これまでに本では正式にリリースされた事の無い演奏でしょう。指揮者のアンダース・ノルキストなんで聴いたことがありません。Anders Norquistをネットで検索しても引っかからないブラウザもあります。どうも北欧の指揮者らしいのですが、よく分かりません。
しかし、演奏は意外とマトモでローカル色をぷんぷん漂わせた演奏です。第1曲の「朝」はカラヤンとはほど遠い弱音無視の演奏ですが、雰囲気的には朝なんですなぁ。冒頭のフルートの旋律も中々味がありますし、続くオーボエも心地よい響きです。何よりも、楷書的でありながら地方的訛りを感じさせる演奏で、止めや跳ねがきっちりと演奏さ変にロマンティックに流れてない所が良いです。まあ、「朝」だけでも聴いてみて下さい。
そんな事で、楽しめて一枚でした。このセット「メンブラン」からの発売でしたが、あっという間に市場からは消えました。