クリュイタンスのベートーヴェン その3 | |
CD1
・交響曲第1番ハ長調 作品21
・交響曲第3番変ホ長調 作品55『英雄』
・『プロメテウスの創造物』 作品43~序曲
CD2
・交響曲第2番ニ長調 作品36
・交響曲第4番変ロ長調 作品60
・『エグモント』 作品84~序曲ヘ短調
CD3
・交響曲第5番ハ短調 作品67『運命』
・交響曲第7番イ長調 作品92
・『フィデリオ』 作品72~序曲ホ長調
CD4
・交響曲第6番ヘ長調 作品68『田園』
・交響曲第8番ヘ長調 作品93
CD5
・交響曲第9番ニ短調 作品125『合唱付き』
グレ・ブロウェンスティーン(ソプラノ)
ケルステン・マイヤー(メゾ・ソプラノ)
ニコライ・ゲッダ(テナー)
フレデリック・ガスリー(バリトン)
ベルリン聖ヘドヴィヒ大聖堂合唱団
ケルステン・マイヤー(メゾ・ソプラノ)
ニコライ・ゲッダ(テナー)
フレデリック・ガスリー(バリトン)
ベルリン聖ヘドヴィヒ大聖堂合唱団
指揮/アンドレ・クリュイタンス
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1957~1960 グリューネヴァルト教会、ベルリン
P:ルネ・シャラン、フリッツ・ガンツ、クリストフィールド・ビッケンバッハ
E:ホルスト・リントナー、アーネスト・ローテ
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1957~1960 グリューネヴァルト教会、ベルリン
P:ルネ・シャラン、フリッツ・ガンツ、クリストフィールド・ビッケンバッハ
E:ホルスト・リントナー、アーネスト・ローテ
ERATO 6483032

クリュイタンスのベートーヴェンの3回目です。まあ、ネタとしては全集でしょう。以前チェスキーから発売されていたもの激安ボックスでしたが、その頃はあまり食手は伸びませんでした。そうこうしているうちに廃盤になり、近年ではフランスEMIから「Emi Coffrets Classiq」として発売されていました。しかし、EMIがユニヴァーサルに身売りしてからは解体され、ようやく最近ワーナーに発売元が変わって落ち着いたようです。この辺の流れ、wikiで確認すると、
2012年、ユニバーサルミュージック・グループがEMIのレコードレーベル部門を買収する。しかし、欧州委員会が欧州連合競争法に抵触することを理由に資産の一部の売却を命じたため、ユニバーサルはパーロフォン、コオペレイティヴ・ミュージック、V2レコード、サンクチュアリ・レコード、クリサリス・レコード、ミュート・レコード、EMIクラシックス、ヴァージン・クラシックス、および旧EMIのイギリス、ベルギー、チェコ、デンマーク、フランス、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロヴァキア、スペイン、スウェーデン部門をまとめて分離し、パーロフォン・レーベル・グループとして売りに出した(ただし、ビートルズ及び各メンバーのソロ音源とロビー・ウィリアムズのクリサリス時代の原盤権は引き続きユニバーサルが保有する)。
という事だそうです。で、ワーナーでの位置付けはどうなったかというと、上のジャケットでもお分かりの通り、どうも仏EMIの音源はERATOレーベルから発売になるようで、ジャケットの左隅に見慣れたエラートのロゴが配されています。ただし、中身は旧仏EMIの物をそのまま流用しているようで、録音データなどもざっくりとしたものしか表記されていません。しかし、ネット社会では詳しいディスコグラフィを紹介しているサイトがあるもので、そこのデータを借用すると以下のデータが得られました。
第7番 Feb. 1957, Grünewaldkirche, Berlin
第9番 Dec. 1957, Grünewaldkirche, Berlin
第5番 10,11,13th Mar. 1958, Grünewaldkirche, Berlin
第3番 Dec. 1958, Grünewaldkirche, Berlin
第1番 19th Dec. 1958, Grünewaldkirche, Berlin
第2番 15,16th Apr. 1959, Grünewaldkirche, Berlin
第4番 May 1959, Grünewaldkirche, Berlin
第8番 Dec. 1957 & Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin
第6番 2,3,9th Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin
プロメテウスの創造物序曲 Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin
エグモント序曲 Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin
フィデリオ序曲 Nov. 1960, Grünewaldkirche, Berlin
第9番 Dec. 1957, Grünewaldkirche, Berlin
第5番 10,11,13th Mar. 1958, Grünewaldkirche, Berlin
第3番 Dec. 1958, Grünewaldkirche, Berlin
第1番 19th Dec. 1958, Grünewaldkirche, Berlin
第2番 15,16th Apr. 1959, Grünewaldkirche, Berlin
第4番 May 1959, Grünewaldkirche, Berlin
第8番 Dec. 1957 & Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin
第6番 2,3,9th Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin
プロメテウスの創造物序曲 Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin
エグモント序曲 Mar. 1960, Grünewaldkirche, Berlin
フィデリオ序曲 Nov. 1960, Grünewaldkirche, Berlin
一応録音順に並べ替えてあります。これで分る通り、交響曲第7番からこのプロジェクトが開始された事が分ります。交響曲第8番については大部分は1957年に録音されたと思われますが、一部が1960年に録り直しが施されている事が分ります。この交響曲第8番、その昔はこの音源をモノラル化して、さらに古い録音のようにイコライジングされてフルトヴェングラーの演奏として流通した事があるといういわく付きの物です。確かにどっしりとした演奏で、骨太です。それでいて音楽はカンタービレに溢れていて聴いていて心がホットになります。基本的にインテンポで一般に言われる女性的表現とは一味違います。面白いのは第4楽章で冒頭のヴァイオリンをポルタメントで演奏させています。これは聴き逃せません。ひょっとしたらここの部分を録り直ししたのかもしれませんなぁ。

この全集、世間的には唐突な印象を受けます。何となれば、当時はカール・シューリヒトの方が頻繁にベルリンフィルに登場してそれなりの実績があったからで、仏EMIはシューリヒトはパリ音楽院管弦楽団と、そしてクリュイタンスはベルリンフィルと全集製作というプロジェクトを進行させます。ただし、小生的には先きの1955年の「田園」の存在が大きくものを言ったのではないかと推察します。フルトヴェングラーの再来かと思われるような演奏をクリュイタンスはやってみせたのですから。まあ、裏事情で当時シューリヒトとベルリンフィルが険悪な状態であったという事もあるのでしょうが、そういう流れがクリュイタンスに味方したのでしょう。
ただ、一つ残念なのはロケーションにグリューネヴァルト教会を使った事でしょう。やや残響が多すぎて音の響きに芯が無いという事でしょうか。それさえ我慢すれば、テンポは遅いがリズムは粘らないというクリュイタンスのベートーヴェンを堪能する事が出来ます。まあ、今からすると少々演奏スタイルは古く、フレーズの終わりにはテンポを落として溜を作ります。古物指揮者の多くが60年代頃までに多用していた演奏様式とも言えます。特に第9番なんかはそれが目立ちます。多分1957年頃はフルトヴェングラーをかなり意識して演奏していたのではないでしょうか。
ところで、このボックス全集はⓟが1995年となっています。という事は先に紹介している1994年マスタリングの「田園」とは異なるのでしょうか。結論は違います。同じ「田園」で比較してみると、こちらの物はやや高域が持ち上げてあります。さらにオリジナルのテープヒスがかなり押さえ込まれています。明らかに手を加えた音である事が分ります。その分、演奏がやや華やかに聴こえるという特徴があります。まあ、どちらかというと最近はミニコンポでクラシックを聴くという人が増えているので、そういうのに合わせた音作りがされているのかもしれません。ただし、ここでは比較出来るソースがあるからそう感じたもので、立派なオーディオ装置をお持ちの方ならともかく、一般的にこのボックスセットを買っても作られた音という印象は普通の人なら感じないのではないでしょうか。
個人的にはこのセットの1枚目の第1と第3「エロイカ」が収録された物が一番出来がいいと感じました。「エロイカ」と第5番はこの全集の中ではテンポは速めで音楽に推進力があります。クリュイタンスのベートーヴェンは人気があるようで、YouTubeには全曲がアップされています。その中から主だった物をピックアップして貼付けておきます。
第7番
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第9番