ベルリンフイルのベームの追悼演奏会
曲目/モーツァルト
Symphony N.25 in g minor K.183
1.Allegro con brio 8:04
2.Andante 4:17
3.Menuetto 3:45
4.Allegro 6:05
Symphony N.40 in g minor K.550*
5.Molto allegro 8:30
6.Andante - Mozart 8:05
7.Menuetto ( Alegretto) 4:40
8.Finale ( Allegro assai) 4:41
指揮/カール・ベーム*
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1982/10/03
1976/09/14 フィルハーモニー、ベルリン
1976/09/14 フィルハーモニー、ベルリン
ANF LCB003

今はユニヴァーサルといっていますが、1990年代はポリグラムといいました。その時代はカール・ベームはほとんど忘れられた存在でした。LP時代はカラヤンと競うようにベームのレコードは発売され話題になりました。そのレコード時代に完成されたレコードアカデミー賞を取ったウィーンフィルとのベートーヴェンの交響曲全集はCD時代になってもカラヤンのものは何度も再発売されましたがカール・ベームの全集は中々発売されませんでした。それほど人気がなかったのです。でも、彼が亡くなった1980年代にはこの指揮者の偉業を讃えて著名な指揮者はこぞって追悼演奏会を開催しました。それらの中で一番有名なのはカルロス・クライバーのものでしょう。何しろ、正規録音の少ない指揮者でしたから、ベートーヴェンの交響曲第4番7番のライブは。超ど級の演奏として今でも語り継がれていますし、カラヤン、ヨッフム、バーンスタインも追悼演奏会を開催していてライブも少なからず発売されていますが、今ではほとんど話題になりません。そういう者の中にこの演奏も含まれるのでしょう。これはベームが振る予定だったベルリンフィルの定期を指揮者無しで演奏しした記録です。
ただ、どういう経緯でこの録音が世の中に出たのかは知りません。ANFというメーカーから発売されたシリーズの中に含まれています。ANFは元々はANFコーポレーションという会社が有り、CD初期は輸入盤に日本語解説書を付けて結構面白いソフトを発売していました。社長がオペラに造詣が深かった関係で結構レアなオペラものを輸入販売していたと記憶しています。まあ、この当時から海賊盤に近いものも扱っていました。手元に「舞踏音楽300年」なんていう「VIVACE」というレーベルの6枚組のセットが有りますが、今考えると結構怪しい演奏が含まれています。暫くして倒産したらしく、その後「ANFソフト」と名前が変わり本格的に海賊盤を発売し出しました。前者は正規ルートでレコード店で扱っていましたが、後者は駅売りやスーパーのワゴンセールでしか見かけませんでした。で、この一枚はそのワゴンセールで販売されていたものです。多分エアチェックのライブ音源をシリーズ化したものでしょう。ただし、今となっては大変貴重な音源といえるのではないでしょうか。このCDのうたい文句は、
「これは最も優れた指揮者を讃えて行われた指揮者なしによるベルリン・フィル唯一のライヴ録音である。」
でした。
「これは最も優れた指揮者を讃えて行われた指揮者なしによるベルリン・フィル唯一のライヴ録音である。」
でした。
ここで収録されているのはモーツァルトの交響曲第25番だけです。この日の演奏会、他にどんな曲が演奏されたのかは調べてもちょっと分りませんでしたが、この曲が指揮者無しで演奏されたというのは事実のようです。まあ、世界一のスーパーオーケストラですから、こういう芸当は手慣れたものなんでしょうが、一流の指揮者だけが登場するオーケストラですから、確かにこういう機会は無いのが普通でしょう。ベームはベルリンフィルで唯一モーツァルトの交響曲全集を完成した指揮者ですから、そのベルリンフィルがベームに敬意を表して指揮者無しで演奏したというところがこの演奏の特色であり、この演奏の価値が有ります。
この1982年はコンサートマスターとしてはまだミシェル・シュワルベが在籍していました。多分、この演奏会をリードしたのも彼の様な気がします。もちろん、彼はベームの指揮のもと交響曲全集の録音にも参加したコンサートマスターですからベームの演奏の特徴は知り尽くしていたことでしょう。
交響曲第25番 演奏時間比較
この曲は、規模的には室内管弦楽団程度の編成での演奏を前提に書かれていますが、特徴2本のファゴットとともにト調のホルン2本、変ロのホルン2本の計4本のホルンが使われていることでしょう。ましてや、この曲が短調の極めて稀な作品というのが最大の特徴でしょう。このあたりは、1768~69年頃作曲のハイドンの交響曲「第39番」ト短調を参考にしている節があります。同じ短調でハイドンも4本のホルンを同様に使用しているからです。この曲は音楽の友の社のポケットスコアを所有していますが、それに拠ると晩年ウィーンに移り住んでからの予約演奏会でもこの曲を取り上げているということからも分るように、本人も気に入っていた曲でしょう。
演 奏 者 | 第1楽章 | 第2楽章 | 第3楽章 | 第4楽章 |
ベーム/ベルリンPO,1968 | 08:35 | 04:55 | 03:48 | 06:36 |
ベーム/ウィーンPO,1978 | 08:12 | 03:23 | 03:53 | 06:33 |
ベルリンPO,1982 | 08:04 | 04:17 | 03:45 | 06:05 |
レヴァイン/ウィーンPO,1985 | 10:11 | 06:01 | 03:26 | 06:54 |
ホグウッド/エンシェントO.1979 | 10:45 | 05:59 | 04:14 | 07:18 |
この曲は、規模的には室内管弦楽団程度の編成での演奏を前提に書かれていますが、特徴2本のファゴットとともにト調のホルン2本、変ロのホルン2本の計4本のホルンが使われていることでしょう。ましてや、この曲が短調の極めて稀な作品というのが最大の特徴でしょう。このあたりは、1768~69年頃作曲のハイドンの交響曲「第39番」ト短調を参考にしている節があります。同じ短調でハイドンも4本のホルンを同様に使用しているからです。この曲は音楽の友の社のポケットスコアを所有していますが、それに拠ると晩年ウィーンに移り住んでからの予約演奏会でもこの曲を取り上げているということからも分るように、本人も気に入っていた曲でしょう。

実際の演奏は短調の悲劇性を感じさせるというよりも、幾分速いテンポで粛々と演奏されます。指揮者無しといえどもベルリンフィルのアンサンブルは鉄壁です。ホルンの調べも美しく、オーボエ、ファゴットの響きもチャーミングです。実はこのテンポでの演奏時間は晩年映像で残っているウィーンフィルとの演奏時間に近いものです。ベルリンフィルはこのウィーンフィルとの演奏をも参考にしてこの演奏会に臨んだ様な気がします。こちらの演奏は1978年5月に収録されています。その第1楽章を聴いてみましょう。貼付けてありますが、実際にはYouTubeのサイトに飛ばないと見ることは出来ませんので悪しからず。なを、YouTubeにはこの演奏が全曲アップされていますので、お暇な方はYouTubeで検索してお楽しみ下さい。
カール・ベーム/ウィーンフィル |
本来の演奏では、もう少しリズムも明るく演奏されるものなんでしょうが、追悼演奏会という雰囲気がそういうものを消し去っているような雰囲気がこの演奏からは感じる事が出来ます。まあ、そういう意味ではこの演奏の背景を知らない限りはやや平板な演奏に思えてしまうかもしれません。細かいニュアンスの演出とか、ちょっとしたテンポの変化はこの演奏からは感じ取ることが出来ないからです。そういう意味では多分に教科書的な演奏ということが出来るのかもしれません。その演奏をアップしてみましたので、お暇なら聴いてみて下さい。
ベルリンフィル/指揮者無し |
ところで、併録されている交響曲第40番の演奏は俄にベームの演奏とは信じられない演奏になっています。晩年のベームは第1楽章の開始はもっと遅いテンポを取っていました。ここでは、それとは違うアプローチになっていますし、どちらかというとベームの運びは句読点のはっきりした演奏が特徴ですが、収録されている演奏はそれとはまったく違う印象をいだかせています。元々このシリーズ、かなり表記と違う演奏になっているものが含まれています。そんなことで、こちらの演奏については感想は差し控えることにします。