「少年」傑作選 第1巻
編集 光文社文庫
発行 光文社 光文社文庫

マンガ雑誌の王者が帰ってきた!月刊マンガ雑誌『少年』は23年の歴史を刻んで休刊したが,名作の数々、主人公たちの活躍は今も語り継がれている。「鉄腕アトム」や「鉄人28号」はテレビ化されたので、子どもたちにもおなじみだ。---データベース---
1946年に創刊され、日本の児童雑誌の中でも一時代を築き上げた光文社の雑誌「少年」の版元、光文社による傑作集です。「鉄腕アトム」「鉄人28号」などの初期掲載雑誌であったことでも知られています。しかし、月刊誌としての形態は、台頭して来た週間の「少年マガジン」、「少年サンデー」、「少年キング」等に押されて発行部数を減らしていきます。小生たちにとっては毎月の豪華な付録が楽しみであったわけですが、それも、プラモデルという強力なライバルがあり、段々目新しさが無くなっていきます。時代のサイクルは段々早くなっていったんですなぁ。そんなことで、1968年(昭和43年)3月号第23巻第3号で休刊します。
その懐かしい「少年」が文庫本で帰って来たのがこの本でした。傑作選とあるようにこれは「鉄腕アトム」を主体として編集されています。この後、この少年シリーズは8巻発売されていますが、小生が興味があったのは鉄腕アトムでしたので購入したのはこの第1巻だけです。シリーズの構成は以下のようになっていました。
「少年」傑作集 第1巻 鉄腕アトムほか
「少年」傑作集 第2巻 鉄人28号ほか
「少年」傑作集 第3巻 ストップ!にいちゃんほか
「少年」傑作集 第4巻 矢車剣之助ほか
「少年」傑作集 第5巻 忍者ハットリくんほか
「少年」傑作集 小説・絵物語篇
「少年」傑作集 第2巻 鉄人28号ほか
「少年」傑作集 第3巻 ストップ!にいちゃんほか
「少年」傑作集 第4巻 矢車剣之助ほか
「少年」傑作集 第5巻 忍者ハットリくんほか
「少年」傑作集 小説・絵物語篇

これらの中で、「ストップ!にいちゃん」だけドラマ化、アニメ化されていません。人気作品であったのに、ほんわか学園物語であったのが災いしたんでしょうかね。さてさて、この第1巻ですが、特集というだけあって「鉄腕アトム」は半分ほどの348ページのボリュームです。それも、ごく初期の「アトム大使」時代の作品も数話収録されていまし、それに先立つ予告まで掲載されています。この予告では「てづかおさむ」ではなく「てづかはるむし」とルビが振ってあります。手塚氏の本名は「手塚治」で虫は付いていません。幼少期の昆虫採集の趣味からつけたペンネームで、甲虫のオサムシにちなんで小学4年生のときに作ったものであるようで、この時までその「治虫」はそのまま「おさむし」と読ませていたことが伺えます。さて、アトムの誕生日は周知のように4月7日ですが、これは「鉄腕アトム」としての連載が始まった「少年」の発売日であったことが理由になっています。ただし、アトム大使終了後の予告では、「鉄人アトム」という表記になっていました。
収録作品は以下のようになっています。

この本は、アトムのすべてを扱っているわけではありませんが、少年という雑誌がアトムと供に1960年代を引っ張っていたことが伺い知れます。多分、マイクロフィルムで取り込んだものをそのまま製版して印刷しているのではないでしょうか。中程には、昭和20年代の表紙写真も豊富に収録されています。

先日取り上げた「SF挿絵画家の時代」の中でも活躍していた山川惣治氏の挿絵による、「青銅の魔人」という江戸川乱歩原作の小説や、南洋一郎(作)、梁川豪一(絵)の「密林の大怪戦」も収録されています。懐かしいですね。ほかにも、別冊付録としてで小松崎茂氏の「世界一周ペン画アルバム」などという企画もあったようで、まさに当時の少年、少女に夢を与える雑誌であったことが分ります。

これは1989年に、文庫本として発売されたので、やや小さくて読みにくいのが難点ですが、少年マンガ誌の歴史的遺産としては中々資料価値があります。