
人類は新たなる大地を求め、果て無き星空に飛び立つ!! しかし、その無限なる可能性の裏にある過酷な現実とは!? SF漫画の名手である著者自らが選んだ8作品を収録!! 「星野之宣 自選短編集 MIDWAY 宇宙編」待望の文庫化!! 各作品解説・あとがき/星野之宣---データベース---
今まで部分的に「のだめカンタービレ」や「JIN-仁」を取り上げたことはありますが、多分コミックを正面から取り上げるのは初めてでしょう。杉浦日向子の「百日紅」も結局取り上げませんでした。別に嫌いなわけではなく、今では積極的に関わっていないというのが本当のところでしょう。これでも、昔は漫画家を目指した時期もあったのです。反動なんでしょうかね。(^▽^

SFに興味があるということで、その手の手塚作品なんかほぼ全部読みましたし、題材がSFものなら無差別に誰彼の作品ということ無く読みあさりました。しかし、社会人になってからはぷっつり読まなくなっていました。そんな中、最近またぽつぽつとSFを読むようになったことで、コミックにも手を広げることになりました。まずは、短編からということで取り上げたのが星野氏の「MIDWAY 宇宙編 自選短編集」です。実はこの本、友人からプレゼントされたものです。作者の経歴や作品群を見ると、最近取り上げている作家の「半村良」氏と立ち位置が似ている様なので紹介してくれたのでしょう。
で、この本は、確かに「これぞSF!」という傑作ばかりで、この手のジャンルが好きな人には宝物の様な一冊です。映画はSF関係のものがからりのヒット作品となっていますが、雑誌やコミックの分野では1990年代以降SFと名付けると本が売れないとまで言われいるようです。まあ、どんな作品でもストーリーと構成がしっかりしていれば良いものは良いんですけれどもね。ここ最近SFにのめり込み始めたきっかけは清水義範氏の「イマジン」を読み、更にその関連から宮部みゆきさんの「蒲生邸事件」を読んでからです。実際にこの作品は長編推理小説の位置付けで、題材としては過去にタイムスリップするという設定にはなっていますが大上段にはSFと歌っていません。それでも、1997年の第18回日本SF大賞受賞作となっています。まあ、あまりSFとこだわらない方が良いのかもしれません。ちなみにこの「MIDWAY 宇宙編 自選短編集」と姉妹作として「MIDWAY 歴史編 自選短編集」も存在します。この本には以下の作品が収録されています。
「残像」(残像)
「星の町」(本書出版時、未収録作品)
「2001夜物語・豊穣の海」(アクションコミックス2001夜物語 1巻)
「2001夜物語・悪魔の星ACT1~4」(同2001夜物語 1巻)
「2001夜物語・鳥の歌は今は絶え」(同2001夜物語 3巻)
「惑星ファイオリ」(ベムハンターソード)
「射手座のケンタウロス」(スターダストメモリーズ)
「セス・アイボリーの21日」(スターダストメモリーズ)
「星の町」(本書出版時、未収録作品)
「2001夜物語・豊穣の海」(アクションコミックス2001夜物語 1巻)
「2001夜物語・悪魔の星ACT1~4」(同2001夜物語 1巻)
「2001夜物語・鳥の歌は今は絶え」(同2001夜物語 3巻)
「惑星ファイオリ」(ベムハンターソード)
「射手座のケンタウロス」(スターダストメモリーズ)
「セス・アイボリーの21日」(スターダストメモリーズ)
どれも驚き興奮のアイデアの作品で、冒頭の「残像」からこういうアイデアがあるのかと驚かされます。隕石の月面への落下がもたらす現象は、脅威の情報をもちます。この痕跡を捜せば太陽系の歴史が明らかになるというわけです。月旅行への夢が膨らみます。「星の町」は宇宙開発戦争黎明期の陰にあった裏話が描かれます。これこそは、さもありなんという設定のSF的展開で非常に興味深い展開です。
「2001夜物語」からは3作品が収録されていますが、「悪魔の星」は傑作でしょう。SFとしては光速移動を可能とさせる半物質の存在がここでのテーマですが、それを過去の文学作品をベースにして描かれていきますから中々重厚な作品に仕上がっています。それは、ビッグバンと呼ばれる宇宙誕生や太陽系の生成に魔で関わっているのですから夢が湧いて来ます。学生時代にこういう作品と巡り会っていたら宇宙にたいする関わり方がちょっとは変わったいたかなと思わせる作品です。奇しくも、宇宙ステーションで船外活動は計21時間を超え、日本人宇宙飛行士で最長となった星出さんが話題になっています。この作品は小学生が読むにはちょいと難しいかもしれませんが、反物質を制御出来る技術が実用化されれば宇宙旅行は一気に身近なものとなるでしょう。
宇宙には我々の常識が通用しない現象が、数々ありますが、2重連星を扱った「鳥の歌は今は絶え」なんかは、その代表でしょう。生物が時空を超えて生存しているのですから。地球には「やどかり」という生物がいます。こういう生物が入るとしたら、その発展系のある生物に乗り換えてしまう生物がいてもおかしくはありません。単なる寄生虫ではなく、乗っ取りです。そういう生物の生態を描いた「射手座のケンタウロス」、地球の生活は太陽の公転と地球の自転で決められてしまいますが、これが定式と思ってはいけません。過酷な環境で生きる生物の中には、僅か21日で生涯を終えてしまうものもあるはずです。そういう生態系を描いた「セス・アイボリーの21日」はスタートレックの惑星「ジェネシス」を起想させます。
常識の世界から一歩踏み出たところにあるSFの世界。そういうファンタジーな世界をも夢見させてくれるこの作品は、凝り固まりつつある小生の脳みそに少なからずインパクトを与えてくれました。ストーリーとともに、映像として目に焼き付いてくる世界はイマジネーションの世界をちょっとリアルに描いています。劇がタッチの画風で、よりリアリティがあるのもこの作家の特徴でしょう。自選とあってどれも素晴らしい仕上がりです。