音楽の森・名フィルコンサート | geezenstacの森

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音楽の森・名フィルコンサート

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 今年はとんとコンサートに出かけていませんでしたが、たまたま手にしたチラシにこのコンサートの案内が載っていました。10月20日から開催されている「なごや・グリーンフェスタ2012」です。名古屋市みどりの会の30周年を記念したコンサートだそうで、コンサートの日にちは迫っていましたが、ホームページで確認するとチケットはまだ残席があるようです。で、出かけることにしました。正直、朝は凄い雨で気分は萎えていましたが、夕方には雨も上がってくもの切れ間から太陽がのぞくようになったので重い腰を上げました。曲目は、花とみどりにちなんだ面白い選曲です。

・ヴォーン・ウィリアムズ/グリーンスリーヴスによる幻想曲
・ヨハン・シュトラウス2世/ワルツ「ウィーンの森の物語」
・ワーグナー/楽劇「ジークフリート」より森のささやき
・ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
・ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調Op.95「新世界より」
指揮/中井章徳
演奏/名古屋フィルハーモニー交響楽団
会場/名古屋市公会堂
日時/2012/10/23 午後6:30
 
 指揮者については全く知識がありませんでした。プロフィルーには以下のようにありました。
倉敷市出身。くらしき作陽大学音楽学部指揮専攻卒業。桐朋オーケストラ・アカデミー指揮専攻終了。くらしき作陽大学在学中は松田藤子記念賞を受賞。1998年、第21回マスターズ国際音楽コンクールでディプロマ賞、マスタープレーヤーズ大賞を同時受賞。1999年、同大学を首席で卒業。同年4月から2001年月、チボリウィンドアンサンブル専任指揮者を務める。2000年、倉敷市芸術文化栄誉賞を受賞。現在、出雲フィルハーモニー交響楽団音楽監督兼常任指揮者、倉敷ジュニアフィルハーモニーオーケストラ常任指揮者、北九州シティオペラ指揮者、作陽音楽短期大学専任講師、広島大学大学院非常勤講師を務めるほか、近年は日本フィルハーモニー交響楽団、大阪市音楽団、広島交響楽団、岡山フィルハーニック管弦楽団をはじめ全国各地で客演指揮を務めている。福岡県在住。

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 卒業年度から逆算すると若干38歳の俊英といえます。まあ、関西方面が活躍の拠点なのであまり馴染みが無かったのかもしれません。ネットで見る限り何処かのエージェントに所属しているということはまだ無いようです名フィルとは定期以外の名古屋市小学生のためのコンサートや親子で楽しむ名フィル・コンサートといったプログラムで登場しているようです。

 会場の名古屋市公会堂は1930年(昭和5年)に建てられた施設で、東京の日比谷公会堂(1929)に次ぐ歴史を誇っています。小生も中学時代に合唱のコンクールでここのステージに立ち歌った記憶があります。戦後は名古屋で唯一のホールであったこともあり、1957年のカラヤン/ベルリンフィルの来日演奏会の折りにもこの会場が使用されています。この時は、2日間の演奏会が行われ、ベートーヴェンの交響曲第7版やブラームスの交響曲第2番が演奏されたようです。そのうち、2日目のブラームスはベートーヴェンの交響曲第5番から急遽プログラムの変更があったとかで、切符の払い戻しが行なわれています。ところが、このブラームスはNHKで生中継されたようです。その時のことかもしれませんが、この公会堂は国鉄中央線がすぐ脇を走っていて当時は蒸気機関車の時代ですから、カラヤンが「演奏中は汽車を止めろ」と言ったというエピソードが残っています。

 さて、コンサートは弦楽主体のグリーンスリーヴスから開始です。フルートとハープの音色が美しい名曲です。編成が小さいのでステージの演奏者はスカスカです。でも、この曲は大音量の曲ではありませんから均整のとれた美しい響きでまずは順調なスタートでした。2曲目の「ウィーンの森の物語」からは楽団員も増えて、ステージ一杯の演奏者で埋め尽くされました。ただ、どうしたことか音量は上がらないし、弦の音も妙にぎすぎすした感じであまり盛り上がりません。視聴位置は一階左手の2階のせり出しの下ぐらいでまあまあの座席ですが、全然音が響いて来ません。そうなんです。一般に公会堂の音はコンサート用に建てられていませんから残響が無く響きがデットなんですね。カラヤンクラスの指揮者ともなるとそういうところも勘案して音楽づくりをするのですが、若い指揮者ではそういうところには気が回らないのでしょう。名フィル自体もこのホールを使って演奏する機会は今ではそうそうないはずです。そんなことで、やや期待はずれの演奏に終わってしまいました。

 前半のプログラムの後半はワーグナーの2曲が並びます。最初の「森のささやき」は、みどり深い森の中での木々のざわめきや小鳥のさえずりなどがそれほど大音響の入らない曲ですから、いささか小じんまりとはしていましたがいい雰囲気で演奏されました。この曲は生で聴くのは初めてでした。最後の「マイスタージンガー」は反対にバリバリと金管が活躍しフルオーケストラの魅力を存分に伝えてくれる曲でワーグナーの管弦楽作品としては一番好きな曲です。ただ、全体に金管を押さえた演奏だったので充分燃焼したとはいえず、パンチ力には欠けていました。ただ、実演で第1ヴァイオリンが主メロディを奏でながら第2ヴァイオリンとヴィオラが同じ音型を繰り返し演奏する対比の部分は奥行きのある表現でこの曲の魅力を再確認出来ました。

 後半はドヴォルザークの「新世界」です。「マイスタージンガー」もそうですが、花とみどりにどう結びつくのか微妙なところですが、個人的には意外にもこの曲を生で聴くのは初めてです。名曲といわれながら、ドヴォルザークといえば第8番が好きだったので新世界があるとどうも敬遠して聴きに出かけることが無かったようです。

 演奏は全体的に速めのテンポで、第1楽章の冒頭もホルンの出など溜めは作りませんし、慣用的な呈示部の繰り返しのカットはそのままですっ飛ばします。なにか新しいチャレンジはあるのかな、と期待していた向きはあっさりと裏切られます。第2楽章も感傷に浸ること無く、淡々とメロディが紡がれていきます。多分、プログラムの中盤以降響きがデッドであることに気がついてテンポを修正して来た漢があります。こういうのがライブの特徴でしょう。音楽的にはアップテンポでも凝縮された表現になり、プログラム前半のつまらなさはこれで解消されて、音楽にぼっとうすることができるようになったのですから。でも爆発する第3楽章でも、金管はおとなしい響きでトランペットが聴こえて来ません。そんな中トロンボーンだけが暴走してバリバリと吹き始めます。第3楽章はこうでなくっちゃという感じです。これ、オーケストラからの意思表示と看てとったのですが、後半はおとなしくなってしまいました。そんな感じで第4楽章は一応アタッカで繋げて演奏されたのですが、妙な一拍が入っていました。指揮者の意思が入ったのか、第4楽章はインテンポですがフォルテでも破綻すること無く無難なバランスの響きで芸術が爆発することはありませんでした。この指揮者、若いのに安全運転指向はちょいとつまらない気がします。もっといろいろなアプローチを仕掛けても良い様な気がします。そういう意味では金聖響や若いのに面白い山田一樹、ブザンソンで優勝した垣内悠希などに期待したいものです。

 この新世界でも舞台上からハープが撤去されずにいたのは怪しいな?と睨んでいたら、案の定アンコールはチャイコフスキーの「花のワルツ」です。まあ、花とみどりを関したコンサートでは欠かせない演目でしょう。イントロのハープはここぞとばかり表情たっぷりのハープの音色を披露していました。演奏も力の抜けたリラックスムードの中で、それでもやはり音響を意識したか全体には早めの演奏でした。昔の姪フィルは金管など聴けたものでなかったのですが、近年の実力向上は目に余るものがあります。終わりよければすべて良し、ってなもんで久しぶりにリラックスしたコンサートを楽しむことが出来ました。

 さて、「なごや・グリーンフェスタ2012」は10月28日までですが、それと相前後して「2012なごやの公園スタンプラリー」が始まります。このスタンプラリーに合わせて、名古屋の公園のうち下記の施設が無料開園されます。出かけてみては如何でしょうか?

11/3 ランの館
11/17 東山動植物園、東山スカイタワー
11/22 徳川園
11/23 東谷山フルーツパーク世界の熱帯果樹温室
11/24 白鳥庭園
11/26 名古屋城