先に取り上げた庄内緑地公園の「バラまつり」は、いわば鶴舞のサテライトの様な位置付けです。まあ、ナゴヤの図書館も総元締はこの鶴舞で、中央図書館の位置付けです。そんなことで、こと花に関しても鶴舞は中心なんでしょう。さすが1909年に、名古屋最初の公園として開設されただけのことはあります。何しろ薔薇の品種は庄内緑地の比ではありません。こちらは120種以上の薔薇が咲き乱れていました。そんなことで、庄内緑地には無い品種を取り上げていきたいと思います。

最初は「ザ・マッカートニー・ローズ」です。1991年作出のフランスの薔薇で、元ビートルズのポール・マッカートニーの名を冠したバラです。ローズピンクの半剣弁平咲きで、花弁数は20枚くらいです。鮮やかなピンク色の大輪種ですばらしい芳香がマッチしています。このバラについては、ポールの公式ファンクラブの会報(リンダ死去に伴い廃刊)"Club Sandwich"1992年秋号(No.63)に記事がありますね。ポールはバラの作者から名前の使用許可の打診があったとき「とても名誉なことだと感じた」らしく、「父が熱心なガーデニングファンだったので、母が父の誕生日にバラの本を贈っていたことを思い出す」「このバラはピンクってのがいいよね。赤と白ならバラ戦争になってしまう」とのコメントを寄せています。

その赤いバラの代表品種が「クリスチャン・ディオール」です。勿論1946年、41歳でパリにオートクチュールを開業し、1947年から次々とあたらしいデザインを発表してファッション界に旋風を巻き起こしたその人の名を冠した品種です。このバラはフランス、1958年作出ですから、前年の1957年に亡くなった彼に捧げられたものでしょう。鮮やかで深い緋紅色で、整った剣弁高芯咲きのベルベットのような花弁は、まさにクリスチャンディオールの名にふさわしい気品あふれるバラですね。

次は黄色系のイングリッシュ・ローズの代表的な品種「グラハム・トーマス」です。これも人名なのですがバラの研究家だった人です。1983年の作出で、花はカップ咲きの中輪でオールドローズそのものであり、心地良いティーローズの香りを有し、色は非常に濃い珍しいピュアな黄色で落ち着きがあります。耐寒性に優れているため、おそらく世界で最も愛されているイングリッシュローズの1つでしょう。優れた芳香バラに贈られる英国王立バラ協会のヘンリー・エドランド賞を受賞している品種です。また、2009年には、World Federation of Rose Society(世界連合バラ協会)の殿堂入りを果たした13種目のバラです。

さて、上記のグラハム・トーマスを生み出すもとになったのが、この「アイスバーグ」です。こちらも1983年にWorld Federation of Rose Society(世界連合バラ協会)の殿堂入りを果たしている品種です。1958年フランス作出で中輪で半八重に近い花ですが、とても気品があります。房咲きになり、ひらひらと軽やかな花弁の雰囲気と純白な花色が他の品種を惹き立てます。アイスバーグとは氷山の意味で、別名のシュネーヴィッチェンは白雪姫の意味があります。全然意味が違いますが、一花一花見たときのイメージと面でいっせいに咲き誇る時の雰囲気を見ると、ネーミングの意味が分かるような気がします。

日本のバラも負けてはいません。1988年作出の「万葉」は中輪系としては大きめの輝くようなオレンジ色の花を咲かせます。強健で耐病性に優れ、オールドローズのように波うつ花びらが優美です。何処か「牡丹」の雰囲気に似ています。香りはほとんどありませんがフリルのある花びらが優雅な雰囲気を醸し出しています。

フリル系のバラの元祖ともいうべき品種はその名もズバリの「パーマネント・ウェーブ」です。1932年オランダ作出の品種で、写真のバラは赤い色をしていますが、日が経つにつれて赤からピンクへ変化するようです。そういう花色の変化を楽しむことが出来るバラという意味では庭花としては最適ですね。

淡いラベンダー色の神秘的な色合いが美しく、そこから漂う強烈な香りが益々花を引き立てるのは「アズビス」です。1981年イタリア作出になります。写真でも分るようにつる性の品種でフェンスやアーチに適しているようです。香りもそこそこあるので、この花のアーチをくぐるとバラ園に来たという雰囲気に浸れます。

色合いでオレンジ色の大輪の花を咲かせるのは「スーパースター」です。1960年ドイツ作出の四季咲きの品種の半剣弁咲きの優雅なバラで、 フルーツのようなとても良い香りを持っていて花もちがよく長く楽しむ事ができるようです。さて、この花の名前はフランスの女優ブリジット・バルドーにちなんで付けられた名前です。でも、どちらかというとブリジッド・バルドーは真っ赤のバラがそのイメージなんですけどね。ちなみに、「ビバ・マリア」という映画で共演したジャンヌ・モローはそのままの名前のバラがあります。こちらは白でイメージ通りです。

アメリカ、1954年作出の大輪のピンクの花は「クィーンエリザベス」です。英国、エリザベス女王の名を冠した代表的な名花のひとつ、澄んだピンク色の花色で丸弁平咲きとても気品があります。さすがにクィーンの名に相応しく、この花も1978年世界バラ連合の栄誉殿堂入りをした。香りも強くはありませんが、甘くて心地よいやさしい香りが楽しめます。

情熱的な赤いバラはフランス1985年作出の「ビクトル・ユーゴ」です。もちろん、19世紀のフランスの文豪にちなんで名づけられました。フランスのバラはメイアン社の作出が多いのですが、これもその中の一つです。メイアン社の中興の祖アントワーヌ・メイアン(1884-1971)Antowane Meillandが作ったといわれています。1985年ハーグ国際コンクール芳香賞受賞していますが、香りはそれほど強くありません。四季咲き性で花つきがよく、栽培しやすい品種で人気があるようです。

同じ赤でも、ドイツで1978年に作出された「ラバグルート」は小粒でも、花色はビロードのように輝く深みのある赤黒で目を引きます。平らな丸花弁咲きで、弁質が強く花もちもよい薔薇ということです。「溶岩の炎」という意味ですが、納得のネーミングです。

今日の最後はミステリアスな白い品種の「エルグ」です。ただし、花の前の表示ではそうなっていましたが、バラ図鑑の品種表示ではこういうバラは存在しませんでした。鶴舞公園の品種表示はカタカナ表記だけで綴りも濁点間違いが多いので、これも記載ミスの可能性があります。ネットではこの公園で写した人の写真のみが「エルグ」として紹介されています。
今日のバックはポール・モーリアの演奏でポール・マッカートニーの「セイ・セイ・セイ」です。