ポールモーリアの世界 | geezenstacの森

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音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

ポールモーリアの世界
「恋はみずいろ」を中心に

曲目/
Vol.1 マイウェイ(スタンダード集)01.ビギン・ザ・ビギン(コール・ポーター) 02.ひき潮(ロバート・マックスウェル) 03.ムーンライト・セレナーデ(グレン・ミラー) 04.想い出のサンフランシスコ(ジョージ・C・コリー) 05.カーニヴァルの朝~『黒いオルフェ』(ルイス・ボンファ)...
他全20曲
VOl.2 恋はみずいろ(ビッグヒット集)01.オリーブの首飾り(クロード・モルガン) 02.恋はみずいろ(アンドレ・ポップ) 03.エーゲ海の真珠(アウグスト・アルグェロ) 04.ゴッド・ファーザー~『愛のテーマ』(ニーノ・ロータ) 05.ラスト・タンゴ・イン・パリ(ガトー・バルビエリ)...
他全20曲
Vol.3 そよ風のメヌエット(オリジナルヒット集)01.恋のシャリオ(ポールモーリア/フランク・プゥルセル) 02.嘆き鳥のレジェンド(ポールモーリア) 03.ペガサスの涙(ポールモーリア) 04.薔薇色のメヌエット(ポールモーリア) 05.ふたりのミュージック(ポールモーリア)...
他全19曲
Vol.4 マミー・ブルー(ヨーロピアン・ポップス集)01.マミー・ブルー(ユベール・ジロー) 02.想い出に生きる(マリオ・パナス/クラウス・ムンロ) 03.レイン・レイン(スヴェン・リナス) 04.雨(マリオ・バンゼリ/ジャンニ・アルジェニオ他) 05.哀しみのソレアード(ツァカール)...
他全20曲

 
詳細はこちら↓
http://www.u-canshop.jp/mauriat/?sid=kan_g1

 

PHILIPS OCD-20001-10

 

イメージ 1

 

 今日取り上げるCDもお歳暮で頂いた物です。音楽のお歳暮、ありがたいですね。ずっと心に残り続けるのがいいです。その友人も、高校時代から趣味が同じで、当方と同じようにイージー・リスニングファンです。まあ、当時はムード・ミュージックといいましたがね。先方はラテン音楽が好きなようで、リカルド・サントス、スタンリー・ブラック、パーシィ・フェイス、マントヴァーニ、当方はノーマン・キャンドラー、ノリー・パラマー、ジョニー・ピアソン・レイモン・ルフェーブル、フランク・プウルセルとどちらかというとストリングス系で、微妙な違いで広くイージー・リスニングをカバーしています。不思議な物で、イージー・リスニング全盛期までのアーティストが主で、リチャード・クレイダーマン辺りになると全く興味が無くなりました。

 

 さて、この10枚組聴いてみて驚くのは、演奏が何時も耳にしているバージョンとはちょっと違うところです。2枚目のvol.2 恋はみずいろ(ビッグ・ヒット集)は「オリーブの首飾り」から始まりますが、これが耳に馴染みのサウンドと既に違います。コンガのパーカッションの響きが違いすぎるのです。そして、2曲目の「恋はみずいろ」も全体に音色が明るくなり、ブラスセクション、特にトロンボーンの響きが独特の押し出しがあります。何か違うぞ、という感じです。調べてみたら、1988年バージョンを収録していました。まあ、この全集は生前のポール・モーリアが自分自身で選曲・監修した物であるということなので、出来るだけ新しい録音を採用したということなのでしょう。

 

 

 ひょっとすると、これはマニア向けの全集ではなくCD時代の新しいリスナーのための全集なんでしょうな。そうして割り切ると、この全集は切り口と選曲にかなり60-70年代のポール・モーリアを聴き慣れている世代とは違う聴く層に向けたポール・モーリアの意気込みが感じられます。若い人にも、こういう音楽を聴いてほしいてという願いが込められているのでしょう。調べると、「オリーブの首飾り」と「恋はみずいろ」、「エーゲ海の真珠」までは1988年録音、4曲目の「ゴッド・ファーザー愛のテーマ」で漸く1972年のオリジナルが登場します。

 

 

 いきなり2枚目から取り上げたのは「恋はみずいろ」が調べるのに都合が良かったからなんですが、1枚目のvol.1 マイ・ウェイ(スタンダード集)は最初かけた時にポール・モーリアの香りがしなかったからです。スタンダードといいながら、半数以上が1990年の録音でビギン・ザ・ビギンも然りです。ですから、往年のポール・モーリアを知る者にとってはちょっと違和感のある演奏で始まります。このセット調べると、1枚目のCDだけではなくほぼ全体の半数以上が1980年以降の録音となっています。アナログからデジタルに変わり、過去の自分の演奏をもう一度デジタルで残そうとしたポール・モーリアの意図がそこに読み取れます。

 

 個人的にはポール・モーリアについてそれほどのめり込んでいるわけではありませんが、今回これらの演奏を聴くにあたってこれはちょいと調べてみる必要があるなと感じたのはこのせいです。で、一番分かりやすいのが代表曲でもある「恋はみずいろ」となったわけです。まず、オリジナルといわれる演奏を聴いてみましょう。これは1968年に録音されています。ポール・モーリアとしてはカバーの中の一曲として出した物ですが、アメリカでも発売され大人気になりました。当初プロデューサーからはブラスが強すぎるのではないかとクレームがあったそうですが、ポール・モーリアはそれを押し切りました。そして、大ヒット曲が誕生したわけです。ブラスといえば、この当時BSTやシカゴといったロックグループがブラスを前面に出した演奏で脚光を浴びていました。ヒットにはそういう時代背景があったのかもしれません。

 

 オリジナル1968

 今聴くとチェンバロの使用が斬新さを打ち出しているのに改めて感心させられます。肝心のブラスですが、今聴くとこんなもの?というバランスですが、当時はストリングス主体でしたからこれでも相当インパクトがあったはずです。もちろん日本でも大ヒットしました。ポール・モーリアの代名詞になった曲です。そんな曲ですから、アナログ時代にはこれも時代の潮流に乗ってディスコバージョンの「恋はみずいろ'77」というものを発売しました。下がその演奏です。何が時代に受けいられるか敏感に嗅ぎ取る能力は他のアーティストたちの上を言っていました。こういうところは後にパーシィ・フェイス辺りが追従しています。

 

 ディスコバージョン-1976

 しかし、時代がアナログからデジタルになると音楽の流れは一変します。素早く、ポール・モーリアも過去の演奏をデジタル化する方向に動きます。こうして誕生したのがデジタル版の「恋はみずいろ」でした。

 

 ニュー・バージョン1-1982
 
 全体に音がクリアになっています。ほぼオリジナル版を踏襲していますが、何処かチェンバロの音が別取りでよそよそしく感じられます。これは時代的にいってエレピで合成した音を使っているということもあるのでしょう。ところで1980年代になってイージー・リスニングはやや下火になります。ポップスのヒット曲自体がイージー・リスニングにあわなくなって来たということもあるのでしょう。ポール・モーリアもそれ流れの中で、クラシックの作品を取り上げる比率が高くなっていきます。毎年のように来日するコンサートでもクラシック作品を取り上げる比率は結構高く、映像で残されるコンサートもそれを物語っています。そういう流れの中で、もう一度、原点に返ってこの「恋はみずいろ」を1988年に録音しています。

 

 ニュー・バージョン2-1988

 レコード会社は、新しい作品を取り上げるでも無くも過去の曲目の再録音ばかりに傾注するポール・モーリアと次第に意見が対立するようになり、ついに1993年長年連れ添って来たフィリップスと決別して、日本のポニー・キャニオンと契約を結びます。こうして、ポニー・キャニオンに録音したのが1994年版の「恋はみずいろ」です。

 

 ニュー・バージョン3-1994

 これは「ありがとうポール・モーリア」に収録された音源です。ただ、アレンジ的に新鮮みは無く、テンポが以前に比べるとゆっくりなって来ていることが分かります。弦をたっぷり歌わせ、ブラスセクションも心持ち派手になっています。これが、セッションとしては最後の録音ですが、晩年までこの曲を愛して止まなかったポール・モーリアの親日家であったポール・モーリアの置き土産であったような気もします。ところで肝心のこのセットの中に含まれているのは1988年バージョンです。リズムセクションのドラムスの扱いが特徴的で、またブラスのトロンボーンが強調されています。好みの別かれるバージョンでしょう。