UFJ貨幣資料館の企画展示室はそんなに広くありません。昨日訪れた「広重名所江戸百景」の企画展示は1月10日から開催されていますが、今回は全120点のうちの約半数が展示されています。パンフレットにあるとおり、今回の展示は復刻版画による抜粋展示です。復刻とはいっても、初刷りによる復刻品ですから色は鮮やかで、初期の作品にある広重特有の藍の使い方が見事に再現されています。パンフレットにはおなじみ、雪景色の「浅草金龍山」が採用されています。
以前紹介した、岩波書店版の「名所江戸百景」はブルックリン美術館の所蔵作品を収蔵していたのですが、それはすべてが初刷りというわけではありませんでした。そんなことで、今回は初刷りの復刻に興味津々です。トップを飾るのは二代目広重が書いた目録図です。広重の「名所江戸百景」は春夏秋冬に分類分けされて構成纏められたのはこの目録図によっています。

展示されていた作品で、春を代表するのは日本橋ではなく、駿河町からの富士を眺めた一枚でした。いまはこの辺りから富士を望むことは出来ませんが、誇張があるにしても素晴らしい構図です。手前の左右の商家は現在の三越本店にあたる越後屋であることがわかりますが、それがこの絵の実在感を示しています。

もう一点春を代表する作品は「亀戸梅屋舗」が圧倒的な存在感でした。この作品はゴッボが模写したことでも有名な作品ですが、この展示でも直ぐ横に比較としてゴッホの「花咲く梅の木」の模写が展示されていました。広重や北斎の作品はモネやマネの作品にも影響を与えています。いかに浮世絵がヨーロッパの絵画に影響を与えていたのかということが伺い知れます。

夏を代表するのはこの「名所江戸百景」を代表するといってもいい「大はしあたけの夕立」です。この作品もゴッホが模写したことで知られています。雨雲の黒と川の深さを表す藍のコントラストが見事ですし、雨の景色を描いては随一の広重の面目躍如の作品になっています。雨に霞む遠景のぼかしも効果的です。それにしても、この雨を版木に彫る彫師の力量も賞讃に値します。明治にはゴミとして見向きもされなかった浮世絵ですが、江戸の職人はいい仕事しています。ヨーロッパ人の真贋は本物を見抜く力があったんでしょうな。

秋はこれまでもいろいろ紹介して来ましたで今回はパスします。冬はこれを取り上げましょう。雪景色の「深川木場」です。UFJ貨幣資料館では、登録した顧客には企画展の案内はがきが届きます。この案内状を、対象企画展が開催された時に持参すると展示されている図案で作成した絵はがきが一枚もらえます。今回、それで小生が頂いた絵はがきはこのこの「深川木場」でした。はがきは4種類の中から選べます。多分一番人気は、「亀戸梅屋舗」でしょう。しかし、あまのじゃくの小生はこの一枚を選びました。地味な一枚ですが別荘地としても人気のあった木場が描かれています。夜の木場ですが、まだ筏で作業している人、左は路には犬が2匹、下中央に魚と書いた傘が配置されています。海に近い木場は魚料理のうまい料亭があったのでしょう。上空には雀が二羽描かれていますが夜に鳥は不可解です。そんなことで、何かファンタジーな雰囲気を感じてしまいます。東京は今夜当たりまた雪模様のようです。ひょっとしたら木場辺りにもこんな雪が降るのかもしれません。
以下は過去に紹介した「名所江戸百景」です。
http://blogs.yahoo.co.jp/geezenstac/52357914.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geezenstac/52361532.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geezenstac/52363503.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geezenstac/52361532.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geezenstac/52363503.html
UFJ貨幣資料館は朝9時オープンです。無料で入館出来ます。本来の貨幣の展示も、小生が学生時代に習った日本最古の貨幣は「和同開珎」だったのですが、今ではさらに遡る「富本銭(ふほんせん)」が最古とされています。今回初めて友人を案内したのですが、貨幣の歴史をたどることの出来る展示にも興味津々でした。名古屋へ観光に来られたら、一般の見世が始まる前にまず、この施設を訪れることをお進めします。一日が有効に使えます。したはそんな館内の様子です。