アンネローゼ・シュミットのモーツァルト | geezenstacの森

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アンネローゼ・シュミットのモーツァルト

曲目/モーツァルト
ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
1. I. Allegro 14:07
2.II. Romance 8:14
3.III. Rondo: Allegro assai 8:02
ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467*
4.I. Allegro maestoso 13:47
5.II. Andante 6:16
6.III. Allegro vivace assai 7:05

 

ピアノ/アンネローゼ・シュミット
指揮/クルト・マズア
演奏/ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

 

録音/1971/05/13-14
  1973/04-28-29* ルカ教会、ドレスデン
P:ライマー・ブルート、ベルント・ルンゲ*
E:ホルスト・クンツェ、ゲルハルト・ユング*

 

Corona Classic Collection 0002272CCC(原盤オイロディスク)

 

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 元々は10枚組の全集の中の一枚です。ですが、単品としても販売されていますので上記のジャケットはそちらの方を採用しました。東独時代のアナログ最盛期の録音です。近々、ヘルムート・ツァハリスのモーツァルトピアノ協奏曲全集が発売になるので、その予習をかねて幾つかの演奏を聴くことにしました。これはそのうちの一枚です。アンネ・ローゼシュミットはもう引退してしまいましたし、日本ではそれほど名が知られていなかったのであまり一般的ではないのかもしれませんね。何せ、最盛期が60年代から70年代でしたからCD時代にはちょっととり残された感がありますし、何よりも、東独を活躍の場としたアーティストだったというのがマイナーな印象を持っている最大な要因だった様な気がします。ちなみに、手元に有る1956年発行の「現代名演奏家事典(渡邊護-修道社)」には彼女の名前はありません。恥ずかしい話しですが、小生ずっと彼女の名前をアンネ・ローゼシュミットだと思っていました。なんかこの方が女性の名前らしく感じられたものですから。しかし、今回事典で調べるにあたってよくよく確認するとアンネローゼ・シュミットではないですか。

 

 原盤はオイロディスクですが現在はシャルプラッテン系のCorona Classic Collectionから発売されています。モーツァルトのピアノ協奏曲全集は数有れど、女流ピアニストの全集はアナログ時代にはほぼ皆無でした。あったのはイングリッド・ヘブラーぐらいで、リリー・クラウスは全曲録音はしていません。そんな中ではこのシュミットの演奏は光っていました。しかし、デジタル時代になると内田光子とか出て来ますが圧倒的に男性ピアニストの物が多いですね。

 

 さて、この演奏は一聴に値します。古き良き時代のドイツのオーケストラの響きがします。それは重すぎず軽すぎずといったちょうど良いバランスの響きです。DGのグルダでは重すぎますし、フィリップスの内田光子では軽すぎます。やはり、録音会場が良いのでしょうね。響きでは定評のあるルカ教会での収録です。オーケストラはドレスデンフィルですがシュターツカペレに通じる渋い響きを持っています。この頃はクルトマズアがこのオーケストラのシェフもしていましたから手兵です。手堅いバックで、これと行った特徴はありませんがそつのない伴奏に徹しています。マズアの特徴はあわせモノの上手さですが、変に楽器のバランスをいじったりアクセントを強調したりしていないところが好感が持てます。そして、それをベースにシュミットが実に丁寧な演奏で音楽を紡いでいます。女流だからというひ弱さは無く、それでいて変にこびたフレーズを作るでも無く、堂々としたモーツァルトを表現しています。まず第20番から聴いてみましょう。

 

 

 指揮者が個性を出しすぎると、ペライヤ、マゼールのようにマゼールの強引な節回しが目立ってしまいますが、ここでは自然体のモーツァルトを余すところ無く鑑賞出来ます。こういう素晴らしい演奏が廉価で鑑賞出来るのはありがたいことです。この演奏、国内盤はデンオンから出ていますが、21番の方はモラヴィッツが演奏していて統一が取れていないのが残念です。上記のジャケットは輸入盤ですが、こちらは両方ともシュミットの演奏になっていて水準が安定しています。

 

 21番の方も心地よい演奏で、第1楽章の主題から速すぎず、遅すぎずという安定したテンポで冒頭から聴かせてくれます。オイロディスクの録音は昔からグラモフォンほど鈍重な響きではないので好きでした。ここでもそういう良さが生きています。まあ、実演よりはややピアノが音で捉えられていますが、室内オーケストラとの共演ではこれくらいのバランスになりますから問題は無いでしょう。適度に厚みとスケール感のあるオーケストラの響きはアルファ波全開でモーツァルトを聴いているなぁっていう気にさせてくれます。こちらも第1楽章を聴いてみましょう。

 

 

 こちらの方の第2楽章は有名な映画「短くも美しく萌え」に使われたのでおなじみでしょう。ここでも、変な思い入れを入れずシュミットは淡々とアンダンテを弾いています。この曲を最初に聴くにはもってこいの演奏でしょう。単発のCDでも良いのですが、ここは是非とも全集を聴いてみてほしい物です。

 

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 こちらが現在手に入る全集になります。Corona Classic .collection CCC0002462

 

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 現在はこちらの方が安いようです。Berlin Classics BC0300035