オペラの世界 | geezenstacの森

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講談社 ステレオ世界名曲全集12

曲目
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 講談社「ステレオ世界名曲全集」の2回目に取り上げるのは「ヴェルディ、プッチーニ」と題された12巻です。このブログでもオペラは数えるほどしか取り上げていません。はっきり言って言葉の壁というのは大きなものです。それでも全く聴かないわけではありません。オペラの合唱曲なんか好きで、それだけのアルバムも何枚か所有しています。今回取り上げる中で実際に観たことがあるのは「椿姫」と「トスカ」だけです。それも、ウィーン国立歌劇場のバルコニー席でほとんど舞台が半分ぐらいしか見る事が出来ない舞台右手の最上階席でした。手元に有るプログラムで確認すると指揮はアルベルト・エレーデ、演出はオットー・シェンクとなっています。歌手はヴァイオレッタにスカラ座歌手のエレナ・マウティ・ヌンジアータ、アルフォードにヴェリアーノ・ルチェッティという配役になっています。鑑賞したのは1977年3月4日、その前日にはやはりアルベルト・エレーデの指揮、演出はマルガレーテ・ウォールマンで、トスカがエヴァ・マルトン、カヴァラドッシがジャコモ・アラガルという布陣でした。資料で改めて確認すると二日連続でウィーン国立歌劇場へ通った事になっています。この旅行の時は他にも、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場でヴェルディの「二人のフォスカリ」という珍しいオペラを見ているのですが、誰が歌っていたのかはさっぱり記憶がありません。(^▽^;)

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 そういう、我が人生に於いてもエポックメーキングなオペラが含まれているので取り上げる事にしました。何よりも、ダイジェストですから気軽に聴くことができます。当時はこんな全集買う余裕はなかったけれど、こういうのを聴いていたらもっとオペラに近づけたかもしれませんなぁ。ここに収録されているのはデッカ/ロンドンの音源ですからこういうものにはうってつけのソースです。それにつけても、サザーランドのヴィオレッタは素晴らしいです。サザーランドの『椿姫』は第1回目のDECCA録音(2回目はパヴァロッティとの共演)ですが、良い音しています。1962年のイタリアのフィレンツェ録音ですが、舞台裏からのベルゴンツィの歌うアルフォードの歌声もデッカお得意のソニックステージでしっかり収録されています。

 
 2曲目のカラヤン/ウィーンフィルの歌劇「アイーダ」も久しぶりに聴きますが、さすが見事な演奏で圧倒的な迫力です。今にして思うとやや遅めのテンポでじっくりと凱旋行進曲を演奏しています。3曲目の歌劇「トロヴァトーレ」の「ジプシーの合唱」はCDでも持っていますが、レコードの音の生々しさはCD以上です。まだまだLPも捨てたもんではありません。年を取ってくると高音が聴き取りにくくなりますが、かえってレコードのサーフェイスノイズが取れて聴きやすく感じます。「リゴレットの」女心の歌のレナート・チオーニは初めて耳にしますが、やや丸いまろやかなトーンは中々味があります。もちろんサザーランドの「慕わしい人の名は」は実に気持ちよく歌っているようで、この部分を聴いただけでオペラを聴いた気分になれます。

 オペラものというと一人の歌手に注目したハイライト盤とか、一つのオペラのダイジェスト盤はありますが、こういう形のコンピュレーションはこういう全集の中でしか聴けないものでしょう。レコードの2枚目はプッチーニの「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」から始まります。ここではレナータ・テバルディの蝶々さんが聴けます。テバルディはエレーデと組んだ1951年録音もありますが、やはり、ステレオで残してくれたセラフィンとの録音の方が好きです。ここではピンカートンにベルゴンツィ、スズキ役に若干26歳のフィオレンツォ・コソットが参加していますからね。こちらはローマ、サンタ・チェチーリア音楽院での1957年7月の収録で音の鮮度はちょいと落ちるのが少々残念ですが、イタリアオペラはかく有りなんというすっばらしい演奏です。廉価でCD化されているので今度全曲盤を買ってみようかなと思いたくなります。

 「蝶々夫人」の後は「トスカ」です。こちらもいわずと知れた名盤で、1959年録音。名歌手たちの声の饗宴にただただひたすらうっとりと聞き惚れるのみの一枚です。こうして聴いてくるとデッカはイタリアオペラは本場の布陣で素晴らしく粒の揃った録音を残している事が分かります。この3面の中では、やはり、マリオ・デル・モナコの「星のきらめき」が突出しています。黄金のテノールといわれただけの事はあります。歌劇「ボエーム」も名曲だけが収録されていてこれだけでいい気分に慣れます。こういう全集の選曲はそれなりに編集者のセンスが問われますが、このオペラのアルバムだけは編集者もすんなりと決める事が出来たのではないでしょうかね。

 第4面はマスカーニの「カヴアレリア・ルスティカーナ」から始まります。この辺辺りのオペラになると作曲者自身が指揮した録音が残っていますが、やはり歌が勝負ですからそういう部分では主人が物を言います。ここではシミオナートの歌う「ママも知るとおり」だけが収録されていますが、ここはマリオ・デル・モナコの歌声も聴きたかったところです。唯一の選曲ミスかな?まあ、レオンかヴァレロの「道化師」ではそのデル・モナコの歌声が聴けるから良しとしましょう。


 デル・モナコは次ぎのポンキェルリの歌劇「ジョコンダ」でも「空と海」が収録されています。いゃあ、満足満足。指揮者のプラデルリやカヴァッツェーニなんかはあまり耳にしない名前でしょうがオペラ界では一流どころです。このレコード、最後の最後にネッロ・サンティの名前が挙がっています。この頃から注目されていたという事でしょうが、まだこの頃は諸先輩の中では新参者という扱いなんでしょう。

 そのサンティの演奏するのはヴォルフ=フェラーリの歌劇「聖母の宝石」の間奏曲だけです。しかも、演奏しているのがパリ音楽院管弦楽団という場違いなオケです。音源は「ヴォルフ=フェラーリ:管弦楽曲集」というアルバムの中から引っ張り出されています。まあ、ヴォルフ=フェラーリは伊独混血の人ですからその中間で手を打ったという事でしょうかね。この録音はサンティが28歳の1959年の録音ですから早くから注目はされていた指揮者だという事が分かります。ただ録音シーンには同世代にアバドやムーティといったスター指揮者がいたせいか、オペラ指揮者としてはやや登場のタイミングが悪かった様な気がします。

 こんな事でLP2枚で11作のオペラを聴く事が出来るのですからうれしいものです。