ソンドラ・ビアンカのチャイコフスキーとラフマニノフ | geezenstacの森

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ハンス=ユルゲン・ワルター
ソンドラ・ビアンカ
チャイコフスキーとラフマニノフ

 
曲目/
チャイコフスキー
ピアノ協奏曲第1番変ロ長調Op.23
1.Adagio - Allegro non troppo  18:44
2.Allegro con Grazia 6:42
3.Allegro molto vivace 6:42
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第2番ハ短調op.18*
4.Moderato 10:30
5.Adagio sostenuto 11:57
6.Allegro scherzando 11:06

 

ピアノ/ソンドラ・ビアンカ
指揮/ハンス=ユルゲン・ワルター
演奏/ハンブルク放送交響楽団(Hamburg Radio Symphony Orchestra)、プロ・ムジカ交響楽団*

 

録音/1960年前後 ハンブルク

 

日COLUMBIA MS-1005-AX(原盤は西ドイツ MUSICA ET LITERA)
  
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 ソンドラ・ビアンカの名前を知っている方は相当な通かご年配の方でしょう。そして、ハンス=ユルゲン・ワルターを知っている方はかなり1000円盤のレコードのお世話になった部類でしょう。そういう小生もその世代の人間です。このレコードはコロムピアの「ダイヤモンド1000シリーズ」という廉価盤のハシリのシリーズの初回発売として登場しました。1969年のことです。この頃はいやというほどこのシリーズのお世話になりました。米CBSがソニーの手に移り、日本コロムビアはブルーの・ワルターを失いました。そんなことで登場させたのが、このハンス=ユルゲン・ワルターでした。当時中学生だった小生はブルーノ・ワルターの対抗馬だったのかしらと真剣に思ったものでした。演奏は決して悪いものではありませんでした。名曲を手頃な価格で楽しむには充分な演奏でした。このシリーズ、当時の音楽評論家大木正興氏がコメントを寄せた一文が裏面に掲載されていましたが、その割にはレコード芸術には新譜として発売されても当初は全く取り上げられることがなかった日陰の身のシリーズでした。実に堂々としたものです。そして、ここでピアノを弾いているソンドラ・ビアンカにも当然注目したものです。まあそれは聴いていただけば分かるでしょう。

 

 

 

 

 

 冒頭のホルンの吹かせ方なんかはやや時代じみていますが、それに続くピアノとのテーマの演奏は実に堂々としたものです。オーケストラもなかなか充実した響きで、決して一流とはいいませんがそこそこの演奏をしています。ピアノだけに関していえば、テクニックも申し分無く一聴した限りでは女性ピアニストの演奏とは思えないほどタッチはしっかりとしています。ビアンカはチャイコフスキーのピアノ協奏曲は3回録音しているようでで、そのうち2回はステレオ録音を残しています。ただ、コンサートホール盤(カール・バンベルガー/コンセール・ド・パリ管)は25センチLPでの発売で時間的制約からか、かなりせかせかした演奏のようです。最初の録音は米MGMレコードのためのもので、MGM3278という番号でモノラルで発売されています。このレーベルにハンス=ユルゲン・ワルターはかなりのレコーディングを残しています。CD時代のユーゴスラヴィアのアントン・ナヌートのような存在だったのでしょう。一方、ビアンカのチャイコフスキーの録音履歴を見るとこれがなかなか混乱しています。

 

 

上記のブログにビアンカのディスコグラフィがあるのですが、その中から関連の部分だけを引用します。整理するとこんな風です。
1.アメリカ MGM E-3278(モノラル録音)1955
 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番
 グリーグ:ピアノ協奏曲
(ハンス=ユルゲン・ワルター指揮/ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団)
 イギリス PARLOPHONE PMC-1034(モノラル録音)
 日本 エンジェルXLP-1039(モノラル録音)
 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番
 グリーグ:ピアノ協奏曲
(ハンス=ユルゲン・ワルター指揮/ハンブルク・プロムジカ交響楽団)
 *日本盤ではハンブルク・フィルハーモニア管弦楽団と表記されている。
2.コンサートホールSM-177(ステレオ) 25cm盤
 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番
(カール・バンベルガー指揮/コンセール・ド・パリ管弦楽団)
3.デンマーク MUSICA ET LITERA MEL-5002(ステレオ録音のモノラル盤)
 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番
(ハンス=ユルゲン・ワルター指揮/MUSICA ET LITERA 交響楽団)(匿名オケ)       
 *「録音場所はハンブルク」「ステレオマイク使用」と明記されている。
 日本 コロムビア(原盤は西ドイツ MUSICA ET LITERA ?) MS-1005-AX 1969
 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番
(ハンス=ユルゲン・ワルター指揮/ハンブルク放送交響楽団)
 *上記のデンマーク盤と同じ演奏?
 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番
(ハンス=ユルゲン・ワルター指揮/プロムジカ交響楽団)

 

 1950年代末から1960年代初頭にかけては録音自体はステレオにも関わらず、ステレオでの再生装置が普及していなかったのでとりあえずはモノラルで発売し、後にステレオで再発売するというケースが多々ありました。特にヨーロッパではその傾向が強くイギリスなどでは1970年代でもモノラルが発売されていました。米MGMのオリジナルの発売は1955年ですから、当然ステレオ録音ではないでしょう。ということは、同じ組み合わせで後年再録音がなされたという見方の方が正解なんでしょうかね。

 

 この様にチャイコフスキーはなかなか聴かせてくれる演奏になっていますが、カップリングされているラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、やや聴き劣りがします。同じ様に時期の録音だと思うのですが、音質は数段劣ります。そのせいか演奏の冴えもあまり感じられなく。平板な演奏になっています。オーケストラもどうもぬるま湯につかってしまっているようで演奏に覇気がありません。まあ、このレコードはチャイコフスキーが楽しめればそれで良いと思います。下の写真は神童同士の共演で話題になったんでしょうなぁ。ソンドラ・ビアンカ12歳、そして、ロリン・マゼールも13歳です。

 

イメージ 2

写真1943年のロリン・マゼールとソンドラ・ビアンカ、ニューヨーク

 

ハンス=ユルゲン・ワルター
ドイツ、シュベーリン地方のメックレンブルクに1919年、生まれ、1945年からハンブルク高等音楽院で学んだ。50年からハンブルク室内管弦楽団の指揮者になる。その後、ロイトリンゲンのスワビア交響楽団の主席指揮者に就任した。LP初期からMGMとミュージック・サウンド・ブックのために、いわゆる通俗名曲の数々を録音し、日本でもさまざまな廉価盤レーベルを通して発売された。オーケストラはほとんどハンブルクフィルで、数曲の現代音楽も録音している。米ロイヤルには「道化師」「オテロ」などのオペラも録音している。
ソンドラ・ビアンカ
彼女は1930年11月17日ブルックリンで生まれたアメリカ人のピアニスト。Isabelle Vengorova (1877–1956)に師事しフィラデルフィアのカーティス音楽院に学んだ。5歳の時に最初のコンサートを開き、ブルーノ・ワルターも彼女を賞賛した。1941年11月1日、カーネギー・ホールにもデビューしわずか10才にしてニューヨーク・フィルハーモニックと共演している。1955年6月下旬ガーシュイン・イーヴニングのイベントで西独各地をハンス=ユルゲン・ワルター/ハンブルクのプロムジカ交響楽団とともに巡演、好評を得る。