ライナー/ローマの松 | geezenstacの森

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Living Stereo 60CD Collection
ライナー/ローマの松

曲目/
ドビュッシー/交響詩「海」
1. 海の夜明けから真昼まで 10:22
2. 波の戯れ 6:30
3. 風と海との対話 8:25
レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」*
4. 夜明けのジュリアの谷の噴水 4:39
5. 朝のトリトンの噴水 2:24
6. 真昼のトレヴィの噴水 3:19
7.夕暮れのメディチ荘の噴水 5:26
レスピーギ:交響詩「ローマの松」*
8. ボルジア荘の松 2:43
9. カタコンブ付近の松 6:46
10. ジャニコロの松 6:28
11. アッピア街道の松 5:12

 

指揮/フリッツ・ライナー
演奏/シカゴ交響楽団

 

録音/1960/02/27
1959/10/24* シカゴ,オーケストラ・ホール
 
P:リチャード・モア
E:ルイス・レイトン

 

Rca Living Stereo 88697720602-35
  
イメージ 1

 

 3曲収録されていますが、ピカ一はやはり、レスピーギの「ローマの松」でしょう。ライナーのスタイルは「ひきしまった、まったく贅肉のない演奏」とよくいわれていますが、その特質を充分に生かした演奏です。オリジナルは3チャンネル録音だそうですが、管楽器に別働隊まで必要とするこの曲の魅力をモア、レイトンコンビは余す所無く収録しています。アナログマスターでは翌強奏部分が玉砕しているものがありますが、ここでは最後の「アッピア街道の松」でもそういう部分は感じられません。一番すばらしいと感じるのはテープヒスの少なさでしょう。このため、デジタル録音に匹敵する感覚でこのアナログ初期の名演奏を楽しむことが出来ます。この「ローマの松」での楽しみは第3曲「ジャニコロの松」の最後に出てくるナイチンゲールの啼き声です。ここは楽器ではなく水笛というおもちゃ?でその鳴き声が再現されるですが、その使用するおもちゃによって全く鳴き方が違って来ます。で、このライナー盤、これが実にしっくりくる音色で収録されています。他の演奏がよくても、こういう所がちゃんとしていないとがっくりくる演奏がありますが、ここではそういう心配がありません。まあ、これと似た様なものはベルリオーズの幻想交響曲の「鐘」の音ですかね。そういう点でも、このライナーの「ローマの松」はすわりが良く名演です。そのでん、同じく名演とされるトスカニーニのナイチンゲールはいささか作り物の感がして名演に水をさしている様な気がします。

 

 Living Stereo 60CD Collectionは曲目のダブりは、多彩なアーティストのコレクションで成り立っていますが曲目のダブりはほとんどありません。しかし、例外的にこのドビュッシーの「海」はミュンシュのものとだぶっています。さらに、コレクション1枚目はサンプラーが収められていますが、そのサンプラーの中にもこのライナーの「波の戯れ」が収録されていますからトリプルでの収録ということになります。まあ、それだけ、このライナーの録音が「Living Stereo」に相応しい優れた演奏だといいたいのでしょう。

 

 ミュンシュの録音は1956年でしたから、この録音までに4年間の開きがあります。ステレオ初期のこの4年間は、その見た目以上の技術的変化が合ったことは想像に難くありません。確かにすばらしい録音と演奏です。特にシドニー・ハースのヴァイオリン・ソロが聴かれる部分は弱奏でのデリケートなニュアンスたっぷりで聴き惚れてしまいます。ただ、全体の響きとなるとボストン・ミュンシュの方に一日の長があります。ドビュッシーというかフランス音楽は機能的優秀さでは計り知れない響きが潜んでいます。ボストン響はそういう部分のニュアンスまできっちりとドビュッシーをモノにしています。シカゴ響は金管の張り切り方がここではやや耳障りに聴こえてしまいます。このドビュッシーの「海」の演奏については細かく聞き比べると子細な違いが存在するようです。ただ、このライナーの録音は比較的原点に近い演奏をしているようで、特に第3曲ではデュラン版の楽譜からは削除されている練習番号59の金管のパッセージはちゃんと演奏されていますし、練習番号63のコルネット・パートの3連音も聴き取れます。

 

 

 つづくレスピーギ「ローマの噴水」は「ローマの松」とは対比的にしっとりとした音色でシカゴ響の弦の巧さを満喫出来ます。弱音で開始される「夜明けのジュリアの谷の噴水」からして幻想的で、たぶん・レイ・スティルの演奏なんでしょうけど弦に絡むオーボエの響きが幻想的でいいですね。それに続くクラリネットはクラーク・ブロディでしょうか。こういうここのアーティストの名人芸に酔いしれることが出来ます。レスピーギの金管の扱いもこの曲では地味で、そういう意味では刺々しくないこの曲は収まりがいいです。この曲を挟んで最後が「ローマの松」というコンピュレーションはよく考えられています。

 

 ライナーノートによるとこのセッションは朝の9時半から開始され、午前中に「ローマの松」を録り終え、「ローマの噴水」は午後の7時には収録を完了したようです。一日でセッションを終えたということはそれだけ充実した演奏が繰り広げられたということでしょう。今日は、その名演の名演たるナイチンゲールのすばらしい音色を聴いてみましょう。