梵鐘 | geezenstacの森

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梵鐘

曲目
1.天台宗 輪王寺(栃木県日光市) 2:27
2.臨済宗 建長寺(神奈川県鎌倉市) 4:37
3.法相宗 薬師寺(奈良県奈良市) 3:22
4.新義真言宗智山派大本山 智積院(京都府京都市) 1:54
5.聖観音宗 浅草寺(東京都台東区) 3:38
6.時宗 常福寺(岩手県遠野市) 1:58
7.天台宗 中禅寺(栃木県日光市) 2:32
8.天台宗総本山 延暦寺(滋賀県大津市) 3:59
9.臨済宗 瑞巌寺(滋賀県大津市) 6:14
10.華厳宗総本山 東大寺(奈良県奈良市) 3:50
11.天台宗 観音寺(栃木県日光市) 3:26
12.天台宗 中尊寺(岩手県平泉町) 2:31
13.天台宗 寛永寺(東京都台東区) 1:57

ナレーター/進藤京子

録音/1981年5月から9月

KING KICW5185

 
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 レコード時代から民族音楽を始めSLクジラの鳴き声など、それこそレコードと名前のつくものは何でもコレクションにしたがった癖は、CD時代になってもやはり変わりません。響は先日の「銅鐸」についでの日本の響きとしての「梵鐘」です。

 日本人なら年末の「除夜の鐘」を耳にすることは多いでしょう。まあ、それだけ日本人の心に根ざしている響きだということにもなります。個人的には今年の初詣に岐阜県にある「日龍峯寺」に出かけています。ここの鐘楼は参拝者は除夜の鐘を撞くことが出来ます。そして、この日も梵鐘を撞くことが出来ました。そういうことを思い出しながら、このCDを久しぶりに聴きました。

 こういう音源は普通ライブの音をそのまましゅうろくするものなのですが、ここでは女性ナレーターがいちいちその鐘の由来を解説しています。もちろんナレーションは控えめではありますが、それでも、梵鐘の音だけを楽しもうと思うと煩わしさが先に立ちます。ここは、解説にとどめて純粋に梵鐘の響きだけを収録してもらいたかったものです。まあ、このCD(当時はレコード)の対象が、多分日本人の高齢者であつたことを考え、老婆心でナレーションも入れたと思われますが、過剰サービスといえないこともありません。別録りしているのですからCD化に際しては、トラックを分けるかカットしてくれても良かったのにと思わないでもありません。ということでせっかくのCDの良さが生かされていません。
 
 さて、梵鐘の音には野外収録ですからそのときの周りの自然の音を同時に取り込んでいます。そこには小鳥のさえずりがあり、虫の音があり、時には人が玉砂利を踏みしめる音までリアルに再現されます。梵鐘の響きは強震のため非常に残響音が長い特徴があります。トップを飾るのは栃木県日光にある「輪王寺」の梵鐘です。独特の響きで鐘の響きに加えて素の金属の響きもあわせて聴き取ることが出来ます。また遠くで読経の声が聞こえるのも風情があります。

 録音の方法は近接収録とやや距離を置いた収録が混在しています。京都東山の「智積院」の響きはやや遠距離のからの収録で深々とした森の中から浮かび上がる霞のかかったような響きで幻想的です。この中では特に宮城県松島にある「瑞巌寺」の梵鐘の響きは梵鐘の前に銅鑼のようなものの響きも収録されており一連の流れとなっていてその臨場感が一番良く捉えられているのではないかと思われます。

 続く「東大寺」の梵鐘はその大仏に匹敵するような低くどっしりとした響きが腹の底にまで届きます。ただ、東大寺の鐘の音は打ち鳴らされるインターバルが短く、余韻を味わうにはややもの足りません。

 梵鐘の響きを記録したレコードは数多くある様な気がしますが、このキングの録音以外にめぼしいものは見つかりません。手持ちではソニーからCD初期にこの手のものが出ていた様な気がしますが、捜しても見つかりませんでした。このレコード当初は「梵鐘」のタイトルだけで発売されましたが、その後の企画が流れたようで、最近の再発では全く同じ内容で「梵鐘ベスト」として発売されています。このレコードはそういう意味でも貴重なんでしょう。このCDキングレコードの名物プロデューサーであった長田暁二氏がここでは音楽文化研究家として「日本の梵鐘について」というエッセイを寄せています。

 さて、バックは奈良の明日香村にある西国三十三箇所第七番札所「岡寺」の鐘の音が流れています。