ルービンシュタイン
「パガニーニの主題による狂詩曲」
曲目/ラフマニノフ
1.パガニーニの主題による狂詩曲Op.43*
2.交響詩/死の島Op.29
ピアノ/アルトゥーロ・ルービンシュタイン*
指揮/フリッツ・ライナー*
エルネスト・アンセルメ
演奏/シカゴ交響楽団
パリ音楽院管弦楽団*
録音/1956 オーケストラホール、シカゴ*
1954 パリ
P:ジョン・ファイファー*
E:レスリー・チェイス* MEMBRAN 233018/A
指揮/フリッツ・ライナー*
エルネスト・アンセルメ
演奏/シカゴ交響楽団
パリ音楽院管弦楽団*
録音/1956 オーケストラホール、シカゴ*
1954 パリ
P:ジョン・ファイファー*
E:レスリー・チェイス*

激安MEMBRANの10枚組BOXセットに収められている一枚です。このセットの1枚目は上記の曲目が収められていますが、なんとジャケットの片隅にはアンセルメの名前しかクレジットされていません。でも、どう見てもこのアルバムのメインは「パガニーニの主題による狂詩曲」でしょう。面白いことにこのセットの3枚目には、同じくルービンシュタイン/ライナー/シカゴ交響楽団のピアノ協奏曲第2番が収録されています。ということは正規に発売されているCDの音源をすべて聴くことが出来るわけです。音源としては既に著作権の切れているものですが、正規にライセンスされたものでないことを配慮してのことなのでしょうかルービンシュタインの名前が出ていません。しかし、3枚目の方は堂々とルービンシュタインの名前も出ていますから、ここはやっぱりアンセルメの指揮する「死の島」がメインということなんでしょうかね?
さて、うれしいことに、この録音はステレオ収録です。オリジナルはRCAの3チャンネルによる収録です。で、デジタル化されていますから、XRCDであらずともここでもそこそこの音で聴くことが出来るわけです。ルービンシュタイン/ライナーの組み合わせはこのラフマニノフとブラームスのピアノ協奏曲第2番ぐらいしか残されていないので貴重です。
ラフマニノフのこの曲の代表的録音の一つに数えられるものです。がっぷり四つに組んだ両巨匠のスリリングな名演が展開されています。まあ、昔から名演とされているものでこの曲のベスト演奏の一つなんでしょう。個人的には、ルービンシュタインは過去の人というイメージがあつて殆ど聴いたことがありませんでした。このCDで初めて耳にしたというところが本当のところです。どうも、ハイフェッツといいホロヴィッツ、ルービンシュタインは好きになれない過去の演奏者なんですね。ですから、反対にこの演奏をこの阻止とで初めて聴いた時のインパクトは強烈でした。導入部から尋常でない緊張感が感じられます。ライナーという指揮者もすぱっと鋭いナイフで斬りつけるようなシャープさを感じる指揮者ですが、ここでのルービンシュタインもそういう意味では鋭いタッチと切れ味で恐ろしいほどの対抗意識でピアノを操っている様な気がします。そういう丁々発止のやり取りが聴くものを惹き付ける魅力なんでしょう。
この曲のCDはどれもそうなのかもしれませんが変奏ごとに細かくインデックスが打ってあります。これはレコードと違ってCDのありがたいところですね。有名な第18変奏も難なく探して、それだけ再生することが出来ます。よく知られていることですが、パガニーニの主題を上下逆さま(反行形)にして演奏すると、この旋律になるということですが実に上手い利用方法ですね。それがまた、名旋律になっているのですから驚きです。そして、ここだけはルービンシュタインも非常にロマンティックにピアノを歌わせています。ただ、この録音のバランスはルービンシュタインのピアノがメインになっていますからどちらかというとオーケストラの部分はちょっと引っ込んだバランスになっているのが残念です。そして、最後の変奏では金管楽器が「怒りの日」のメロディを奏します。
そんなことでカップリングは交響詩「死の島」が選ばれたんでしょうな。

さて、併録されているのはアンセルメのラフマニノフの「死の島」です。アンセルメはロシアものの管弦楽曲集をだしているほど、たくさん録音しているのですが、ことラフマニノフに関してはこの曲1曲しか残していません。それも、手兵のスイス・ロマンド管とではなくパリ音楽院管弦楽団を振っての録音です。しかし、残念なことにこの録音はステレオではありません。レコード時代、この曲に最初にであったのもこのアンセルメの指揮によるものでした。そういう意味では懐かしい再会です。この演奏はモノラル末期とでもいうべきもので、この年の5月にはステレオ録音を始めていますから、多分わずか数ヶ月の差でモノラル収録されたものでしょう。
元来がドイツの画家アルノルト・ベックリンの同名の油彩画に基づく標題音楽ですから、暗いイメージに仕上がっています。一時期はヒットラーも所有していたといわれる名画です。一貫した5/8拍子の繰り返しにより、不安にうねる波と舟の漕ぎ手の動きが描写されています。アンセルメの指揮はフランス印象派とは対極の位置にあった象徴派のベックリンのモノトーン調のこの絵画に、重厚さとともに色彩感覚を取り込んだ演奏として好きです。まあ、最初に聴いたという刷り込みもあるでしょうけれどもね。このパリ管との演奏を聴くと、スイス・ロマンドより相性がいい様な気がします。低弦の響きは分厚いですし、金管のきらめくようなアクセントとバランスの取れたアンサンブルはこのオーケストラが一級の実力を持っていたことが伺い知れます。さりげなくラフマニノフはこの曲のコーダの部分でグレゴリオ聖歌の「怒りの日」のメロディを金管のコラールで引用しています。