電子オルガンで聴くグリーグ | geezenstacの森

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電子オルガンで聴くグリーグ

曲目/グリーグ
ホルベルク組曲op.40
1.前奏曲-Prelude 2:49
2.サラバンド-Sarabande 4:02
3.ガヴォット-Gavotte 3:30
4.アリア-Aria 6:25
5.リゴードン-Rigaudon 3:30
叙情小曲集より
6.アルバムのページop.47-2-Albumblad 3:40
7.小鳥op.43-4-Liden fugl 1:56
8.農夫の歌op.65-2-Bondens sang 2:17
9.家路op.62-6-Hjmad 3:04
10.過ぎにし春Op.34-2 4:55
11.間奏曲-(渡辺陸樹)-intermezzo 8:30
ペールギュント第1組曲Op.46
12.朝 -morgenstemning 4:39
13.オーゼの死-Ases dod 4:55
14.アニトラの踊り-Anitras dans 3:34
15.ソルヴェーグの歌-Salveigs sang 5:50
16.山の魔王の宮殿にて-I dovergubbens hall 2:27

電子オルガン/渡辺 睦樹

録音/2004

P:田中俊一

ビクターエンタテインメント  VICC-60403

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 癒し系の一枚です。当時、我が家にはエレクトーンがあって娘にこんな音楽も出来るんだぞー、ということを聴かせてやりたくて買ったCDです。演奏家も何も知りませんでした。ただ、曲がグリーグなのでこんなものがエレクトーンで出来るんだなぁという程度の認識です。で、聴いてみて、なかなかやるじゃんというのが第1印象。プロフィールを見て名古屋出身の人だと知って親近感を覚えました。

 オーケストラの演奏とはまたひと味違う響きです。エレクトーン奏者の第1人者ですから、シンセサイザーからパイプオルガンの響き、はたまたはフルオーケストラに近いサウンドまで何でもご戯れの感じです。最初のホルベルク組曲の前奏曲なんかは完全にオーケストラサウンドを再現しています。ヤマハのステージアというエレクトーンによるだそうです。2局目のサラバンドでは最初は弦楽合奏をイメージさせておきながら、主題が終わると今度はパイプオルガンの響きに替わります。実際の演奏ではこういうことは不可能ですから、これはやはり、エレクトーンのマジックなんでしょう。アリアでは木管の響きを模して始まります。そこに弦楽合奏とオルガンが重なってくるというイメージで編曲されています。響きの妙というもので音量を小さくして聴いていると、最適のBGMになります。

 叙情小曲集は元々が、ピアノ曲集ですからここではイマジネーションを働かせた編曲が大きなウェイトを占めてきます。解説によるとエミール・ギレリスの演奏を愛聴していたとかで、そこから得た印象をもとに曲がピックアツプされているようです。「アルバムのページ」ではフルートと弦楽合奏、次の小鳥では「フルートとハープ」が活躍する編曲です。なかなかしゃれたアレンジで、グリーグの繊細さとロマンティシズムがにじみ出たいい編曲です。「納付の歌」はゆったりとした響きで最初はオーボエを次ぎにフルートを模したメロディが奏でられます。「家路」では行進曲のメロディが登場しますが、この場面はややエレクトーンの地が出た響きで安っぽさが出てしまっているのが残念です。まあ、エレクトーンはシンセサイザーではないので富田サウンドを求めるのは酷かもしれませんが、市販のCDとして発売するのであればここはもう一工夫欲しかったところです。

 アルバムの中盤はゆったりとしたメロディの曲が並びます。その中で、「間奏曲」はちゃっかり渡辺氏のオリジナル作品が演奏されています。通して聴いているとやはりグリーグの作品とタッチが違うのですぐ分かります。氏がノルウェーに旅行しグリーグが晩年過ごしたトロルドハウゲンに立ち寄ったときの印象をもとに書いた曲だそうで、アダージョで奏される8小節のモチーフが全曲のイメージを形作っています。

 最後はペールギュントの第1組曲が演奏されます。言わずもがなの名曲ですが、朝はもう少し幻想的な雰囲気が欲しいところです。どうせアレンジするのですから原曲には無いコーラスの音色をかぶせても面白かったのではないでしょうか。第3曲のアニトラの踊りでは少し冒険をしてシンセサイザーサウンドを多用した編曲になってアニトラの怪しい雰囲気をうまく評しています。しかし、最後の「山の魔王の宮殿にて」はこれに比べるとおとなしい編曲で原曲の持つ荒々しさやスケール感が今ひとつ表現できていない響きで盛り上がりに欠けます。エレクトーンの限界なんでしょうかね。

 BGMして流し聴きするにはいいのかもしれませんが、真剣に向き合って聴こうとすると全曲はやや苦しいものがあります。パターンと響きがどうしても類似しているので途中から苦痛になってしまいます。こういうところが克服できると、エレクトーンのCDもエレクトーンを習っている人だけでなく一般の人ももう少し気軽に聴くことが出来るのではないでしょうかね。

このアルバム下記のサイトで試聴できます
http://www.shinseido.co.jp/cgi-bin/WebObjects/Catalog.woa/wa/detail?r=VICC-60403

同じステージアの演奏でこちらのホルストはすごいです。


渡辺 睦樹     愛知県出身。
5歳よりエレクトーンを始める。子どもたちのオリジナル作品発表の場であるヤマハ音楽振興会主催「ジュニアオリジナルコンサート」に6歳から参加。名古屋大学在学中に日本代表として出場した「インターナショナルエレクトーンフェスティバル’88(パリ)」で最優秀賞受賞。
その後本格的な演奏活動を開始し、1992年名古屋、1994年名古屋・金沢にてリサイタルを開催。 1995年には東京室内歌劇場公演<戦後50年記念>オペラ「ヒロシマのオルフェ」(指揮:若杉弘、作曲: 芥川也寸志)にて演奏を担当、エレクトーン版のオペラとして話題を呼んだ。
1995年秋より渡独し、ハンブルク・コンセルヴァトリウム、ハンブルク音楽大学に留学。作曲理論をD.アインフェルト、ピアノをH.E.シュミッツ、M.バイセンヒルツ、声楽伴奏をU.ヴェーグナーの各氏に師事。
1998年帰国、1999年には全国7都市で帰国リサイタルツアーを行なったほか、「エレクトーン誕生40周年記念galaコンサート」(全国10会場)にも出演。
2000年には電子オルガン界から初めて東京オペラシティ・リサイタルシリーズ『B→C』に出演。バッハからコンテンポラリーまで幅広い作品に挑んだ意欲的なプログラムと熱演が好評を博す。
2005年、愛知万博『世界のプリマ~草刈民代「愛と祈り」を舞う星降る夜のパ・ド・ドゥ』にてバイオリンの礒絵里子氏とともに演奏を担当。
2002年2月ビクターエンタテインメントよりデビューアルバム「トロイメライ」を発売後、現在までにアルバム5枚をリリース。
確かな音楽性に支えられた演奏表現力、豊かな感性による作品解釈は、クラシック界においても常に高い評価を得ており、名実ともにエレクトーン界でのクラシック演奏第一人者として活躍中である。
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