『ウェスト・サイド・ストーリー』オリジナル・ブロードウェイ・キャスト | geezenstacの森

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『ウェスト・サイド・ストーリー』オリジナル・ブロードウェイ・キャスト盤

曲目/バーンスタイン
『ウェスト・サイド物語』
1.Prologue 3:51
2.Jet Song 2:08
3.Something's Coming 2:37
4.The Dance At The Gym 3:03
5.Maria 2:38
6.Tonight 3:54
7.America 4:34
8.Cool 4:00
9.One Hand, One Heart 3:03
10.Tonight (Quintet & Chorus) 3:39
11.The Rumble 2:41
12.I Feel Pretty 2:47
13.Somewhere (Ballet) 7:34
14.Gee, Officer Krupke 4:03
15.A Boy Like That; I Have A Love 4:16
16.Finale 2:00
キャスト
ラリー・カート-Larry Kert – トニー
キャロル・ローレンス-Carol Lawrence -マリア
ミッキー・カリン-Mickey Calin – リフ
チタ・リヴェラChita Rivera - アニタ
ハンク・ブランジェス-Hank Brunjes - ディーゼル
エリザベス・テイラー -Elizabeth Taylor - フランシスカ
カルメン・グティエレス -Carmen Gutierrez
グローヴァー・デール -Grover Dale - スノーボーイ
デヴィッド・ウィンタース-David Winters - ベビー・ジョン
Erne Castaldo
Martin Charnin
Wilma Curley
Carole d'Andrea
Al de Sio
Marilyn d'Honau
Gene Gavin
Frank Green
Lowell Harris
指揮/マックス・ゴーバーマン
演奏/スタジオ・オーケストラ
編曲/アーヴィン・コスタル

 

P: Goddard Lieberson、 Howard Scott
E: Fred Plaut, Edward T. Graha

 

録音/1957/09/28 Columbia 30th Street Studio, NYC

 

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 このCD、先日購入した「バーンスタイン/コンポーザー&コンダクター」という10枚組のボックスセットの中に含まれていた一枚です。ということでは本来的にはクラシックのジャンルで取り上げるべきなのでしょうが、題材が題材だし、オリジナルがブロードウェイ・オリジナルキャストということで映画音楽の方で取り上げることにしました。もともと、このセット、バーンスタイン指揮によるRCA音源やSONY音源のほか、米デッカ音源、ライヴ音源を中心に収録し、これにオリジナル・ブロードウェイ・キャスト版の『ウェスト・サイド物語』と、カール・デイヴィスによる「シンフォニック・ダンス」と『波止場』を収録した気の利いたセットなんです。ただ、購入したときはボックスの裏面の演奏者リストには、指揮がバーンスタイン、演奏はニューヨークフィルハーモニックとなっていました。こんな録音あったかなと思いつつ購入していざデータベースで調べたら、何のことはないブロードウェイ・オリジナルキャストの演奏だったのです。騙されたと思いましたが、レコード時代にはこのブロードウェイ・オリジナルキャストのものも所有していましたのでそういう意味では懐かしい出会いであったわけです。

 

 バーンスタインの「ウェストサイド・ストーリー」は、1957年9月26日にブロードウェイで初日の幕を開けましたが、これはその3日後に同じキャストがスタジオで録音したものです。この録音元々はコロンビアのものですが、1957年の録音とあって著作権が切れています。ということでこんな形で収録されたのでしょう。言ってみれば音源に関するコストが「タダ」になるのですからね。調べてみたらNAXOSからも、「NAXOS MUSICALS」などというシリーズ物の一枚として発売されていました。

 

 映画のサントラ盤も所有していますが、このブロードウェイ・オリジナルキャスト盤は初演のキャストがそのまま歌い込んでいますからとても新鮮に聴こえます。まるで舞台を彷彿とさせる歌声です。トニー役のラリー・カートは、多少心細げな歌い方で、若者の揺れ動く心を実に良く表現していますし、マリア役のキャロル・ローレンスもとっても可憐。決してうまくはありませんが、一途な思いはひしひしと伝わってきます。

 

 1957年の録音ですが。れっきとしたステレオ録音です。コロンビアはこの年がどうもモノラルとステレオの丁度切替の時期だったらしくて、この「バーンスタイン/コンポーザー&コンダクター」には同年のグールドとのベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番も含まれていますが、そちらは1月録音だったのでモノラルでしか収録されていません。

 

 マックス・ゴーバーマンの指揮も溌剌としたもので、なかなか切れ味鋭いサウンドでバーンスタインの名曲を演奏しています。でも、これがバーンスタインのオリジナルの形かというとそうでも無いようで、ミュージカルという形に整えるために、アーヴィン・コスタルが編曲を施しています。そういう意味でこれをクラシックとして聴くとストリングス部分は少人数なのでやや貧相に聴こえます。しかし、パーカッションを多用したポップスナンバーとして聴くと当時は斬新なサウンドだったんだろうなぁという感じがします。

 

 以前にはバーンスタインが指揮したミュージカルというよりはオペレッタとしての「ウェストサイド・ストーリー」を取り上げたことがありますが、あちらとは同列で語ることは出来ないでしょう。この作品はやはりミュージカルです。そういう意味ではヴォーカルがこれくらいのバランスで録音されているのは、ミュージカル として大変聴きやすい音になっています。一応ブロードウェイに掛かったのは9月からですが、実はそれ以前にワシントンとかフィラデルフィアで試験興行されていますから出演者も相当歌い込んでいた時点での収録ということが出来ます。そして、こちらは舞台の進行順に曲が収録されています。そのため映画版とは曲順が異なっています。特にドラマチックなのは「マリア」と「トゥナイト」が続けて収録されていることで、これは舞台を見た人なら自然の繋がりであることが分かります。

 

 また、ここに聴かれる歌唱は、オペラのベルカント唱法からすれば、きっと浅い発声ということになるのでしょうが、こうでなければ英語のディクションを犠牲にすることになり、それではミュージカルの鉄則に反することになるでしょう。プエルトリカン独特のアクセントも音楽表現の力強さとうまく融合しています。 公開と同時のオリジナル・キャスト録音は、当ミュージカルの演奏史には欠かせない存在で、当時の社会情勢や時代背景を色濃く反映した熱気溢れたものになっています。「ウェストサイド・ストーリー」の原点を再確認するという意味でもこれは価値のある録音です。たぶん、レナード・バーンスタインはこれ1曲で後生に語り継がれるでしょう。

 

下の画像はイギリスのオリジナル盤(CBS 32193)のものです。

 

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 最後に、このオリジナルキャストによる当時の「トゥナイト」を聴いてみましょう。