バーンスタインのシベリウス2 |
曲目/シベリウス
交響曲第2番 ニ長調 Op. 43
1.第1楽章 Allegretto 10:57
2.第2楽章 Tempo andante, ma rubato 18:11
3.第3楽章 Vivacissimo 06:23
4.第4楽章 Finale: Allegro moderato 15:57
指揮/レナード・バーンスタイン
演奏/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
演奏/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1986/10 ムジークフェライン・ザール、ウィーン
D:ハンノ・リンケ
P:ハンス・ウェーバー
E:クラウス・シャイベ
D:ハンノ・リンケ
P:ハンス・ウェーバー
E:クラウス・シャイベ
DGG UCCG7022(419772-2)

ある意味これは凄いシベリウスです。こちらのサイトにこのシベリウスの交響曲第2番の演奏時間の比較リストがありますが、これを見ても解る通りこのバーンスタインの演奏は断トツで遅い演奏となっています。何せ全曲で52分を超えているんですからね。晩年のバーンスタインはライヴ録音を好みました。しかし、これは本当の意味でのライブとはちょっと違うようで、聴衆の拍手などは全く収録されていません。所謂、ゲネプロの流し録りみたいなものではないでしょうか。セッション録音だと練習番号で区切っての録音で後で編集で繋ぎますが、これだと一発録音的に続けて演奏されますから音楽の緊張は途切れません。いってみれば演奏会本番とセッションの中間みたいな録音の仕方なんでしょう。
バーンスタインのシベリウス交響曲第2番の演奏は、先にニューヨーク・フィルハーモニックとのものを取り上げていますが、この極端に遅めのテンポで雄大に描かれるウィーン・フイルとの演奏は別格です。全体的に見ればテンポに緩急をつけ、アクセントを強調する濃厚な表情を聴かせています。
第1楽章はこれよりも遅い演奏は存在します。しかし、しょっぱなからゆっくりとしたテンポには惹き付けられます。冒頭の弦楽器の四分音符からしてクレシェンドをはっきり聴かせて主題を浮き上がらせています。すでに、ここからしてバーンスタイン節は始まります。そして、聴き終わってはじめてそのテンポ設定に納得させられます。遅さと暗さは正比例しません。ねっとりとはしていますが、これは北欧的叙情とは少し違います。バーンスタインの精神的陰影が色濃く刻まれている大陸的深淵さとでもいうものでしようか。その辺の聴き取り方でこの演奏の好き嫌いが別れる所でしょう。
第2楽章が白眉で、遅いテンポで18分をかけて演奏されるこの楽章はもっともバーンスタインのそういうところが発揮された部分でしょう。遅い演奏ほどオーケストラの粗が出やすいのですが、さすがはウィーンフィル、きっちりとバーンスタインの棒に応えて感動的なアンダンテを奏でています。これは超絶的な名演です。シベリウスの交響曲第2番は実演で聴くと、曲が休止で止まってしまう部分がやけに目立ちます。ですから、個人的にはこの曲はCDで聴くに限ると思っているのですが、そういうブツ切れ感を全く感じさせないのがこのバーンスタイン/ウィーンフイルの演奏です。ここでの金管の咆哮もティンパニの響きも何時に無くウィーン・フィルの荒ぶりを感じさせてくれます。そして、このバーンスタインの世界に魅き込まれると、これが異常な長さの演奏であることを忘れてその世界にどっぷりと浸かってしまいます。
第3楽章から終楽章にかけては、前2楽章に比べると残念ながら感銘の度合いは若干下がります。それでも、また終楽章でのコーダに向かっての音楽の高揚は魂が揺さぶられます。そして、これだけ粘りっこい表現をし、テンポを揺らしながらも曲のフォルムを崩さないこのコンビの実力には一目置かざるをえません。これこそがウィーン・フィルの実力でしょう。シベリウスの交響曲の世界をこれだけドラマチックに描いた演奏はそうそうあるもんではありません。バーンスタイン節が目立つこの演奏、この曲のファーストチョイスの演奏にあげることはためらわれますが、時々聴いてこの曲のイメージをリセットするにはもってこいの演奏です。
この曲の第4楽章の一部が映像でアップされていました。この映像の方はちゃんと拍手が収録されています。