
富士五湖の一つ、西湖のほとりにある巴屋旅館から一人の男が遺書を残して失踪した。西湖の近くには自殺の名所といわれる青木ヶ原樹海が広がっている。それから一年、その男の妻が東京で殺された。十津川警部率いる捜査一課が事件を担当するが、その間に第二の殺人事件が発生する。失踪事件との関連は?死体に残された桃の小枝の意味は?二転三転する十津川たちの推理。その先には驚くべき真相が隠されていた!---データベース---
今年も最初に取り上げる小説は西村京太郎氏の十津川警部シリーズの中の一冊です。しかし、最初から辛口のコメントになってしまいます。この作品は、小説推理に2001年4月号~10月号にかけて連載されたものです。近作にしては十津川班の刑事が続々と登場します。西本刑事,日下刑事,北条早苗刑事,三田村刑事,田中刑事,片山刑事それに三上刑事部長です。ところで、この作品、事件解決までに2年もかけているというかなり珍しいものになっています。事件はフジ山麓の青木ヶ原樹海での失踪が大きく関与している節があるのですが、ここに至るまでの裏付け捜査が杜撰という一面がこの事件を長期化させているといってもいいでしょう。一応、山梨県警との合同捜査という形になっていますから、どちらもぼんくら刑事しかいないということになってしまいます。
そんな内容ですから、オールスターキャストですがドラマ化はされていません。早い話しがタイトルに偽りありってことでしょう。「桃源郷」なる言葉はもともとは中国のユートピアのことです。この小説では単に山梨県の桃の木が出てくることぐらいで、事件の解決にその桃の木の枝が大きく関与しているくらいで、後はドロドロの殺人事件です。タイトルにだまされてこの本を買った人が多いのではないでしょうか。
最初から事件の犯人が出てくる典型的なパターンですが、その人物に対する捜査が先入観に基づいて別の方向へ進んでいくのでなされないのが一番の問題点です。十津川警部とあろうものが最初から捜査方針を間違えているのですからどうしようもありません。事件の解決までに2年を費やしますが、その大半が自殺した人間の周辺捜査という形を取っているのですからどうしようもありません。消去法でいって一番怪しいのは誰かということぐらい、読者でも分かりますが、その人物への捜査がうやむやなのですから焦点がぼけています。ましてや、死んでしまったはずの人間を途中から登場させるという怪奇ミステリーの手法を取り込んでいるので、話しが途中からおかしくなります。
東京と山梨なんて時間にして数時間の距離です。その事件現場に何度も捜査のために宿泊旅行をするんですから税金の無駄遣いもいいところです。殺人事件は東京で起きているんだからもっと足元をしっかり捜査しろよ!といいたくなる内容です。
小説ですから、ストーリー展開に不可解さがあるのは当然なのでしょうが、一度事件の終結宣言をしているのですから、これは被疑者死亡で逮捕者がいないことを割り引いても、いってみれば誤人逮捕といっしょですから問題ですわな。
そして、何度も青木ヶ原樹海を捜査するあほらしさ。最初の捜査でなぜ発見出来ないのか疑問です。ここで、死体が発見されていればその後の事件は展開が変わっていたろうに。急展開はN大の探検クラブが樹海の風穴を調べるという下りです。まるで取って付けたような展開で、この探検クラブが転落した遺体を発見し、事件が急展開します。この調査が一年前ならば、このストーリーはあり得ないわけです。
幕切れのテンポはいいのですが、肝心のストーリーがお粗末なので読んでも何かすっきりしません。
幕切れのテンポはいいのですが、肝心のストーリーがお粗末なので読んでも何かすっきりしません。
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