ベートーヴェンとフィルハーモニック 2 | |
Beethoven and the Philharmonic 2 |
曲目/
CD2
メンデルスゾーン交響曲第4番イ長調
9.第1楽章 Allegro vivace 11:09
10.第2楽章 Andante con moto 05:59
11.第3楽章 Con moto moderato 06:19
12.第4楽章 Saltarello - Presto 05:30
13.モーツァルト/歌劇「イドメネオ」より「海は穏やかだ、さあ行こう」(Placido e il mar) 03:50
14.ボッケリーニ/弦楽四重奏曲-メヌエット 03:44
15.ハイドン/交響曲第94番第3楽章-メヌエット 03:21
16.ヨンメッリ/シャコンヌop.5-13 04:12
17.ハイドン/ウェールズ皇太子のための行進曲(March for the Royal Society) 03:37
18. ベートーヴェン/交響曲第9番- 第4楽章 24:11
指揮/ロイ・グッドマン
モニカ・ハジェット 5-8
演奏/ハノーヴァー・バンド
ホルン/アンソニー・ハルステッド 2
バリトン/マイケル・ジョージ 4
ピアノ/クリストファー・ケイト 4
ソプラノ/パトリシア・アブラハム 13
合唱/オスロ・カテドラル合唱団 18
録音/1983/05/07 5-8
1987/12/08 15
1988/04/14 1,3,4,16,17
1988/04/27 18 オール・セインツ教会 、トゥーティング
モニカ・ハジェット 5-8
演奏/ハノーヴァー・バンド
ホルン/アンソニー・ハルステッド 2
バリトン/マイケル・ジョージ 4
ピアノ/クリストファー・ケイト 4
ソプラノ/パトリシア・アブラハム 13
合唱/オスロ・カテドラル合唱団 18
録音/1983/05/07 5-8
1988/06/17 9-12
1988/04/15 13,141987/12/08 15
1988/04/14 1,3,4,16,17
1988/04/27 18 オール・セインツ教会 、トゥーティング
1986/12/06 2 グレート・ホール、バーミンガム大学
英NIMBUS NI 5138/9


当時のコンサートの規模は400人程度の聴衆が入る程度の器で、ピカデリーサーカス近くにあった「Argyll Romms」というところで開催されています。現在は「Trocadero」というレストランになっているようです。気になるのは左右のベンチです。他の画像でも確認出来ましたが、両サイドに座る人はお互い向き合いの格好でコンサートを聴いていたようです。2階席もこの固定式のベンチが並んでいます。このような設備になっているのは、普段は舞踏会なんかで使われていたからでしょうかね。それにしても、当時はろうそくの明かりしかないわけですから神秘的な雰囲気で聴いていたんでしょうなぁ。
さて、第二部はメンデルスゾーンから始まります。このCDのプログラムは第1回のコンサートに経緯を飛揚してはいますが、それとまったく同じではありません。あくまでも、「The Royal Philharmonic Society」の175周年を記念していますから、この協会に深く関わりのある曲が取り上げられているのです。それが先にもちょっと触れたこの「イタリア交響曲」です。こちらは、ロン・グッドマンの指揮になります。当時のピッチで聴くと明るい感じのイタリアになります。やはり、指揮者の違いは演奏にも現れています。グッドマンはきっちり金管のバランスを整え、現代オーケストラで聴くのとそれほど違わない響きを引き出しています。それでも、木管の鄙びた響きや、ナチュラル・ホルンの響きは新鮮です。録音のせいもあるのでしょうがホールトーンも自然でとても同じ会場で録音されているとは思えないほどベートーヴェンとは違う響きです。そうそう、一番下の写真ではトランペットが一番右側、第2ヴァイオリンの後ろに配置されているのが分かります。別の写真ではホルンの直ぐ横に並んでいますから曲によりかなりフレキシブルに配置を換えているのでこういう録音になるのかもしれませんね。アンサンブルにやや不揃いな箇所もありますが、まずは好演です。特に第2楽章などは室内楽的な典雅な響きで癒されます。
次のモーツァルトの作品は「イドメネオ」からの「海は穏やかだ、さあ行こう」です。実はこのCD二三度は聴いているのですが、交響曲以外はまともに聴いていませんでした。輸入盤の英語の解説もまともに読んでいなくて今回この一文を書くにあたって、改めて正式な曲名を調べたわけです。この曲もモーツァルトの作品だとはわかっていましたがなんというオペラの曲かは知りませんでした。で、「イドメネオ」というオペラ・セリアの第2幕の曲だと分かった次第です。当時はこういうオペラの中の曲が流行歌のようにして知られていたのですね。この曲は合唱を伴っていますから、そういう意味では教会なんかでも歌われたのでしょう。こんな曲です。
ボッケリーニのこんな曲です。ボッケリーニのメヌエットは良く知られた曲です。ここではヴァイオリニストでもある、ロイ・グッドマンとコンマスのハブロ・ベゼノシウク、ユーディス・ターリングのヴィオラ、そして楽団の創設者でもあるキャロライン・ブラウンとセバスチャン・コンベルティのチェロという五重奏で演奏されています。即席のクインテットですが楽しんで演奏している様が目に浮かびます。
この協会とハイドンも切っても切れない関係があります。そんなハイドンの作品からは交響曲第94番「驚愕」からのメヌエットと「ウェールズ皇太子のための行進曲」が収録されています。驚愕の方はインテンポでひじょうにすっきりとした演奏です。この組み合わせでハイドンの交響曲全集が企画されていましたが、途中で挫折してしまったのが残念です。で、「ウェールズ皇太子のための行進曲」の方ですが、これは珍しい曲です。ホーボーケン番号では行進曲の分類になっていてHob.VIII:3という番号が与えられています。もとのタイトルは「Haydn: March for the Royal Society」でブリリアントから再発売されたアダム・フィッシャー/オーストリア・ハンガリー・ハイドン交響楽団の交響曲全集には含まれていませんが、ニンバスから出ていた別の8枚組のNI-1722のセットの方には含まれていました。ファンファーレも勇ましい行進曲で親しみやすい作品です。しかし、こういう作品を二つのオーケストラで収録しているとはニンバスも変わった会社です。
大曲は既存の録音の使い回しですが、次のヨンメッリの「シャコンヌ」はこのCDのために録音したようです。これも珍品でそうそう音源があるわけではありませんが、YouTubeにはありましたね。こんな曲です。4分足らずの作品ですが当時は良く演奏された曲なのでしょう。メリハリがあって分かりやすい曲です。ハノーヴァーバンドの演奏はリズムにキレがあって躍動感があります。
さて、最後を飾るのはやはり、ベートーヴェンの交響曲第9番からその第4楽章です。これも、既存の交響曲全集からの音源ですが、グッドマンは室内楽的な編成のサウンドでなかなかフレッシュな第9を聴かせてくれます。全体は64分とかなり快速な演奏なのですが、この第4楽章に限っては24分台とそれほど快速ではありません。同じ古楽器による演奏でもノーリントン、ブリュッへンは22分台、ホグウッドが24分55秒ですからほぼ同じぐらいでしょうか。声楽のソロに入る部分からテンポを落としてじっくりと歌を堪能出来る演奏です。弦の編成が少ないので金管が際立って聴こえます。特にバロックトランペットの突き刺さるようなストレートな響きは新鮮に響きます。たまにはこういう「合唱」も心が洗われるようで良いですね。当時の人はこういう響きでベートーヴェンを聴いていたんですな。それにしても、タイムスリップで過去に戻る事が出来るような疑似体験が出来るとは良い時代になったものです。
ところで、実際の175周年記念コンサートも行われています。こちらはパーティ形式のように丸テーブルを囲んだホールでおこなわれたようです。ジャケットによると下がその時の写真です。

このCD、ネットで検索してもほとんどヒットしません。たまたまヒットしたら自分のホームページでした。あはっ、日本の市場にはほとんど出回らなかったものなのでしょうかね?