
差出人不明で、東北の山荘への招待状が6名の男女に届けられた。彼らは半信半疑で出かけて行く。雪に埋もれ、幸福感に酔っていた彼らはやがて恐怖のどん底に突き落とされた。殺人が発生したのだ。しかも順々に……。クリスティ女史の名作「そして誰もいなくなった」に、異色の様式で挑戦する本格推理長篇。---データベース---
小説として発表されたのは1971年という西村氏のごく初期の作品です。まだまだ流行作家という位置づけではなくようやく、本格的に作家として始動し出したという時期の作品です。そういう意味では新鮮味のある作品で、チャレンジ精神がみなぎっている意欲が感じられます。そんな時代の作品ですから十津川警部はまだ登場しません。
推理小説好きの人なら、1回は目にしたことがあるであろう「ノックスの十戒」ってのがあります。これはイギリスの作家のロナルド・ノックスが定めた「探偵小説が守るべきルール」です。ウィキに紹介されていますからますから列記してみましょう。
1.犯人は物語の当初に登場していなければならない
2.探偵方法に超自然能力を用いてはならない
3.犯行現場に秘密の抜け穴・通路があってはならない
4.未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない
5.中国人を登場させてはならない(当時、黄禍論を背景として、中国人が悪事を行なう低俗なスリラーが6.横行していたためとされる、また中国人は全て超能力者と誤解されていたため)
6.探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない
7.変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない
8.探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはならない
9.“ワトスン役”は自分の判断を全て読者に知らせねばならない
10.双子・一人二役は予め読者に知らされなければならない
2.探偵方法に超自然能力を用いてはならない
3.犯行現場に秘密の抜け穴・通路があってはならない
4.未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない
5.中国人を登場させてはならない(当時、黄禍論を背景として、中国人が悪事を行なう低俗なスリラーが6.横行していたためとされる、また中国人は全て超能力者と誤解されていたため)
6.探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない
7.変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない
8.探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはならない
9.“ワトスン役”は自分の判断を全て読者に知らせねばならない
10.双子・一人二役は予め読者に知らされなければならない
ま、早い話が「正々堂々と読者に挑戦しよう」という基本ルールなのであります。この中のワトスンとはもちろんシャーロックホームズに登場するワトスンですがこれにも定義があって、ワトスン役は一般読者よりごくわずか知能のにぶい人物がよい。ここまで徹底していると気分がいいですね。ということで、この精神に則り西村氏は最初に堂々とこのストーリーは双生児を使った替え玉トリックを利用していると宣言して読者に臨んでいます。フェアプレー精神ってやつですね。受けて立とうじゃありませんか。ということで読み始めました。
で、最初に気がつくのが設定がアガサ・クリスティの名作「そして誰もいなくなった」を踏襲しているということです。向こうは孤島を舞台にしていましたが、西村氏は雪で閉ざされた山奥のホテルを舞台に選んでいます。今の時代から考えるとちと無理のある設定ですが、まあこういう設定もありかなと考えるべきでしょう。何せ1970年初めですからね。
この小説ではこの孤立したホテルに6人のゲストが集められます。ここにホテルのオーナーが入りますがそれでも設定としては人数がたりません。まあ、ここにはちょっとしたトリックが隠されていますが、基本的にはこういう設定もクリスティを踏襲しています。ただ、この小説はこれだけではありません。この設定とは別に東京ではそれこそ双生児の小柴兄弟が別の事件を起こしています。警察はこの兄弟が事件を起こしていることは掴みますが、どちらが事件の実行者か特定出来ず、逮捕することが出来ません。さりげなく双子にはこういう問題点があるのだということを示唆しています。そして、二つの場所で別々の事件が同時進行します。まさしくタイトルの双曲線です。しかし、双曲線ですから何処かに集点があるわけです。
こうして二つの事件は、同時進行していきながら収斂していきます。山奥のホテルでは一時的に電話が繋がり外部と接触出来ます。ここで、このホテルで連続殺人事件が発生していることがニュースとして伝えられます。しかし、現場まで行く手段が無いのです。この現場到着までの時間の中でそして誰もいなくなったは完成されます。
一方東京の事件は匿名の警察への投書でその全貌が明らかにされていきます。ここら辺はちょっと肩すかしを喰ったような展開ですが、これで犯人の小柴兄弟は逮捕されるのですが銃撃戦で一人の女の子が流れ弾に当たり死んでしまいます。何と、不可解な設定なんだといぶかしく思いますが、このことが最後に大きな意味を持ってきます。
一方東京の事件は匿名の警察への投書でその全貌が明らかにされていきます。ここら辺はちょっと肩すかしを喰ったような展開ですが、これで犯人の小柴兄弟は逮捕されるのですが銃撃戦で一人の女の子が流れ弾に当たり死んでしまいます。何と、不可解な設定なんだといぶかしく思いますが、このことが最後に大きな意味を持ってきます。
さて、双子を使った事件。大団円はどんでん返しが用意されています。まあ、これは読まないことにはおもしろさは伝わってこないでしょう。やはり、初期の作品は読み応えがあります。