アンセルメのウェーバー「序曲集」 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

アンセルメのウェーバー「序曲集」

曲目/ウェーバー

 

1.『魔弾の射手』Op.77,序曲
2.『プレチオーザ』J.279,序曲
3.序曲『聖霊の王』Op.27.J122
4.『オベロン』J.306,序曲
5.『オイリアンテ』J.291,序曲
6.『アブ・ハッサン』J.106,序曲
7.序曲『歓呼』(祝典序曲)Op.59

 

指揮/エルネスト・アンセルメ
演奏/スイス・ロマンド管弦楽団

 

録音/1959年 ヴィクトリア・ホール、ジュネーヴ
P:ジェームス・ウォーカー
E:ロイ・ウォレス

 

DECCA ECS645

 

イメージ 1

 

 最近は新刊書はほとんど買わないので、そういう本屋というところはあまりいきません。魅力的な新刊書がないというのもありますが、もっぱら中古本のブックオフが行きつけですね。何しろ、読みたい本はブックオフの方が豊富ですからね。とくに、最近の読書の中心である西村京太郎、夏樹静子、清水義範、津村秀介なんて新刊本屋にはろくな本が並んでいません。特に津村秀介氏にいたっては故人ということもあってコーナーすらありません。てなことで行かないのですが、娘のインフルエンザで暇なのでついつい足を運んでしまいました。で、雑誌のコーナーを立ち読みしていたら、11月号のレコ芸の新譜情報コーナーにオーストラリアのエロクァンス・シリーズでアンセルメのCDがまたまた復活リリースされるとの告知が目に入りました。その中にウェーバーの序曲集というのがあるではありませんか。

 

 フランス音楽の名指揮者としてならしたアンセルメですが、ドイツものも結構録音していたのはあまり知られていません。まあ、ベートーヴェンの交響曲全集やブラームスの全集などは一時話題にはなりましたが、彼のウェーバーなんて日本では見向きもされなかったのではないでしょうか(2001年に一度CD化されましたが、ウェーバーとメンデルスゾーンの序曲をセットにしたもので纏まりには欠けていた様な気がします)。しかし、自称隠れアンセルメファンの小生はLP時代にはそういうものまでコレクションをしていました。ずいぶん処分をしてしまったのですが、これは手元に残してあったはずです。早速我が家に戻り、レコードラックの中を探しまくったら、出てきました。それが今日取り上げるものです。これはイギリスデッカの「ECLIPSE」シリーズで発売されたものです。

 

 手塩にかけて育てたオーケストラで引退するまでこのオーケストラの常任を務めていたアンセルメですから、コンサートではドイツものもバランスよく取り上げていたのでしょう。まあ、デッカ自体がドイツものの録音が手薄だったというのもあるでしょうが、そういう中でこの録音も生まれたのかもしれません。曲は定番中の定番ともいえる「魔弾の射手」序曲で始まります。ドイツのオーケストラとは違う重心の低くない演奏です。そういう意味ではどっしりとした安定感はありませんが、きりりと引き締まったウェーバーが響きます。ただ、聴かせどころの狩人を描くホルンの響きはやや安定感を欠いたものです。本格的なオペラはアンセルメは指揮したことがあるのでしょうかね。ウェーバーの序曲集にはカラヤン、サヴァリッシュ、クーン、スウィトナーなどのものがありますがいずれもオペラを得意としていた指揮者です。そういう意味ではアンセルメの演奏は、やや異質な響きがするといえないこともありません。まあ、ウェーバーのオペラ自体、「魔弾の射手」以外現在でもほとんど上演される機会がないことを考えると、そういうことは意識しない方がいいのかもしれませんが・・・・

 

 

 ウェーバーはイメージとしてはオペラ作家というイメージが強いのですが結構広範囲な曲を書いています。交響曲なんてのも残しています。モーツァルトの妻だったコンスタンツェはウェーバーの甥っ子に当たるんですね、知りませんでした。3曲目の序曲「聖霊の王」は元々は歌劇「リュベツァール」のためのものでしたがその後改作してこのタイトルになったようです。で、もとの作品は断片しか残ってないということです。

 

 

 ただ、「オベロン」にしてもオペラとしてのドラマというよりもどうも舞台作品という点では共通はしているのですが、アンセルメの作る音楽はバレエ的な色彩を感じてしまいます。節回し一つにしても、背景にバレエの踊りが目に浮かんできます。「アブ・ハッサン」なんかは冒頭の音楽はどう聴いてもバレエの「パ・ドゥ・ドゥ」のシーンを連想してしまいます。でも、そう思って聴くとアンセルメの色彩感ある指揮姿も思い浮かんでこれはこれで楽しい演奏に聴こえてくるから不思議です。
 

 

 ここでは全7曲のウェーバーの作品が収録されていますが、そのどれもがオペラというよりもバレエという視点から演奏されているところがユニークです。ですから、この演奏を聴いてからカラヤンの演奏を聴くとまったく別の音楽と思えるほど印象が違います。それでも、ステレオ期のアンセルメ録音を一手に引き受けたプロデューサーのジェームズ・ウォーカーとデッカのステレオ録音の生みの親であるロイ・ウォレスが組んだことでこの録音が誕生しています。レコードではやや高域が丸みを帯びていることが聴き取れますが、名録音です。アンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団によるデッカへの録音は、基本的にオーケストラの本拠地であったこのジュネーヴのヴィクトリア・ホールで行われています。19 世紀にジュネーヴ駐留のイギリス総領事によって建立されたこのホールは、優れた音響を誇る上に、レコーディングにも最適でした。デッカによる初めてのステレオ録音は、1954年5月13日にこのヴィクトリア・ホールで収録されたアンセルメ/スイス・ロマンドによるリムスキー・コルサコフの交響曲「アンタール」で開始され、以来その後この伝説のホールで幾多の名録音が生み出されています。

 

 こうやって、たまにレコードを引っ張り出して聴くのもなかなか新鮮な気持ちがしていいものです。下はこのレコードからの全曲の復刻音源です。