
シンデレラは最後に王子さまと結婚する。しかし、それで終わらないのが人生である。シンデレラは、心やさしく、頭もよく、美しい。それは確かにその通りである。しかし、王子さまのほうはどうか…。はたまた、年ごろになった赤ずきんちゃんやアリスの運命は?人間ピノッキオの学校の成績は?王様に裸の服を着せた二人組の次の仕事は?etc.―おなじみ名作童話の意外な後日譚を描く表題作をはじめ、人間生活の不可解、可笑しみ、哀しさを奇想で抉る痛快シミズ・ワールド。機知満載の最新抱腹小説集。---データベース---
タイトルこそ「その後のシンデレラ」ですが、取り上げられている童話は、それだけではありません。ピーター・パンあり、赤ずきんちゃんあり、ピノッキオあり、アリス、ジャック出てくるわ出てくるわという状態で、この一話に次のものが含まれているのです。
・シンデレラ
・ジャック(ジャックと豆の木)
・赤ずきん
・ピノキオ
・アリス(不思議の国のアリス)
・ピーターパン
・仕立て屋(裸の王様)
・セドリック(小公子)
・ハイジ(アルプスの少女ハイジ)
これだけの作品のその後が収録されているわけです。それが清水流パスティーシュの俎上にのぼっているのですからただ事ではありません。
・シンデレラ
・ジャック(ジャックと豆の木)
・赤ずきん
・ピノキオ
・アリス(不思議の国のアリス)
・ピーターパン
・仕立て屋(裸の王様)
・セドリック(小公子)
・ハイジ(アルプスの少女ハイジ)
これだけの作品のその後が収録されているわけです。それが清水流パスティーシュの俎上にのぼっているのですからただ事ではありません。
この「シンデレラ」という名前、ペローの作品では「サンドリヨン」、グリム童話では「灰かぶり」と言うんだそうな。シンデレラは英語読みで、語源は灰ということで、灰にまみれて掃除をする継子がシンデレラということですな。一般に流布しているのはペロー版のストーリーでハッピィエンドで終わっていますが、グリム童話版ではシンデレラの姉たちには残酷な結末が用意されています。そして、清水版の結末はどうも、日本人的発想も加わって「渡る世間は鬼ばかり」てきな展開となっています。
それにしても、インターネットで検索するとおとぎ話のその後ってのは、誰でも思いつきそうなモティーフのような気がして、いろんな結末が百花繚乱のように書き込まれています。たとえば、王子に見初められてからシンデレラ自身が変わってしまい堕落していき王子にも愛想を着かされるというものや、いつ自分の立場が脅かされるか疑心暗鬼になってしまうもの。育った環境が違うため周りの取り巻きに苛められ結局は城から逃げ出してしまうというものなど。傾向として、得てして物語とはハッピーエンドで終わらないケースが多いようですね。
それと、冷静に考えてみると残酷なものが多いようです。「ジャックと豆の木」なんかは、ジャック自身が結構ワルな存在であることが分かります。ピノッキオにしてもそうです。そういう主人公のその後ですから、清水ワールドは結構辛辣です。
さて、この本には以下の9話が収録されています。
その後のシンデレラ 「小説non」1997年7月号
喧嘩の畦道 「小説non」1995年11月号
全面対決 「小説non」1996年3月号
王様の耳 「小説non」1996年7月号
豆腐の角 「小説non」1996年11月号
ムカつく季節 「小説non」1997年3月号
回覧板 「小説non」1998年3月号
エッシャーの父 「小説non」1997年11月号
その後のシンデレラ 「小説non」1997年7月号
喧嘩の畦道 「小説non」1995年11月号
全面対決 「小説non」1996年3月号
王様の耳 「小説non」1996年7月号
豆腐の角 「小説non」1996年11月号
ムカつく季節 「小説non」1997年3月号
回覧板 「小説non」1998年3月号
エッシャーの父 「小説non」1997年11月号
全部同じ調子かと思って読むとこの本は失望します。パスティーシュは「シンデレラ」のみで後はエッセイやら小説が雑多に詰め込まれています。ちょっと統一感はありませんが、きらりと光る作品はあります。『エッシャーの父』は印象的です。だまし絵で有名なエッシャー。その父親は日本に来ていたことがあるのです。明治政府の依頼で治水工事などの指導者として活躍したのがエッシャーの父だそうです。福井県は三国町に彼が設定した小学校が復元して建てられています。実にモダンで斬新なデザインで、旅行でその建物に注目したことから清水氏のエッセイが生まれています。
高校生の娘がいるのなら「ムカつく季節」をそっと娘に読ませるといいかもしれません。そこからお父さんとの会話が生まれるかもしれませんね。ちょっとシュールな「回覧板」も最後にドキッとします。タイトルに惑わされずに読み始めれば、どっぷりと清水ワールドに浸れます。
最後にインターネットに書かれていた「シンデレラのその後」にまつわる記事の中で、なかなかの一文に出会いました。以下そこから拾わせてもらいました。
王子様と結ばれて大団円となる『シンデレラ』。だけど人には常に『その後』がありますね。終わり良ければすべて良しと言いますが、まさにその通り。終わりを全うするのがどれだけ難しいか。『事の行程を十とするならば、九をもって半ばとする』とありますが、およそ九まで辿り着かない事がどれだけ多い事か。
童話であった『シンデレラ』も『その後』を知ると、様々な教訓がございますな。
童話であった『シンデレラ』も『その後』を知ると、様々な教訓がございますな。