美しい四季~折々の詩(うた)とヴィヴァルディの四季~ |
曲目
1 はる,かなしみ 1:13
2 第1番ホ長調「春」第1楽章 3:22
3 猫 0:52
4 「春」第2楽章 3:11
5 たんぽぽ 0:29
6 「春」第3楽章 4:40
7 六月 1:07
8 第2番ト短調「夏」第1楽章 5:38
9 しょっぱい海 0:48
10 「夏」第2楽章 2:07
11 晩夏 0:39
12 「夏」第3楽章 2:49
13 夜と魚 0:54
14 第3番ヘ長調「秋」第1楽章 4:59
15 素朴な琴 0:27
16 「秋」第2楽章 2:52
17 地球に種子が落ちること,一生おなじ歌を歌い続けるのは 0:54
18 「秋」第3楽章 3:24
19 虫の夢 2:16
20 第4番ヘ短調「冬」第1楽章 3:33
21 石/雪 1:24
22 「冬」第2楽章 2:05
23 眠りの誘い 1:42
24 「冬」第3楽章 3:14
25 エピローグ~海はまだ 0:45
ヴァイオリン/アンネ=ゾフィー・ムター
指揮/ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1984/06/18-19 ホーフブルク・ツェレモニアンザール、ウィーン
1990/0815,28 ラジオ・コスタ東京
P:ピーター・オルウォード、仙波知司E:ウォルフガング・ギューリヒ
東芝EMI KIZNA TOCE-11089

これ、先日紹介した「さんまのピーターと狼」と同じ「初めてのクラシック・シリーズ」の中の一枚です。前にも書きましたがとても初めての・・・と呼べる内容のシリーズではないのですが、いま考えると非常に斬新なシリーズであったことが分かります。ここではジャケットに無邪気な子供たちの笑顔が採用されていてその点では子供向きかなと思わせますが、内容は何のナンの。実に奥の深い日本人の代表的な詩人の詩が朗読されていて、日本人の原点の詩情を感じさせる素晴らしいアルバムになっています。
演奏は超一流のカラヤン/ウィーン・フィル、そして華麗なるヴァイオリン・ソロはアンネ=ゾフィ・ムターと豪華です。この演奏をバックに檀ふみと今は亡き森繁久彌が詩の朗読を担当しています。ここに収録されている詩は、詩人の大岡信が日本の著名人の作品の中から厳選して監修しています。それぞれ季節にふさわしい作品をチョイスしてそのエキスが朗読されています。初めて聴いた時は、ヴィヴァルディの「四季」の演奏の一つのバージョンとしての捉え方で聴いたので、まあ、こんなものも有りかなとの感覚でしかなかったのですが、今こうして改めて聴いてみると、なかなか味わいのあるCDだと感心してしまいます。こういうものの機微が分かる年頃になったということでしょうか。元々のヴィヴァルディの残したソネットとは違う日本的な情景が目の前に広がります。
ただ、一つ聴いていて残念なのは檀ふみの朗読と森繁久彌の朗読とではカラーが違いすぎるということです。檀ふみのアプローチはシリーズコンセプトの子供に語りかけるようなニュアンスが感じられてどうも作為が感じられることです。これに対して、さすがは人生を知り尽くした森繁久彌の朗読は叔父ちゃんが孫に聴かせるような語りかけではなく、これ自体が一つの芸術とまで感じさる語り口で朴訥と語りかけてきます。この部分を聴いているだけでこのCDの価値がありますが、それがカラヤンの演奏と見事に相乗効果を生み出しています。華やかなヴィヴァルディの音楽が、ここまでしんみりと聴けるとは思いませんでした。最高の話術と最高の演奏のガチンコの成功例の一つでしょう。
ですから、ここにはこの「四季」1曲しか収録されていませんがこのCDはヴイヴァルディを聴くだけでなく、森繁久彌を聴くCDなのです。もちろんカラヤンの演奏も立派です。カラヤンはヴィヴァルディの四季を正規録音で3度残しています。2回はレコード用録音、1回はビデオ用録音です。そのいずれも素晴らしいのですが、このEMIへのウィーンフィルとのセッション録音は録音の良さも相まって最高の出来映えです。ムターのソロも円熟の域に達していますし、なんと言ってもウィーンフィルのバックのサポートが見事です。
詩との絡みでは「夏」が聴きものです。それこそ、詩と音楽が壮絶なバトルが繰り広げられるようないい演出になっています。こういう、意欲的な企画のCDすべて市場からは消えています。今の時代、こういう聴かせる企画のCD復活してほしいものです。EMIはiTunesにも配信していますからそういう形でもいいから復活してくれるといいですね。これは決して初めて聴くクラシックなんてレベルのCDではありませんぞ!CDはとっくに廃盤ですが、アマゾンのサイトではなぜか視聴が出来ます。興味のある人は覗いてみてください。