ウイ・アー・ザ・ワールド | geezenstacの森

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音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

 
WE ARE THE WORLD/
 USA for AFRICA

曲目
ウイ・アー・ザ・ワールド

 

演奏/Various artists

 

録音/1985/01/28-29、A&Mスタジオ、ロスアンジェルス
P:クインシー・ジョーンズ

 

ポニー・キャニオン G58M0050

 

イメージ 1

 

 早いもので、マイケル・ジャクソンが亡くなってもう1ヶ月以上経ちました。マスコミには未だに彼の周辺のことを取り上げて話題にしています。先日はNHKでもBSで特集番組を放送していましたからまだまだ何らかの影響は残るのでしょう。今年の10大ニュースにも名を連ねるに違いありません。そんな中、昨日は久しぶりにマイケルのビデオを引っ張りだしてきて次々と再生して楽しみました。丁度彼のミュージック・ビデオのスリラーがヒットした頃、我が家にもFi-Hiタイプのビデオが導入されました。そして、片っ端からMTVで流れていたプロモーションビデオを録画して聴いていたのを思い出します。 

 

 引っ張りだしたのは「Michel Jackson ビデオ・グレイテスト・ヒッツ」なるビデオもので、エピック・ソニーの発売になるものです。BRACE YOURSELから HEAL THE WORLDまで11曲が収録されています。そして、最後の HEAL THE WORLDを聴いた後で、やはりこれは外せないということで「WE ARE THE WORLD/ USA for AFRICA」を引っ張りだしてきました。先日娘がこの曲を聴きたいと探した時には見つからなかったものです。当方はLDで所有していて、レコードの中に混ざってしまっていて存在が行方不明だったものです。そんな訳で、LDを居間で聴ける環境が整ったのを機に整理してして発見したのです。

 

 LDは最初に発売された時購入したもので、かなり痛んでいて所々LD特有のノイズである雨が降る状態です。時の隔たりを感じます。それでも、冒頭のジェーン・フォンダが登場しこの録音の歴史的意義を話し始めると、そういう映像の瑕は気にならなくなりました。当時のアメリカのミュージックシーンを代表する大物アーテイストが一堂に会する歴史的イベントです。所属するレコード会社は違うし、ジャンルの違うアーティストが一堂に集っているのです。このLD盤の「WE ARE THE WORLD/ USA for AFRICA」はそのメイキングまでを収録しているという画期的なもので、テレビでは多分日テレの「24時間テレビ」で放映されたことしかないはずで、今回のマイケルの騒ぎの時でも、マイケル自身のビデオは盛んに放映されましたが、この「WE ARE THE WORLD/ USA for AFRICA」はオンエアされなかったはずです。ま、それだけ著作権問題が複雑に絡んでいるということなのでしょう。

 

 まあ、プロデューサーがクインシー・ジョーンズだからこそこれだけのミュージシャンを一つに纏められたということがあるわけですが、タイミングも良かったことが挙げられます。録音の当日はAMA(アメリカン・ミュージック・アワード)が開催されていて大物スターがそこに参加していたことも好都合でした。それにしても、当時はインターネットも、携帯電話もない時代です。これだけのメンバーに話しをつけるのは大変なことだったことが想像されます。映像では和気あいあいの雰囲気が映し出されます。まるでAMAの延長のような雰囲気です。そこへ、ボブ・ゲルドフが登場して一喝します。彼はアフリカの惨状を静かに訴え、エチオピアのキャンプで飢餓で死んでゆく沢山の子供たちを目の当たりにした話をします。これにより、浮かれていたメンバー達もようやく「何のために集まったのか」を思い出し、神妙な面持ちになっていく様子が見事に捉えられています。ダイアナ・ロスなんかは目に涙を浮かべています。

 

 本来の目的を再確認し制約された時間の中でまず、全員のコーラス・テイクからレコーディングが始まります。このコーラスのリハの途中でアル・ジャロウがハリー・ベラフォンテの「バナナ・ボート」を歌って場を和ませるシーンは、観ていてさすがにエンタティメントだと実感させるシーンです。それにしても、このメンバーの中にダン・エイクロイドが含まれているのはちょっと意外でした。彼の肩書きには一応ミュージシャンという項目もありますがどう見たって「ゴーストバスターズ」の俳優です。それと、一時期はキャリー・フィッシャーと婚約していたこともあり、当時はそのキャリーと一年で離婚していたポール・サイモンもその場にいて気まずい雰囲気も感じられます。

 

 これだけのアーティストを揃えたレコーディングは、ソロの部分の収録も無事終わり、表面上はつつがなくほぼ終了します。まあ、一日で録り終えるのはやはり大変で、後に一部追加収録は行われています。しかし、出来上がった作品はさすがと思わせるもので世界中でヒットしました。ところが日本のヒットチャートでは1位にはなっていないんですね。不思議ですがそれがまた歴史的事実です。

 

  さて、あらためてこの映像を見て不思議な展に気がつきました。冒頭ミュージシャンがスタジオ入りする時のその入り口に「エゴを捨ててスタジオに入ろう」という張り出しがあります。
なんでこんなものが張り出してあるのだろうと、それまでは気にも留めてなかったのですが、やはりそこには人間のドラマがあるのですね。そして、ジャケットを確認するとこの集合写真どこか不思議です。本編の収録シーンには登場していて、この写真には写っていないアーティストがいるのです。そんなことで、このレコーディングについての裏話的なことを検索してみました。やはり、探せばあるもんですね。やはり、ポインター・シスターズのジューン・ポインターがいません。そして、もう一人、カントリーシンガーのウェイロン・ジェニングスも欠けています。ポインター・シスターズは3人組でそのうちの二人の姉妹はちゃんと映っていますがリード・ボーカル役のジューンはソロ・ボーカルが取れなかった事に失望しての退出、そしてウェイロンは歌詞の内容が気に入らないとそそくさと帰ってしまったということです。

 

 探せばいろいろとエピソードが出てきます。ヒューイ・ルイスはトラブルで間に合わなかったプリンスの代役で出演したとか、声をかけていなかったスモーキー・ロビンソンが突然飛び入りしたとかで立ち位置の割り振りが混乱したとかぞろぞろ出てきます。確かに、映像の中にも床にちゃんと立ち位置を示すテープが張ってあったことが確認出来ます。

 

そんな、裏話に興味のある方はこちらものぞいてみてください。
http://www.nonareeves.com/life/gotama/words-session/
それを読みながら、この世紀のセッションを見てみるとまた違った印象になるのではないでしょうか。このセッションに参加したメンバーではマイケルを初め、既に4人の人物が他界しています。ご冥福をお祈りします。