ナナ・ヘイヘイ・キス・ヒム・グッドバイ | geezenstacの森

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Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye

演奏/スティーム

 

 

 「Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye」という少し長いタイトルの曲があります。今の若い人が知らないのは当然でしょう。なにせ、元々は1969年のSTEAMというグループの曲で、全米No1になっています。

 当時はただのヒット曲の一つとして聞き流していた曲でした。その曲との思わぬ再会がありました。1976年丁度ヨーロッパ旅行の真っ最中でした。ウィーンからローマへの移動の途中でベニスに立ち寄りました。ベニスという街は本当にぽつんと海の中に存在します。列車を降りると、目の前にはゴンドラの並ぶ運河が縦横に走っています。到着したのは10時過ぎで朝の通勤時間帯は過ぎていました。

 

 立ち寄りたかったのは「サン・マルコ寺院」だったのでゴンドラに乗らずに歩いてしまったのがかえすがえすも残念なのですが、何処をどう歩いたのか分かりませんが海辺りの広場に出ました。丁度そこにカフェがあったので休憩することにしました。カフェには一人の日本人が先客としていました。よく見ると当方と同じのバックパッカー、つまりは学生の卒業旅行者です。ただ、何処の誰とも知りません。が、仲間とあってすぐに打ち解けました。話しをするとどうも九州の学生のようでした。その彼との話しの中で、このスティームの曲のことが話題になったのです。

 

 全米ではヒットした曲なのですが日本ではぱっとしませんでした。多分ヒットチャートにも昇ってこなかったかもしれません。そんな曲ですから当時の周りの友人も誰一人としてこの曲を知りませんでした。そういう状況でしたから自分の好きなこの曲を知っているということで話しがあったのですね。ただ、曲を知っているといっても、印象的なこの曲のメロディとタイトル、それに演奏者を知っているというだけでした。それでも、この曲を知っているということで親近感がわき、このベニスの滞在中ずっと一緒に行動しました。話しをするとガチガチのポップスファンではなく、クラシックにも精通しているということでこれまた話しが合いました。

 

 そんな訳で、ひとしきりスティーム談義をしたあとは、何処へ行くかということになってオペラを観に行こうということになったのです。たまたま、自分が前日までウィーンに居て国立歌劇場でプッチーニのオペラを観たということを話しをしたのです。そう、このベニスには有名なフェニーチェ劇場があるのです。場所を確認したら直ぐ側です。運河を渡り歩いていくことに。狭い路地を抜けると目の前にデーンと劇場が広がりました。運がいいことに公演があります。それも、ちょっと待てば開演です。と言うことでチケットを買って入りました。演目は「二人のフォスカリ」というベルディの初期の作品です。ただ、当時の自分がまったく知らない作品でした。二人はバルコニー席に陣取ってオペラを楽しみました。オペラは感動的に盛り上がって熱狂的にカーテンコールでした。主役は誰だったのか、指揮者は誰だったのかまったく記憶がありませんが、ブラボーの声をかけたら二人の方を振り向いて手を振ってくれました。言葉は理解出来ませんでしたがヴェルディの音楽は心にずっしりとしみ込み忘れられないオペラ鑑賞となりました。

 

 で、ここからが不思議なのですが、二人はまた、このスティームの「Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye」を口ずさみながら劇場をあとにしたのです。ヴェルディとスティーム、何の脈絡もありませんがその時は19世紀のオペラと20世紀のポップスがコラボしたのでした。彼とはこのベニスでは一緒でしたが、そのあと列車に乗り込む時はもう別々の他人になっていました。小生はローマへ向かいましたが彼が何処へ向かったかは聞きませんでした。こういう思い出のある曲がこの「Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye」なのです。こんな感じの曲でした。

 

 どこかで耳にしたことがあるかもしれませんね。そうです。80年代にはバナナラマという、こちらもかなり懐かしくなってしまった女性グループがカバーしてヒットさせました。演奏にあまり締まりがなく、少しだるい感じの仕上がりでした。それがこちらです。

 

 

 この曲についてネットでいろいろ調べたのですが、このコーラスの部分はやはり他の人にとっても「耳にこびりついてしまう」ようで、アメリカでは次のようなスポーツで観客に歌われるようです。

 

・プロレスで悪役が負けて退場する時
・NHL(アイスホッケー 米4大スポーツの一つ)のモントリオール・カナディアンズが、ゲーム終盤で勝利が見えている時
・NBA(バスケット 米4大スポーツの一つ)で、アウェイのチームの選手が、反則退場する時

 

訳詞

{{{ {Intro}
ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ,なあいいか,サヨナラだ

俺なら大事にしてやれるけど,あいつは絶対そうじゃない
だってあいつが本気なら,泣かせたりしないはずだろ?
確かにカッコいいのかも,だけどよく聞いてくれ

だったらちくしょう,さっさとあいつにキスしろよ
(キスするとこを見せてくれ)
構わないからキスをして,あいつにサヨナラしてくれよ

ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ,なあいいか,サヨナラだ

よく聞けよ

絶対にあいつはそんなことしない,わざわざお前のとこ来て
お前のことを慰めて,元気づけてやるなんて
いくらお前が悲しくて涙が溢れて止まらなくても

だったらちくしょう,さっさとあいつにキスしろよ
(キスするとこを見せてくれ)
構わないからキスをして,あいつにサヨナラしてくれよ
ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ,なあいいか,サヨナラだ

{Bridge}
いいかサヨナラしてくれよ
ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ,なあいいか,サヨナラだ

いいかサヨナラしてくれよ
ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ,なあいいか,サヨナラだ

いいかサヨナラしてくれよ
ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ・ナ,なあいいか,サヨナラだ

本当にお前が好きだから
お前がいないとダメなんだ
毎日そばにいてくれなくちゃ
だから頼むよお願いだ

ウソじゃないってわかってるだろ?
お前がいないとダメなんだ
あいつのために諦めるとか,そんなの絶対我慢できない
ああいいよ
もう一回チャンスをくれよ }}}

 

 歌詞にgoodbyeがあるので、ファンが相手チームの選手の退場を喜んで歌う、という決して良いマナーとは言えない使い方をされてしまっています。歌詞の内容は、ある男が、別の男との恋に泣いている女の子を「あんな男にはキスをくれてやって別れちまえ、俺のほうが大事にするぜ」と口説くというものです。そういえばこんな映像もありました。

 

 

 トランプ退陣の時の映像でね。強烈なジョークです。歴代の大統領が彼の退陣を歌い上げるんですから。こんなのもあります。トランプ丸の沈没です。こういう風刺にぴったりの曲なんですなぁ。今ネットを検索すると、ずらーっとこんな映像が出てきます。

 

 

 そういうこともあり、アメリカ人には忘れられない曲のようです。
 さて、スティームってどんなグループなんでしょう。このグループはレモン・パイパーズやレフト・バンクを手掛けたポール・レカが作り上げた「架空のバンド」なんですね。ゲイリー・デ・カルロ(ギャレット・スコット)をボーカルに迎え、「ナナ・ヘイ・ヘイ・キス・ヒム・グッバイ」を大ヒットさせましたが、スティームなるグループは明確にスティームとして活動していた形跡はなく、レコードのパッケージの写真も誰が誰なのかわからないようです。つまり、そのときレコーディング現場に居合わせたスタジオ・ミュージシャンが、ノリで仕上げた作品であるらしいんですね。。そういう経緯から生まれた作品なので、もしかしたら版権、著作権が不明確なのかもしれません。小生の好きなバージョンにアカペラの「ベルモンツ」によるこんな演奏もありました。

 

 

でも、やっぱりオリジナルが最高です。と言うことで、CDの音源による2018年リマスターステレオ盤です。