2 0 1 0 年
[原題]2010
[製作国]アメリカ
[製作年]1984
[配給]MGM=UA配給
スタッフ
監督 ピーター・ハイアムズ
製作 ピーター・ハイアムズ
脚本 ピーター・ハイアムズ
音楽 デイヴィッド・シャイア
撮影 ピーター・ハイアムズ
編集 ジェームズ・ミッチェル
ミア・ゴールドマン
特撮: リチャード・エドランド
デザイン: シド・ミード
プロダクション
出演
ロイ・シャイダー ヘイウッド・R・フロイド
ジョン・リスゴー ウォルター・カーノウ
ヘレン・ミレン ターニャ
ボブ・バラバン ドクター・R・チャンドラ
ケア・デュリア デイヴ・ボウマン
ダナ・エルカー ディミトリ・モイセヴィッチ
マドリン・スミス キャロライン・フロイド
ジェームズ・マクイーチン ヴィクター・ミルソン
メアリー・ジョー・デシャネル ベティ(ボーマンの妻)
エリヤ・バスキン マクシム
ウラジミール・スコマロフスキー ユーリ
ハータ・ウェア ボウマンの母
アーサー・C・クラーク 公園のベンチの男
(ノンクレジット)
ジョン・リスゴー ウォルター・カーノウ
ヘレン・ミレン ターニャ
ボブ・バラバン ドクター・R・チャンドラ
ケア・デュリア デイヴ・ボウマン
ダナ・エルカー ディミトリ・モイセヴィッチ
マドリン・スミス キャロライン・フロイド
ジェームズ・マクイーチン ヴィクター・ミルソン
メアリー・ジョー・デシャネル ベティ(ボーマンの妻)
エリヤ・バスキン マクシム
ウラジミール・スコマロフスキー ユーリ
ハータ・ウェア ボウマンの母
アーサー・C・クラーク 公園のベンチの男
(ノンクレジット)
声の出演: ダグラス・レイン HAL9000の声
オルガ・マルスネード SAL9000の声

あらすじ 西暦2001年、月面で発見された謎の黒石板、モノリス解明のために、アメリカの宇宙船ディスカバリー号が木星へと旅立った。途中、コンピュータHAL9000が反乱を起こし、ボーマン船長(ケア・ダレー)を除いた乗組員全員を殺した。ボーマンは、モノリスが木星を回っているのを発見し「何てことだ。星がいっぱいだ」という言葉を残し行方不明となってしまった。そして2010年。ディスカバリー号の計画責任者で元アメリカ宇宙飛行学会議議長のヘイウッド・フロイド博士(ロイ・シャイダー)、HALの生みの親チャンドラ博士(ボブ・バラバン)、ディスカバリー号を再生させる訓練を受けたエンジニアのカーノウ(ジョン・リスゴー)の3人は、ソビエトのタニヤ船長(ヘレン・ミレン)らと共に宇宙船レオーノフ号に乗り込み、木星へと向かった。世の中は、米ソ間の緊張が高まっていた。やがてディスカバリー号とのランデヴーに成功したところで、カーノウは宇宙遊泳してディスカバリー号に乗り移り、ディスカバリー号を再始動させた。そしてチャンドラ博士の手でHALが蛛る。いよいよ、木星軌道上でモノリスの調査の準備が始まった。しかし、モノリスに近づいたソビエトの隊員のポッドが吹き飛ばされてしまった。その頃地球では、米ソの関係が悪化し、いつ宣戦布告があってもおかしくない状況に陥っていた。ついにはディスカバリー号とレオーノフ号に米ソの隊員が分かれる命令まで下された。そんなある日、フロイド博士は、ボーマンの亡霊からの声を受けとった。その声は「あなたたちは2日以内にここを離れなくてはいけない」「すばらしいことが起ころうとしている」とくり返した。すると突然モノリスが姿を消し、同時に木星表面に見慣れぬ黒斑が生じて、それがだんだんと大きくなっていった。とはいえ、2日のうちに木星の軌道から遠ざかるのは燃料不足のため不可能だった。そこでフロイドは、2隻の宇宙船をつなぎ合わせ、地球に帰還するというアイデアを思いついた。そのためには、ディスカバリー号の点火をHALに任せねばならないが、HALは最後まで木星の新現象を調査すべきだと主張した。結局、人間の命令を守るHAL。遠ざかるレオーノフ号の背後で、木星の黒斑は巨大化していった。観察では、黒斑と見えるものは分裂増殖する無数のモノリスであることがわかった。やがて、木星が閃光に包まれていった。いま、大宇宙の彼方からメッセージが、人類の前に姿を現わそうとしていた・・・。(MGM/UA映画=CIC配給*1時間53分)---ムービー・ウォーカーより---
「2001年宇宙の旅」の続編というか解決編ですが、前作があまりにも衝撃的だったのでこちらは殆ど忘れ去られているのではないでしょうか。監督が違えば、考え方、映像感覚も全く違うという事で評価が分かれるのでしょう。でも、個人的には「2001年宇宙の旅」は映像的には優れていても、内容の抽象性からして難解であった事は否めません。その点、このピーター・ハイアムズ監督の「2010年」は前作の未解決の部分に対する解答をきっちり描いているという点では評価出来るのではないでしょうか。

少なくとも謎の物体として描かれてきた1²×2²×3²という数学的構造を持つ「モノリス」に秘められた謎の解答は出ているし、なぜコンピュータの「HAL9000」が反乱を起こしたかの解答もちゃんと描かれています。前作が好きな人からは冷たい批評が多い本作なんですが、そういう説明の部分に重点を置いた解決編と考えれば、監督の描かんとした事は正当な評価が出来るのではと考えられます。

「2001年宇宙の旅」はSFがサイエンス・ファンタジーと解釈されていた頃の作品で作品的にも幻想的な部分がありますが、「2010年」は本来のSF、サイエンス・フィクションとして描かれています。時代的には米ソの対立があった頃ですし、現実的にアポロ計画が終演し宇宙への興味が薄れている時期で、宇宙関連予算が削られていたという時代背景があります。そういう対立構造と現実をベースに描かれた作品でリアリティがありました。そして、映画では宇宙では米ソが協力してディスカヴァリー号の捜索とモノリスの解明に当たっているのにそれを打ち上げた地球ではキューバ危機のように一触即発の緊張関係にあるという構図で描かれています。


この映画、原作としてアーサー・C・クラークが1982年に「2010年宇宙の旅」という小説を書いていてそれの映画化という事も出来ますが、クラークはキューブリックだけにはこの映画を撮らせたくなかったような事をどこかで語っていました。意見の対立が激しかったんでしようね。メイキング映像ではその辺のところを考慮してか、ハイアムズ監督との打ち合わせはメールを通して意見交換をしたと語っています。監督はハリウッド、クラークはスリランカに住んでいましたからこの話しはまんざらでもないようです。しかし、ホワイトハウスをバックにしたシーンではロイ・シャイダーとNCA議長との会話シーンの左端のベンチに当のアーサー・C・クラークがカメオ出演しているのですから怪しいものです。

主演はロイ・シエイダー。ちょっとびっくりしたキャスティングです。「スター・ウォーズ」にしろ、前作「2001年宇宙の旅」でもそうでしたが、こういうSFもの、ストーリーが命ですからあまり有名な俳優は使わないのが定石です。ですが、これは続編ですからそういうこだわりは捨てたのでしょう。まあ、それが吉と出たか狂と出たかは見た方の判断ですが個人的には適役でした。アメリカ側のクルーはディスカヴァリー号の復旧が目的ですからその道のベテランという事で年齢設定は高めです。そういうところがこのキャスティングに繋がっていたんでしょうね。ジョン・グリスゴーにボブ・バラバン、いいキャスティングです。

解決編という事でやや理屈っぽいところがある事も確かです。時代性を取り入れた事でファンタジーの要素が減って生々しい米ソ対立という構図を取り入れた事が仇となって世の中が変化すると、その部分が陳腐化してしまいました。でも、その部分が無いと後半の盛り上がりが欠ける事も確かです。で、結論が平和と二つの太陽という事なんですが、これが原作の結論という事ではやや拍子抜けとなった事も否めません。原作が存在する以上、これ以上の作品の完成度は望むべくも無いでしょう。クラークの原作はこの後「2061年宇宙の旅」、「3001年宇宙の旅」と続きますが多分映画化される事は無いでしょう。

この映画でコンピューターHALL9000はディスカヴァリー号とともに消滅してしまいますが、下記のプロジェクトで会う事が出来ます。
http://www.halproject.com/hal/