モーリス・アンドレのハイドン | geezenstacの森

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モーリス・アンドレのハイドン

曲目
1. ハイドン/トランペット協奏曲変ホ長調 6:34 4:26 4:42
テオドール・グシュルバウアー/バンベルク交響楽団
2. L.モーツァルト/トランペット協奏曲ニ長調* 6:26 5:42
ジャン=フランソワ・パイヤール/パイヤール室内管弦楽団
3. フンメル/トランペット協奏曲ホ長調** 10:47 4:59 3:57
ジャン=バティスト・マリ/ラムルー管弦楽団

 

トランペット/モーリス・アンドレ
録音/ 1971、1969*、1965** 
R:ペーター・ウィルモース

 

ERATO B15D-39039

 

イメージ 1

 

 最近は若手のトランペット奏者が台頭してきているのでモーリス・アンドレの名前はとんと聴かなくなりましたが,まだまだ健在です。しかし、1933年の生まれですから間もなく76歳という年齢になります。2003年が最後の来日で、最近は引退したようですから彼の姿はもう見られないのかもしれません。

 

 このCDは購入してから20年以上経つのに、つい最近まで棚の奥に眠っていました。1月に作成した「こてこてクラシック第5回」の時にハイドンのトランペット協奏曲の音源を探している時に探していて発見して開封したものです。こういうCDが棚の中にまだ眠っているから困ったものです。いろいろ番号を替えて,何回も再発されているようですが、BMG時代のものでは最後のものでしょう。

 

 さて、ハイドンのトランペット協奏曲といえばこの楽器のための一番有名な曲ではないでしょうか。アンドレも何度かこの曲を録音しています。ここで採用されているのはバックがグシュルバウアー/バンベルク響とのものです。確かに数あるアンドレのいやこの曲の録音の中でも未だにベストのものではないでしょうか。手元に1987年発行の新編「名曲名盤500(レコード芸術別冊)」がありますが、その中にアンドレのディスクは4枚挙げられています。
シュタットルマイアー/ミュンヘン室内管弦楽団(アルヒーフ、1956)
パイヤール/パイヤール室内管弦楽団(エラート、60年代)
ロペス・コボス/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(EMI、1977)
グシュルバウアー/バンベルク交響楽団(エラート、1971)

 

 この中でもこのグシュルバウアー盤はダントツの1位です。あまり、こういう名曲名盤的なものにはとらわれたくない(そういう観点で20年間ほったらかしにしてあったわけではありません)のですが、やはりいいものはいいといわざるをえないのがこの演奏でしょう。トランペットの輝かしさ,華麗さ、そして、トランペットの範疇を超えた柔らかい音色と完璧なまでのテクニックで吹きまくるのですから脱帽です。

 

 

 このCDのサポートはグシュルバウアーですがこれまた懐かしい名前です。でも、この録音がなされた当時はグシュルバウアーはエラートをしょっていましたからいい仕事をしています。個人的にはグシュルバウアーは弟子やバルタイプではないので、シンフォニーを指揮するよりはこうした協奏曲の伴奏をつけた方が章に合っている様な気がしていましたからこれは納得の演奏です。いい仕事しています。
 
 ハイドンはトランペット協奏曲をこれ一曲しか作曲していませんが,解説によると有鍵トランペットを考案したウィーン宮廷のトランペット奏者アントン・ヴィンディンガーのために作曲したということです。ちなみにここに収録されているL.モーツァルトのトランペット協奏曲は従来のバロック・トランペットのために作曲したようです。こちらは自然倍音が主体の音しか出せないので華やかさは欠けますがなかなかしっとりとした曲です。L.モーツァルトはいわずと知れたモーツァルトの父親ですが、少なからず作曲家として作品を残しています。「おもちゃの交響曲」が偽作とされた現在はこの曲が彼の代表曲となるのでしょうかね。

 

 
 最後のフンメルの曲はこのモーリス・アンドレの演奏で世に出た曲だそうです。詳しいいきさつは解説にありませんが大英博物館に眠っていたこの曲を、この録音を担当したペーター・ウィルモースが発見し送付化したものをモーリス・アンドレが演奏して世に送り出したということです。この曲も、先のハイドンの曲と同じようにヴィンディンガーの依頼で作曲されたようで、ハイドンの曲と同じように華やかなトランペットの技巧を披露する曲になっています。1803年に作曲され、別の資料によるとこの曲が縁でフンメルがハイドンの後釜としてエステルハージィ宮廷楽団の楽長に就任したそうです。

 第1楽章はファンファーレのような主題がトランペットという楽器を際立たせています。第2楽章などはモーツァルトのピアノ協奏曲第21番の第2楽章のようなたたずまいがありメロディアスでなかなか佳曲に仕上がっています。この楽章だけ引っ張りだしてポツプスにアレンジしてもヒットするんではないでしょうかね。ポール・モーリアが生きていたらやっていた様な気がします。曲は切れ目無く第3楽章に続く形をとっており、ユーモラスな主題が第2楽章と見事な対比になっています。この曲を聴くと全盛時はベートーヴェンと人気を二分していたのが納得出来ます。交響曲作品を残していないがために忘れられた存在ですが、今後見直されてもいい作曲家ですね。