二つのニューイヤーコンサート | geezenstacの森

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二つのニューイヤーコンサート

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ウィーンフィルのニューイヤーコンサート
  - 第2部 -                                                    
「喜歌劇“ジプシー男爵”序曲」               
「喜歌劇“ジプシー男爵”入場行進曲」            
「宝のワルツ 作品418」   ヨハン・シュトラウス作曲
「スペイン風ワルツ」      ヘルメスベルガー作曲
「ザンパのギャロップ」     ヨハン・シュトラウス父・作曲
「アレクサンドリーネ・ポルカ 作品198」         
「ポルカ“雷鳴と電光”作品324」          ヨハン・シュトラウス作曲
「ワルツ“天体の音楽”作品235」          ヨーゼフ・シュトラウス作曲
「ポルカ“ハンガリー万歳”作品332」        ヨハン・シュトラウス作曲
「交響曲 第45番“告別”から 第4楽章」   ハイドン作曲                            
(演奏)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)ダニエル・バレンボイム

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 三が日の最終日、名古屋地方はNHKで2つのニューイヤーコンサートが放送されました。一つは全国放送で「ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサート2009」、後一つは東海地方のみ「2009NHKナゴヤニューイヤーコンサート」が放送されました。    

 ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートについてはすでに元旦に放送されていましたから視聴はしていたのですがなにせ、長丁場の3時間でしたから正直言ってつまみ視という感じでした。総合での再放送は第2部のみの放送でしたが、第1部は前菜みたいなもんですから聴き所はこの第2部なんでしょう。それにしても、このニューイヤーコンサートも世界の政治の動きとは無関係で入られないものです。年末からの巣いらえるのガザ地区への爆撃でいやがうえでもパレスチナ問題がクローズアップされてしまいました。そして、新年の挨拶ではバレンボイムもそのことに触れないではいられない内容になっていたのは必然の流れでしょう。彼は アルゼンチン出身のユダヤ人ピアニスト・指揮者で、現在の国籍はイスラエルです。彼はイスラエルによるヨルダン川西岸地区やガザ地区の占領に批判の声を上げ続けています。(アラブ諸国とパレスチナの主張する、西岸とガザでの主権を放棄し「パレスチナ国家」を樹立するという主張に沿う発言をしているのです。)こう見てくるとイスラエルの行動は、タイミング的にバレンボイムへの嫌がらせのようにも見て取れます。

 いゃあ、それにしてもラテン気質に溢れる今年のバレンボイムはサービス精神たっぷりで楽しいコンサートでした。



 伝統を守り、曲目もウィーンに関するものというこだわりのあるウィーンフィルのニューイヤーコンサート。本家本元でいささかマンネリも感じるものもありますがでも毎年新しい演出があり、楽しめる内容になっています。今年のハイライトはやはり異色の選曲ともいえるハイドンの告別交響曲でしょうね。曲が曲ですから予想は出来ましたが、楽団員が1人づつ居なくなる演出は、まるでコントを見ているようなバレンボイムのアクションで聴衆の笑いを誘っていました。昨年の演出から同時進行で演じられているバレエダンサーのコンサート会場への登場は、今年は恒例の最終曲「美しき青きドナウ」で、可愛い男女6人の子供バレーダンサーが客席通路で踊っていましたね。


 これまた恒例のアンコール曲、ラデッキー行進曲は、指揮者が聴衆の手拍子の指揮をするなどはもう当たり前の光景ですが楽しいものですところで、会場に若林正人氏らしき人物がいるのを発見しました。正面のけっこう良い席に座っていて何回か中継にも映り込んでいましたから気がついた人も多かったのではないでしょうか。今年は、このバレンボイムのニューイヤーコンサートはデッカから発売されるようです。バレンボイムってグラモフォンかワーナーからの発売だとばかり思っていましたからこれは意外です。多分デッカへは初登場じゃないのでしょうか。

放送日 :2009年 1月 3日(土)
放送時間 :午後10:30~翌日午前0:20(110分)
「トリッチ・トラッチ・ポルカ」  (J.シュトラウスⅡ)
「ホルン協奏曲第7番 変ホ長調」 (プント) 
「チゴイネルワイゼン」 (サラサーテ )
「トッカータとフーガ BWV565」 (J.S.バッハ)
「ピアノ協奏曲から第1楽章」 (ラヴェル)
ポルカ「雷鳴と電光」(J.シュトラウスⅡ)
舞踏への勧誘 作品65(ウェーバー/ベルリオーズ編曲)
ワルツ「美しき青きドナウ」(J.シュトラウスⅡ)
ワルツ「金と銀」(レハール)
「青く美しきドナウ」 (J.シュトラウスⅡ)
ラ・ヴァルス(ラヴェル)
「ラデツキー行進曲」 ヨハン・シュトラウスⅠ世

【管弦楽】名古屋フィルハーモニー交響楽団
【指揮】松尾葉子
【バイオリン】大谷康子
【ホルン】オンドジェイ・ヴラベッツ
【オルガン】ジャレッド・モーガン・バイヤーズ
【ピアノ】北村朋幹

~2009年1月3日、愛知県芸術劇場コンサートホールで録画~

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 さて、3日の夜には名フィルのニューイャー・コンサートが放送されました。こちらは世界情勢とは無関係な平和なニューイヤー・コンサートで当日の午後4時から開催されたコンサートを当日の夜編集しての放送でした。指揮は恒例の名古屋出身の松尾葉子氏、女性指揮者としては草分けです。この名フィルとのニューイヤーでは毎年指揮を努めています。

 演奏曲目は、ウィーンフィルとはひと味違ったソリストを交えてのなかなか多彩な内容です。ヴァイオリンの大谷康子さんは東京交響楽団のソロ・コンサートマスターを勤めている人で、このコンサートではサラサーテのツィゴイネルワイゼンモンティのチャールダッシュを披露していました。モンティのチャールダッシュはテレビ東京系で年末に放送されていた「東急ジルヴェスターコンサート」でも古澤巌が同じ曲を演奏していたのでどうしても比較をしてしまいました。衣装からしてスタイリッシュな古澤でどちらかというと崩したスタイルでしたが、大谷さんはじっくりと曲を聴かせるタイプで華やかさの中にも正統なスタイルの演奏でした。

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イメージ 5 珍しいのはブントのホルン協奏曲で初めて耳にする曲でした。モーツァルトと同時代に活躍したチェコの作曲、ホルン奏者ということです。演奏はそのチェコフィルのホルンの首席奏者オンドジェイ・ヴラベッツのホルン独奏でした。彼は、なんと17歳でチェコフィルに入団し、20歳で首席奏者へと上り詰めたという、まさにチェコが誇る天才音楽家の一人でしょう。コンサートではこの分とのホルン協奏曲7番から第2楽章と第3楽章が演奏されました。浪々と歌い上げるアンダンテは優雅なもので、続く第3楽章は魅力的なモーツァルトに近しい主題でなかなかの佳曲です。こういうサクソンが第7番ということは他の作品も期待できるというものです。しかし、インターネットで検索しても彼の作品は引っかかりませんからまだ世に出ていない作曲家といえるのかもしれません。

イメージ 6 このコンサートの特徴はオルガンを使った曲が含まれることです。このホールには大型のコンサートオルガンが設置されていますから、その響きをオーケストラ演奏とともに聴けることは至福の喜びです。このホールには何回も出かけていますが、オルガンの演奏は一度しか聴いたことがありません。それも、やはりオーケストラとの競演のサンサーンスの交響曲第3番です。ただ、その演奏に先立ちオルガンの調整の意味でこのバッハの「トッカータとフーガBWV.565」が演奏されたのです。演奏者の名前は忘れてしまいましたが、最初は触りの部分だけをひくつもりだったのでしよう。それが興に乗ってきてとうとう最後まで演奏してくれたのです。お客さんは大拍手でした。こちらも、プログラムには無いバッハが聴けたことで大感激でした。そのとき聴いたオルガンの腹の底まで響く壮大な響きは今でも忘れられません。

イメージ 7 そのバッハはジャレッド・モーガン・バイヤーズのオルガンです。この人「ジャパン・クラシカル・コンサーツ」の主催する作曲家・編曲家部門で第1を取っています。なかなか壮大な演奏をする人で遅めのテンポでじっくりとバッハを聴かせてくれました。まだ若い人なので今後が期待出来ます。若いといえばピアニストの北村朋幹です。まだ地元の明和高校2年生の学生なのです。彼の弾くラヴェルには華がありました。演奏されたのは第1楽章だけでしたが繊細さときらびやかさがオーケストラと一体となったその響きには魅き込まれました。本人もコンクールの時とは違ってリラックスして演奏を楽しんでいましたね。


 後半はニューイヤーらしくワルツ特集です。
ポルカ「雷鳴と電光」(J.シュトラウスⅡ)
舞踏への勧誘 作品65(ウェーバー/ベルリオーズ編曲)
ワルツ「美しき青きドナウ」(J.シュトラウスⅡ)
ワルツ「金と銀」(レハール)
ラ・ヴァルス(ラヴェル)
これらの曲はウィーンフィルの演奏に比べたらちょっと分が悪いですが中々考えられた選曲です。第1部も最後がラヴェルだったわけですがこの第2部もラヴェルです。このラ・ヴァルス、ワルツそのもののタイトルですが中身はジャズっぽいフレーズがところどころに現れ、それでいてラヴェル風の「この音間違ってない?」みたいなハズシも満載の曲ですね。現実と空想の世界を揺れ動くようなフレーズの揺れ動きが楽しめますし、何か今の世相を反映している曲のようでの締めくくりで思わずにんまりです。