SONY BMGバロックマスターワークス その2 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

SONY BMGバロックマスターワークスVol.60
バロック名曲集
 
作曲者/曲目/演奏者
1.L.R.デ・バヤリス:『第1旋法のハカラス』 2:53
 アンドルー・ローレンス=キング(Hp) ザ・ハープ・コンソート
 録音:1994年 ファルコッホ (DHM: DDD)
2.作者不詳: 『Diferencias sobre la gayta』 3:42
 エドゥアルト・ロペス・バンゾ(指揮) アル・アイレ・エスパノール
 録音:1994年 アムステルダム (DHM: DDD)
3.カヴァッリ: 歌劇:「ディドーネ」より「エネーア」 2:52
 トーマス・ヘンゲルブロック(指揮) ピタゴラス・アンサンブル
 録音:1997年 シュヴェツィンガー (DHM: DDD)
4.パッヘルベル:カノンとジーグ ニ長調 6:30
 レイモンド・レッパード(指揮) イギリス室内管弦楽団
 録音:1980年 ロンドン (SONY: ADD)
5.トレルリ:トランペット協奏曲 ニ長調より「アレグロ」 4:19
 クロード・リッパス(Tp)
 ルドルフ・アッシュ(指揮) グラルナー・ムジークコレギウム
 録音:1995年 チューリヒ (SONY: DDD)
6.パーセル: 『アブデラザール』より「ロンドー」 1:19
 レイモンド・レッパード(指揮) イギリス室内管弦楽団
 録音:1980年 ロンドン (SONY: ADD)
7.マルチェッロ:オーボエ協奏曲 ニ短調より「アダージョ」 3:41
 ニール・ブラック(Ob)
 レイモンド・レッパード(指揮) イギリス室内管弦楽団
 録音:1980年 ロンドン (SONY: ADD)
8.ヴィヴァルディ:グローリア ニ長調RV.589より第1曲 2:26
 ジャン=クロード・マルゴワール(指揮) ラファエル・パスケ声楽アンサンブル
 録音:1976年 パリ (SONY: ADD)
9.カルダーラ: 『たとえつれなくても』 2:55
 ラモン・ヴァルガス(T)
 録音:2002年 イギリス (RCA: DDD)
10.アルビノーニ:トランペット協奏曲 変ロ長調 Op.7-3より第1楽章 2:58
 アンドレ・ベルナール(Tp)
 ジョージ・マルコム(指揮) イギリス室内管弦楽団
 録音:1979年 ロンドン (SONY: ADD)
11.アルビノーニ:弦楽のためのアダージョ ト短調(レモ・ジャゾット編) 8:25
 ジャン=クロード・マルゴワール(指揮)
 ラ・グラン・エキュリー・エ・ラ・シャンブル・デュ・ロワ
 録音:1976年 パリ (SONY: ADD)
12.クラーク:デンマーク王子の行進(トランペット・ヴォランタリー) 2:07
 レイモンド・レッパード(指揮) イギリス室内管弦楽団
 録音:1980年頃 (SONY: ADD)
13.J.S.バッハ:『メヌエット BWV.Anh.114』 1:36
14.J.S.バッハ:ミュゼット BWV.Anh.126 1:17
15.J.S.バッハ:あなたがそばにいるならば BWV.508 3:40
16.J.S.バッハ:行進曲 二長調 BWV.Anh.122 1:02
 ユージン・オーマンディ(指揮) フィラデルフィア管弦楽団
 録音:1968年 フィラデルフィア (SONY: ADD)
17.ヘンデル:あなたがどこを歩くとも(「セメレ」より) 4:13
18.ヘンデル:Martial Symphony(「ベルシャザル」より) 0:43
19.ヘンデル:シバの女王の入場(「ソロモン」より 3:36
20.ヘンデル:葬送行進曲(「サウル」より) 3:31
21.ヘンデル:グラン・アントレ(「アルチェステ」より) 1:51
 チャールズ・グローヴズ(指揮) ロイヤル・フィル
 録音:1969年 ワーウィッシャー (SONY: ADD)
22.ヘンデル:アンダンテ・ラルゲット(「ベレニーチェ」より) 3:23
 ピエール・ブレーズ(指揮)
 ニューヨーク・フィルハーモニック・チェンバー・オーケストラ
 録音:1978年 ロンドン (SONY: ADD)
23.グルック: 精霊の踊り(「オルフェオとエウルディーチェ」より) 3:29
 ユージン・オーマンディ(指揮) フィラデルフィア管弦楽団
 録音:1968年 フィラデルフィア (SONY: ADD)


 

SONY BMG 88697303862-60

 

イメージ 1

 

 「バロックマスターワークス」60枚の中の最後の一枚です。タイトルは「バロックマスターピース」でどちらもバロック傑作選と訳すのでしょうが、HMVなどでは「バロック名曲集」となっています。しかし、これは通常のバロック名曲集とはちょいと違い中々凝った選曲です。この名曲集には器楽曲だけではなく声楽曲も含まれています。バロック音楽の歴史は本来的には宗教音楽であり、教会音楽であったことを考えると当然といえば当然でしょう。

 

 第1曲目から初めて耳にする曲です。アンドルー・ローレンス=キングが弾く鉄弦を張った小さなハープのような楽器はプサルテリウムといい、9世紀ごろから(ギリシャ時代にはすでに用いられていたという説もあります)使われ、12~15世紀にヨーロッパ各地に普及したということです。しかし15世紀以降に演奏されなくなったのは、チェンバロにその座を奪われたからでしょう。この鄙びた音色は哀愁を誘います。

 

 2曲目のアル・アイレ・エスパノールは、スペインの古楽界の中で注目のアンサンブルはハルモニア・ムンディ・イベリカの看板アーティストですが、このレーベルも関係あるのかは不明です。スペインの古楽はルネ・クレマンシックでなじんできましたが、これもダイナミックなリズムと色彩の明暗のコントラストがはっきりしていて聴いていて気持ちがいい演奏です。

 

 4曲目は名曲ですが、このレッパードの演奏は一癖あります。もともとレッパードはイギリス室内管弦楽団を振ったバロック物で名声を得て1970年にもそのコンビで来日もしています。ここでも、独自解釈のパッヒェルベルを聴かせてくれます。多分マリナーの自由奔走なヴィヴァルディの「四季」に触発されての演奏だと思うのですが、この自由な装飾音たっぷりの演奏は一聴に値します。

 

 6曲目のパーセルの作品は後にブリテンが「青少年のための管弦楽入門」のテーマに使った主題が演奏されます。原曲は現代のピッチですがバロック様式にのっとり、やや速めのテンポできびきびと演奏されています。
 
7曲目のマルチェッロのアダージョは1970年のイタリア映画「ベニスの愛」のテーマ音楽としても有名な曲ですからご存知の人も多いのではないでしょうか。小生もこの曲は映画で知って、オリジナルにたどり着いたものです。

 

 12曲目のクラークの「トランペット・ヴォランタリー」の原曲はチェンバロのための作品ですが、ヘンリーウッドの編曲によるトランペットバージョンの方が有名になってしまったものです。まさに、この演奏の方が曲のイメージにぴったりという感じです。ここでも、レッパードの格調高い演奏を聴くことができます。

 

イメージ 2
 
 さて、このアルバムのお薦めは13ー16曲に収録されているオーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団の演奏によるものです。LP時代にはCBSから2枚組のアルバムで発売されていたバッハ名曲集からの収録でストコフスキー以来伝統的なフィラブルフィア管弦楽団による華麗なバッハのオーケストラ編曲による演奏が楽しめます。特に13曲目は後に「ラヴァーズ・コンチェルト」ととして知られる「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帖」に収められるメヌエットです。弦とオーボエによるしっとりとしたアレンジは古き良きフィラデルフィアサウンドを満喫出来ます。こういうゴージャスな演奏でも、バッハはバッハです。本来の趣旨からすれば変化球過ぎる演奏なのでしょうが、こういうのもありで小生は満足です。左の写真は米CBSから発売された2枚組のアルバムです。国内盤では発売されなかったと記憶しています。

 

 

 また、珍しいところではブーレーズの指揮によるヘンデルが収められています。その昔、コンサートホールからハーグフィルを振ってヘンデルの水上の音楽を録音した物が出ていましたが、CBSにこんな録音が在るとは知りませんでした。1978年といえばブーレーズがニューヨークフィルの常任だった最後の年の録音です。現代音楽だけでなく、バロックも出来るんだぞという置き土産的な録音なんでしょうね。

 

 さて、この音源は演奏者の顔ぶれが百花繚乱です。オリジナル古楽器アンサンブルから近代オーケストラによる演奏まで網羅らされていて、このシリーズを俯瞰するには相応しいラストアルバムになっています。