カール・デイヴィスのシンフォニック・ミュージカル | geezenstacの森

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カール・デイヴィスのシンフォニック・ミュージカル

曲目
1.ガーシュイン/交響的絵画「ポキーとベス 」26:23
2.リチャード・ロジャース/管弦楽のためのセレクション「オクラホマ」 11:40
バーンスタイン/交響的舞曲「ウェストサイド物語」Arr Ramin And Kostall:
3.Prologue 4:13
4. Somewhere 3:21
5. Scherzo 2:00
6. Mambo 2:13
7. Cha-Cha 1:46
8.Cool Fugue 3:45
9.Rumble 1:56
10.Finale 2:53
11.リチャード・ロジャース/管弦楽のためのセレクション「王様と私」 12:01

指揮/カール・デイヴィス
演奏/ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

録音/1991/10/21-22 フィルハーモニー・ホール 、リヴァプール
P:ジョン・H・ウェスト
E:マイク・クレメンツ

CLASSIC FOR PLESURE CD CFP4601

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 CLASSIC FOR PLESURE、クラシック・フォー・プレジャーというレーベルは英EMIの廉価レーベルです。本家EMIのフルプライス品から移行してきたアイテムもありますが、ハンドレーやマッケラスの録音など、オリジナル録音も少なくありません。曲も演奏者も英国趣味に溢れ、演奏も一級品揃いなのですがほとんど日本では紹介されていないレーベルではないでしょうか。しかし、小生はLP時代に英国から個人輸入していた関係から大変親しみのあるレーベルでした。名前の通り、クラシックが主体なのですがこういうミュージカル物まで含めたレパートリーを包含していました。EMIの翼下にはMUSIC FOR PLESUREというポップスを扱うレーベルもありその区分は定かではありませんが、イージーリスニングでもフルオーケストラ物はクラシックの扱いになるようです。

 カール・デイヴィスはイギリス出身と思いきや、ニューヨークはブルックリンの生まれです(b.1933)。元々映画音楽畑中心で活躍してきた指揮者&作曲家で、イギリスの女優、ジーン・ボートと結婚し、現在はイギリスに居を構えてこのロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者の常連です。ポール・マッカートニー作曲の「リヴァプール・オラトリオ」でもこのカール・ディヴィスが指揮を務めていましたからご存知の方も多いのではないでしょうか。

 第1曲目のガーシュイン/交響的絵画「ポキーとベス」はしっかりとしたクラシック作品としてかなりの録音があります。本来はガーシュインの作品ですが実際はロバート・ラッセル・ベネットが編曲しています。ガーシュイン自体の、「ポギーとベス」を基にした交響組曲「キャット・フィッシュ・ロウ<なまず横町組曲>」という5曲からなる作品もありますが、こちらは出来が良くないらしくめったに演奏されません。この曲元々は当時ピッツバーグ交響楽団の常任指揮者だったフリッツ・ライナーの依頼を受け、『ポーギーとベス』を素材にして、この交響的組曲を作ったのです。1942年の定期演奏会での初演は大成功だったと伝えられています。このアルバムの中でもピカイチの出来です。有名な「サマータイム」もしっとりとした弦楽合奏の旋律で取込まれています。元々、ガーシュインの歌の部分を中心に組み立てられていますから聴き所は満載です。民族楽器のバンジョーの響きもしっかりと聴くことができます。カール・デイヴィスはこういう曲を演奏させては第一人者ですから楽しくないわけはありません。リヴァプール・フィルも好演です。EMI系の録音にしては録音も優秀で、エンジニアは外部の人間を採用していますからそういう点では成功しています。CFPはこういう掘り出し物があるから好きです。

 つづく「オクラホマ」はリチャード・ロジャースの作品です。元々はミュージカルでしたが、1956年にフレッド・ジンレマンによって映画化されました。その時の編曲担当がロバート・ラッセル・ベネットで、この仕事でアカデミー賞をもらっています。ということで、この音楽が悪ろうはずがありません。ここでも、ロジャーズの原曲の美しいメロディを存分に生かした素晴らしいシンフォニックな編曲で楽しませてくれます。ミュージカル好きにはたまりません。

 「ウェストサイド物語」だけはどうしたことかバーンスタインのオリジナルの編曲ではなく、RAMIN & KOSTALの編曲物が収録されています。しかし、ちゃんと組曲としての8曲は収録されています。編成が小さくなっているとも思われませんし、一応トラックは細かく打たれていますが曲としてはちゃんとオリジナル通り続けて演奏されています。「マンボ」なんかもきっちりかけ声も入っています。演奏もパワフルなもので、原曲のスビーディさを損なうものではありません。
 
 最後は「王様と私」です。ここでも演奏されているのはロバート・ラッセル・ベネットの編曲になるものです。これも交響的絵画という何しても恥ずかしくないものですが、原曲がクラシックではないということでセレクションということになっているのでしょうか。こちらは映画版ではアルフレッド・ニューマンが音楽監督として采配を振るっていました。ベネットの編曲はシンフォニックな雰囲気とミュージカルとしての軽妙な面とを併せ持つ親し安い旋律を交互に挟み込んで飽きさせないものです。いい仕事しています。

 カール・デイヴィスはこの手の映画音楽物を数々手がけています。アメリカ生まれですがイギリスが活動の寄与点ということで日本では今イチ知られていませんがいい仕事しています。最近ではナクソスにもこのリヴァプール・フィルと録音をしていますから目が離せません。

 CFPは廃盤になることも多いレーベルですでにこのCDは存在しません。しかし、この録音を含むCD2枚組が「グレート・アメリカン・ミュージカル」(CFP5856272)というタイトルでカタログに残っているようです。