アンドリュー・リットンの「ガーシュイン・ゴールド」 |
曲目/ガーシュイン
1.Rhapsody In Blue 17:08
2.Songbook - Swanee 0:43
3.Songbook - Nobody But You 1:06
4.Songbook - Do It Again 1:22
5.Songbook - Clap Yo' Hands 0:46
6. Strike Up The Band 2:09
7. Sweet & Low-Down 2:47
8. Somebody Loves Me 2:36
9. Bidin' My Time 2:25
10. That Certain Feeling 3:35
11. Lady Be Good 3:31
12. The Man I Love 5:19
13. I'll Build A Stairway To Paradise 1:49
14. Embracable You 3:51
15. Fascinating Rhythm 2:02
16. Who Cares? 2:26
17. My One & Only 2:03
18. Liza (All The Clouds'Ll Roll Away) 1:49
19. I Got Rhythm 3:24
指揮・ピアノ/アンドリュー・リットン
演奏/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン/バリー・グリフィス
クラリネット/プルーデンス・ウィッタッカー
トランペット/レイモンド・シモンズ
トロンボーン/デレック・ジェイムズ
ドラムス/ハロルド・フィッシャー
録音/1989/03/24,29,30 ヘンリー・ウッド・ホール 、ロンドン
P:アンドリュー・キーナー
E:アーン・アクセルバーグ
P:アンドリュー・キーナー
E:アーン・アクセルバーグ
ASV RPO 8008

今日は7月4日ということでアメリカの建国記念日、そんなことでガーシュインを取り上げます。このCD、発売元はASV(Academy Sound and Vision Limited)ですが、レーベルはRPO recordsとなっています。イギリスの会社でしたが、記憶が正しければ倒産しているはずです。その後はIMP Classics 30367 010062 、 Carleton Classics/MCA MCAD 6216と引き継がれて発売されました。ですが、いずれも倒産しているはずですから今は原盤はどこにあるのか不明です。当時の日本での発売窓口はクラリオンで1987年12月に発売されています。でも、知られていないでしょうねぇ。
アンドリュー・リットンはラプソディ・イン・ブルーを2回録音しています。この録音の後に1997年に当時常任をしていたダラス交響楽団とともにこちらも引き振りを披露しています(Delos DE 3216)。物の本によると、ガーシュインが作曲した曲をポール・ホワイトマン楽団の専属アレンジャーだったファーディ・グローフェはこの曲を4回編曲しています。
1. ピアノ独奏とポール・ホワイトマン楽団のための版(1924)。「ピアノとジャズ・バンドのために」という副題がつけられています。手稿はアメリカ国会図書館に所蔵されています。この手稿には、ピアノのソロパートはジャズの即興性を生かしてすべては書き込まれていないようです。 この編成は以下の通りです。
クラリネット(B管。バス・クラリネット、オーボエ、ソプラニーノ・サックス、アルト・サックス持替)、アルト・サックス(ソプラノ・サックス、バリトン・サックス持替)、テナー・サックス(ソプラノ・サックス持替)、2ホルン、2トランペット(B管)、2トロンボーン、テューバ(コントラバス持替)、バンジョー、ピアノ、チェレスタ、ドラムス(&ティンパニ、パーカッション)、8ヴァイオリン、ピアノ独奏
クラリネット(B管。バス・クラリネット、オーボエ、ソプラニーノ・サックス、アルト・サックス持替)、アルト・サックス(ソプラノ・サックス、バリトン・サックス持替)、テナー・サックス(ソプラノ・サックス持替)、2ホルン、2トランペット(B管)、2トロンボーン、テューバ(コントラバス持替)、バンジョー、ピアノ、チェレスタ、ドラムス(&ティンパニ、パーカッション)、8ヴァイオリン、ピアノ独奏
2.1926年2月23日と日付がついた版。これは劇場オーケストラとラジオ・オーケストラ用の「ストック・アレンジ」といわれるもので(おそらく曲の抜粋み たいなものだと思うのだが)、そのアレンジ集には当曲を含め、計45曲が収められているようです。そのため、グローフェは当時のブロードウェイで一般的だったオーケストラ編成のために再オーケストレーションを行った。編成は以下の通りです。
フルート、オーボエ、2クラリネット(B管)、ファゴット、3サックス(第1アルト、第2テナー、第3アルト)、2ホルン、2トランペット(B管)、トロンボーン、ドラムス(&パーカッション)、ピアノ(指揮兼任)、弦5部、バンジョー
3. コンサート・バンドのためのアレンジで、ピアノ独奏なしでも演奏可能となっています。1938年版で、グローフェによる、ピアノ・ソロ・パートもオーケストレーションしてしまった版。つまり、ピアノ・ソロがなくても「ラプソディー・イン・ブルー」は演奏可能になっています。
フルート、オーボエ、2クラリネット(B管)、ファゴット、3サックス(第1アルト、第2テナー、第3アルト)、2ホルン、2トランペット(B管)、トロンボーン、ドラムス(&パーカッション)、ピアノ(指揮兼任)、弦5部、バンジョー
4. おなじみのオーケストラ版です。1942年の編曲になります。編成は大きくなっています。
2フルート、2オーボエ、2クラリネット(B管)、バス・クラリネット、2ファゴット、3ホルン、3トランペット(B管)、3トロンボーン、テューバ、ティンパニ、ピアノ、3サックス(第1アルト、第2テナー、第3アルト)、バンジョー、弦5部
2フルート、2オーボエ、2クラリネット(B管)、バス・クラリネット、2ファゴット、3ホルン、3トランペット(B管)、3トロンボーン、テューバ、ティンパニ、ピアノ、3サックス(第1アルト、第2テナー、第3アルト)、バンジョー、弦5部
これとは別にピアノ・ソロのための版と2台のピアノのための版があります。これだけはピアニストでもあったガーシュインが最終的に完成させた版です。ガーシュインはこの版に基づいて1927年にピアノ・ロールを録音しています。2台のピアノのためのバージョンは1924年に先に出版されています。この時、ガーシュインはかなりのカットを施しています。以前に紹介しているプレヴィンの演奏はいずれもこのカットを踏襲しています。
①練習番号4の3~6小節目のオーケストラ伴奏をカット
②練習番号21の8・9小節目の間にあった10小節のピアノ・ソロをカット
③練習番号32と33の間のあちこちから26小節分のピアノ・ソロをカット
④練習番号33の32・33小節目の間にあった8小節のピアノ・ソロをカット
②練習番号21の8・9小節目の間にあった10小節のピアノ・ソロをカット
③練習番号32と33の間のあちこちから26小節分のピアノ・ソロをカット
④練習番号33の32・33小節目の間にあった8小節のピアノ・ソロをカット
さて、、ここで演奏されているのはもちろん、オリジナル・ジャズ・バンド・バージョンということで1にあたります。このジャズ・バンド・バージョンで一番知られているのはマイケル・ティルソン・トーマスの演奏でしょう。この録音では先のガーシュイン本人のピアノロールでの演奏が採用されていました。いまとなっては、このジャズ・バンド・バージョンはかなりCDになっていますが当時はビックリしたものです。さて、リットンのこの演奏も一応、ジャケットにはオリジナル・ジャズ・バンド・バージョンと謳っていますが、どう聴いてもバンジョーの響きが聴き取れないのです。不思議ですねー。
ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」は指揮者の弾き振りが結構あります。古くはバーンスタイン、そしてプレヴィン、モートン・グールド、ティルソン・トーマスも後には弾き振りで再録音しています。それにしても、20年以上前にリットンがこんな録音をしているとは知りませんでした。というか、このCDを所有していてもまともに聴いていなかったことが露呈されてしまいます。リットンと言えば昨年は年末にNHK交響楽団に客演してベートーヴェンの第9を振ってかなり話題に上りました。
さて、この演奏はリットンのピアノを楽しむためのものと割り切るとそれなりの味わいがあります。でも、オーケストラのセンスがイマイチでとても、ホワイトマン楽団のジャズの雰囲気を楽しむには程遠いものなのが残念です。冒頭のクラリネットのグリッサンドも中途半端でせっかくのジャズ・バンドとしての演奏としてのコンセプトが生きていないような気がします。実は、このCDの楽しさは実は2曲目以降です。ソング・ブックと題されているようにガーシュインのポピュラーな名曲が繰り広げられています。曲リストには詳細が出ていませんが、2曲目から5曲目までは、アンドリュー・リットンのピアノソロが楽しめるSONG BOOKからの曲です。これがなかなかいけてます。ジャケットの裏表紙にはピアノを弾くリットンの写真も載っているくらいですから、本人も得意なのでしょうね。
そして、6曲目からは同じガーシュインのSONG BOOKからピアノも弾けたバレエの振り付け師ジョージ・バランシンがバレエ音楽として編曲したもので世界初録音となるものです。この中の「Who Cares?」だけはハーシィ・ケイの編曲になるようです。6曲目の「ストライク・アット・ザ・バンド」は行進曲としても有名な曲です。ピアノを絡めながらここからはフルオーケストラで演奏されています。これがめちゃ楽しいアレンジで、昔聴いたRCAに録音していたヒル・ボウエン楽団の演奏を思い出してしまいました。7曲目からは、まるでルロイ・アンダーソンの曲をややジャズ風に崩した趣の演奏が続き洒落ています。10曲目は1951年のミュージカル映画「巴里のアメリカ人」の挿入歌で、弟のIra Gershwin 作詞、George Gershwin作曲の曲です。映画ではジーン・ケリーが歌っていましたね。
最後の「 I Got Rhythm」は1930に初演されたミュージカル"Girl Crazy"の一節ですがとても乗りのいい曲です。いゃあ、最初は金管群が主題のメロディを高々と演奏するのですが、それが終わるとリットンのピアノが登場してきてきらびやかなタッチを披露します。フルオーケストラをバックに実に気持ち良さそうな演奏です。この18曲ものソングブックの最後を飾るには相応しい曲であり演奏です。そして、探せばあるもんですねー、ガーシュインの自作自演の演奏がありました。