THE WONDERFUL NEW DIMENSION | geezenstacの森

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THE WONDERFUL NEW DIMENSION
曲目
1.ガーシュイン/「ラプソディ・イン・ブルー」 13:52
指揮/アンドレ・プレヴィン
演奏/ピッツバーク交響楽団
録音/1984/05/18-19、ハインツ・ホール、ピッツバーク
2.ヴェルディ/歌劇「ナブッコ」から「行けわが思いよ、金色の翼に乗って」 4:07
指揮/シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ
演奏/ドレスデン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
録音/1983/12、ルカ教会、ドレスデン
3.モーツァルト/歌劇「魔笛」より「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」 2:59
ソプラノ/ルチアーナ・セルラ
指揮/コリン・デイヴィス
演奏/ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
録音/1984/01、ドレスデン
4.ボロディン/歌劇「イーゴリ公」より「ダッタン人の娘の踊り」 2:10
5.ダッタン人の踊り 11:34
指揮/エサ・ペッカ・サロネン
演奏/バイエルン放送交響楽団、合唱団
録音/1984/04、ミュンヘン
6.ベートーヴェン/チェロ・ソナタ第3番Op.69よりスケルツォ 5:39
チェロ/ムスティスラフ・ロストロポーヴイチ
ピアノ/スヴャストラフ・リヒテル
1961/07、イギリス
7.バッハ/「主よ人の望みの歓びよ」 3:41
オルガン/ジョン・ロングハースト
録音/1983/10、モルモン教会オルガン、ソルト・レーク
8.ヴィヴァルディ/合奏協奏曲「四季」より冬
指揮、ヴァイオリン/アイオナ・ブラウン
演奏/アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
録音/1979/06、ロンドン
9.ベートーヴェン/エリーゼのために 3:30
ピアノ/アルフレッド・ブレンデル
1984/03、ロンドン

 

PHILIPS 412 947-2

 

イメージ 1
       
 早い話がこれはCDのデモンストレーションディスクです。しかし、所有するこの手のディスクの中では一番まともなものです。このデイスクはデジタルだけでなくアナログの録音も含まれています。某メーカーのデモCDはデジタルにこだわったばかりになんじゃこりゃという音源も含まれていて反対にがっかりしたものです。その点、フィリップスはCD化を押し進めたメーカーとしての責任を全うしています。確かにデジタルも素晴らしいけれど、アナログもデジタル化することによって素晴らしいサウンドで手軽に聴けますよということをちゃんとアピールしています。トラックの中では6と8がアナログソースです。6なんかは散々レコードで聴いたものですが、プチプチノイズにまみれた再生音から解放された素晴らしい音質に感動したものです。8なんか、デジタル録音といわれても疑いもしないほど素晴らしいアナログ録音です。さて、解説書はオランダで印刷されていますが、肝心のCDは何とメイド・イン・ジャパンです。当時は日本が最先端の技術を持っていたということなんでしょうね。しかし、このCDは欧米向けに発売されたものらしく、日本語解説はありません。

 

 1曲目はプレヴィンの「ラプソディ・イン・ブルー」です。ピアノパートも演奏しているこの録音は彼が当時常任をしていたピッツバーグ交響楽団です。以前のロンドン交響楽団録音よりもはるかに洗練された演奏で、さすがジャズの発祥の国のオーケストラという出来です。何といっても乗りがいいです。クラシック界にデビューする以前ジャズピアニストとして活躍していただけあって、ジャズのフィーリングがまさに最高!はお手のものです。冒頭のクラリネットソロのグリッサンドからして雰囲気が違います。全体的に早めのテンポでのだめの雰囲気に近いところもいいですね。ただし、以前もそうでしたが慣習的なカットをしている点は変わりありません。

 

 

 フィリップスはオペラにも力を入れていたということでしょうか、続く2曲はオペラからのナンバーです。この演奏の存在はこのCDで初めて知りました。ヴァルヴィーソなんて指揮者の録音がフィリップスにあったのかと思うほどマイナーな存在です。調べると70年代から断続的にフィリップスに録音しています。でも、現在はすべて廃盤です。この「ナブッコ」の「行けわが思いよ、金色の翼に乗って」は好きな曲なのでいろいろ持っていますが、この演奏は肌触りが柔らかくタイトルの雰囲気と一番合っている演奏で好きです。デイヴィスのモーツァルト「魔笛」はこの演奏が気に入ったので別にハイライト盤を買ってしまいました。夜の女王役の「ルチアーナ・セルラ」は、これがレコード・デビュー盤でした。清潔な歌いぶりで、この声に惚れたといっても過言ではないでしょう。

 

 

 サロネンの「イーゴリ公」の合唱曲はデビュー盤からのセレクトです。これも、この演奏が気に入って、デビュー盤を買ってしまいました。これはもうフィリップスの上手い策略にはまってしまったようなもんです。この演奏は生き生きとしたテンポとリズムでこれがデビュー録音とは思えないほど堂々とした演奏です。録音がいいので合唱も聴き映えがします。この演奏を聴いてアンセルメを卒業出来たのを思い出します。

 

 

 それまで、ヘートーヴェンのこの演奏のレコードは持っていなかったのですが、この極めつけの演奏を聴いてしまってからはこれも手に入れざるを得ませんでした。幸い国内では廉価盤で発売されましたので早速購入しました。ロストロポーヴィチとリヒテルのこの白熱した演奏は1961年の録音にも関わらず、実に生々しい音でスピーカーから聴くものに迫ってきます。まさに音の圧力が皮膚に突き刺さる感覚です。古い録音なんですが名盤なんでしょうなぁ。手持ちのレコ芸の1993年版「名曲名盤300」でもそれ以前の87、83年でもベストワンに選ばれています。

 

 モルモン教会の大聖堂のオルガンで聴くバッハは残響が多すぎてややもやっています。ソフトな雰囲気の演奏ですが、フィリップスらしくない録音です。とっくに廃盤になっているCDでこれだけやや期待はずれでした。それに反して、アカデミーの四季からの冬は鮮烈です。でも、これはアナログ録音なんですよね。アイオナ・ブラウンの2回目の四季のはずです。アーゴに録音したマリナーとの四季も鮮烈で衝撃的でしたが、この録音も音の粒だちはいささか衝撃的です。とくに第1楽章が攻撃的です。一転した冬のラールゴはこの楽団の特徴というべき通奏低音をオルガンで演奏していて、冬の日だまりでの和やかな雰囲気を感じさせます。この対比は見事です。

 

 最後はブレンデルの「エリーゼのために」、恥ずかしながらレコードでも、CDでもこの曲を持っていませんでしたし、今現在でもこのCDしか「エリーゼのために」は所有していません。そういう出会いがあったのもこのCDのおかげです。

 

 

 最初はサンプラーとして何気なく購入したものですが、聴くほどにいい演奏との巡り会いがあり、ここからレパートリーが広がった思い出の一枚です。どうせサンプラーを作るならこういうものを作ってほしいという見本みたいなものです。まあ、小生はその術中にはまった一人ですが・・こういう、いい作りのサンプラーは、イギリスの雑誌「クラシックCD」というものがありました。今では休刊してしまいましたが、レコ芸の総花的なおまけサンプラーCDとは違い、作り手のポリシーみたいなものを感じました。