仙台駅殺人事件 | geezenstacの森

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仙台駅殺人事件

著者/西村京太郎
出版/光文社 カッパノベルス

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 毎年12月1日正午に、仙台駅ホームに佇む和服姿の女。この謎の美女は、原宿で起きた殺人事件の容疑者だった。ところがその高級クラブ「綾」のママ・早坂みゆきは、1千万円もの大金を仙台駅でゆすられ続けていた。行方をくまらしたみゆきを追跡する十津川警部と亀井刑事は、仙台駅に網を張るが、何者かに発煙筒で妨害され、失敗。再度の張り込み中、駅構内で「綾」のホステス・久保カオルが絞殺された。1千万円の行方と殺人容疑者、恐喝犯を追う十津川の前に明かされる意外な真相は…。24時間眠らぬ、東北の玄関口・仙台駅を舞台にした絶賛“駅シリーズ”第7弾。----データベース−−−

 仙台駅の助役がこの毎年の出来事を注視しています。ところが、誰も女が男と会っているところを目撃していません。こういう設定ですから、男の面は最後の方まで割れません。そして、ここも腑に落ちないのですが今年は12月1日に現われていません。しかし、ストーリーを追っていくと殺人事件は発生していても12月1日の正午に仙台駅の一番ホームに立つ事は可能だったはずなんです。それが、出来なかったという設定自体に無理があります。容疑者の女はちゃんと予約してあった新幹線の切符を使っているのですから仙台に居た事は間違いないのです。

 こういう矛盾した設定ですからその後の展開も矛盾だらけです。1日に男と会えなかった女は7日に再会したいと新聞広告を出します。この広告を見て十津川警部たちと宮城県警は駅に捜査員を派遣して女の登場を待つのですが、発煙筒が焚かれて混乱し女は現われません。その後は11日に今度は14番線での待ち合わせをリクエスト曲にのせてラジオから流されます。こんなのは本来ならあり得ない手法です。まあ、事件はまたホームには現われず女子トイレで従業員だったホステスの久保カオルが殺されます。捜査員がいながらのこの失態です。ましてや、謎の女を見つける事も出来ないのです。

 西村京太郎氏はよほど秋保温泉が好きなのか、ここでも登場する温泉は秋保温泉です。謎の女は面が割れていますが、ここに潜んでいても宮城県警は彼女を発見出来ません。更には尾行していた刑事6人が私立探偵となっている久保カオルの父親にまかれてしまいます。合同捜査とはこんなレベルなんでしょうか。そして、登場する県警の刑事は最初は本庁に挑むような態度でいつも描かれていますが、その割には尻つぼみで今回のように失態の連続です。ここでも、ほとんど活躍していません。最後まで事件をリードして行くのは十津川警部と亀さんです。

 1千万の強請の実態は、徐々に明らかになっていきます。あり得ない事ではありませんが、強請った男の実態はマスコミ関係というだけで明らかにされていません。最初は謎の男として描かれていますが7日と11日の時点にホームに現われないのが不思議です。

 例によって、謎の女、早坂みゆきは最後に殺されてしまいます。もう少し殺人が起きないうちに逮捕出来ないのかという気がしてしまいます。最後の青葉城趾での金の受け渡しも仙台駅にこだわった割にはあっさりと場所を変更しています。連絡が取れないはずなのに今度はどうやって場所の連絡を取ったのでしょうか。その点は明らかにされていません。あげくの果ては金を奪われたとかで100万円に減額されています。

 うーん、キャッシュカードで金を下ろす事は可能なのにこの設定は何なんだと思われます。読んでいくと矛盾だらけでちょっとシラケてきます。真犯人は分かっていますが、父親が娘を殺すという設定は今までにない動機です。ただ、そもそも何でこの父親が絡んでくるのかということがはっきりしないしない事件です。駅シリーズは何か無理な設定が目立ちます。