ばったもんCDで登場した
小 澤 の 「惑星」
曲目/ホルスト
組曲「惑星」作品32
第1曲 : 火星 - 戦争の神 6:46
第2曲 : 金星 - 平和の神 7:53
第3曲 : 水星 - 翼をもった使いの神 4:06
第4曲 : 木星 - 快楽の神 8:01
第5曲 : 土星 - 老年の神 8:44
第6曲 : 天王星 - 魔法の神 5:40
第7曲 : 海王星 - 神秘の神 8:11
組曲「惑星」作品32
第1曲 : 火星 - 戦争の神 6:46
第2曲 : 金星 - 平和の神 7:53
第3曲 : 水星 - 翼をもった使いの神 4:06
第4曲 : 木星 - 快楽の神 8:01
第5曲 : 土星 - 老年の神 8:44
第6曲 : 天王星 - 魔法の神 5:40
第7曲 : 海王星 - 神秘の神 8:11
指揮/小沢征爾
演奏/ボストン交響楽団、ニュー・イングランド音楽院合唱団
録音 1979/12/3 シンフォニー・ホール、ボストン
演奏/ボストン交響楽団、ニュー・イングランド音楽院合唱団
録音 1979/12/3 シンフォニー・ホール、ボストン
同胞舎出版 DGG GCP-1016(432773-2)

最初聴いた時はなじめない演奏でした。普段聴き慣れている「惑星」とは何処か違うのです。冒頭の第1曲「火星」からしてそういう印象です。昔からこの曲は好きで、それこそ最初にベストセラーになったカラヤン/ウィーンフィルの演奏からストコフスキー、ボールト、メータ、ハイティンク、ショルティ等々話題になったものはコレクションしています。
そして、ボストン響の録音は1970年にスタインバーグが素晴らしい演奏を残していて、小生はこの演奏は好きです。火星の冒頭から弦のピチカートの響きが一種異様な緊張感を醸し出していて、まさに戦争の神を高らかに描写した推進力のある演奏です。上手く言い表せませんが他の指揮者たちはこの曲を標題音楽として演奏しているのに対して、小沢征爾は純粋に音楽作品としてアプローチしているのかもしれません。
スタインバーグの演奏と比較すると、スペクタクルな火星の変拍子のリズムから聴き取れるオーケストラの響きは打楽器からして違います。小太鼓のリズムが一般的に前面に出て、戦いの進軍を表すのに対して、小澤はバス・ドラムの響きを前面に出して重心の低いサウンドに置き換えています。小澤の作り出す音のバレットは一つ一つの楽器の響きを明瞭に聴き取ることができますが、爆演型の演奏ではないので雄々しく爆発することがありません。この曲に使われている「ユーフォニアム」をここまで前面に出して演奏している例も少ないです。ですが、聴いていても盛り上がりに欠けるのは確かです。演奏もテンポが早くあっという間に駆け抜けていくという印象がします。ここら辺が、純粋音楽的な解釈というものなのでしょうか。録音はアナログ末期の1979年12月、ボストンのシンフォニーホールということで悪いはずはありません。しかし、フィリップスの録音にしてはおとなしいサウンドという印象を受けます。フィリップスには同惑星の録音がステレオ時代になってからハイティンク(1970)マリナー(1977)、小澤(1979)、ウィリアムズ(1986)、ディヴィス(1988)とありますが、この中では一番おとなしい録音です。
どちらかというと「火星」はやや失望感のある演奏ですが、それ以外の曲はなかなかの力演です。組曲の中ではよく知られている「木星」は弦の美しさが光りますし、終曲の「海王星」は女声合唱も透明感があり、更にはチェレスタの魅惑的な響きがマッチして、叙情的美しさをたたえた素晴らしい演奏を披露しています。
最近、小澤とウィーンフィルの録音が途切れていますが、ここらでカラヤンの向こうを張ってウィーン・フィルでこの惑星を再録音してほしいですね。
惑星の演奏時間比較
演奏、録音年 | 火星 | 金星 | 水星 | 木星 | 土星 | 天王星 | 海王星 |
小澤/ボストン響/79 | 6:46 | 7:53 | 4:06 | 8:01 | 8:44 | 5:40 | 8:11 |
スタインバーグ/ボストン響/70 | 6:37 | 7:28 | 4:01 | 8:03 | 7:48 | 5:29 | 6:47 |
マリナー/コンセルトヘボウ管/77 | 7:34 | 7:30 | 3:54 | 8:05 | 7:43 | 5:21 | 6:26 |
カラヤン/ウィーン・フィル/61 | 7:02 | 8:20 | 3:57 | 7:36 | 8:31 | 5:44 | 7:38 |
メータ/ロス・フィル/71 | 7:10 | 8:04 | 3:50 | 7:50 | 9:52 | 5:39 | 7:00 |
グローヴス/ロイヤル・フィル/87 | 7:41 | 8:21 | 4:03 | 8:13 | 8:57 | 5:54 | 8:50 |
惑星についてはホームページでも取り上げているので、ここではあまり書きませんが、グローヴスの演奏はオリジナルには無いパイプオルガンまで使った壮大な響きが特徴です。まあ、こういう演奏にならされているので、この小澤の「惑星」は凄く異質に感じられるわけです。演奏時間も小澤「火星」の早さが目につきます。しかし、スタインバーグの方がもっと早いのですが音楽としては推進力があり充実しています。
まあ、ホルストの「惑星」にはこういうアプローチのしかたもあるんだなということが発見出来たことは収穫でしょう。こんな、駄文を書くにあたって小澤の演奏を5回も聴きましたが、聴き進めるに従って耳になじんでくるのは確かです。ところで、このCDはいわゆるバッタものルートで流れたものです。現在は廃盤になっているようです。