
雑誌「旅と人間」のカメラマン・木下孝は、新型寝台特急“サンライズエクスプレス”を取材するため、高松まで乗車することになった。女好きの木下は、隣りの個室に乗り合わせた若い美女と知りあい、永井みゆきと名のるその女の目的地・道後温泉まで同行することを企む。が、乗りかえ駅の坂出で彼女が起きてこないのに不審を抱き、その室をあけると、別の女の死体が出てきたのだ。しかも、永井みゆきと名のる女は、去年東京で死んだ筈だという…。謎が謎を呼ぶ事件に十津川と亀井が挑む、長篇トラベル・ミステリー。---データベース---
十津川警部ものにしてはかなりのハードボイルドタッチの作品です。怪しい人物は冒頭でほとんど登場し、これはXが犯人だなとそうそう思いますが、そうは問屋が卸しません。中盤以降確かにXが関係者として浮かんでくるのですが、最後には殺されてしまいます。ストーリーは2転3転して後半はとんでもない幕切れが待っています。
最初は出雲、高松行きの「サンライズエクスプレス」が舞台となりますが、これはお膳立てに過ぎません。ここで殺された女は、最初の出会いの女とは似ても似つかない別人だったからです。そして今までの十津川警部ものと違って、最初に登場する事件の発端のカメラマンは途中で殺されてしまうからです。通常でしたら、この人物が最後まで絡んで事件解決に何らかの形で影響するのですが、ここではあっさりと殺されてしまうのです。途中までは、この幻の女を追うカメラマンがしっかり活躍していつもながらのいい展開なのですが謎の言葉を残して死んでしまうのです。
そして、もう一つの特徴は、いつもの十津川警部に変わってこのカメラマンを尾行、調査するのに私立探偵の橋本が活躍するのですが、彼に依頼するのが田中と片山刑事のポケットマネーが使われているからです。で、彼が活躍するかといえばそれは添え物でしかありません。いい活躍をしているのに、カメラマンに関係した男が殺されるとぷっつり消えてしまうからです。なんかもったいない登場のしかたです。
カメラマンが殺されることで、事件の糸はぷっつりと切れてしまいます。一度リセットすることで最初に登場した人物の再捜査になります。しかし、ここでもこのXなる人物も殺されてしまうのです。ここがちょっと不思議な所なんですが、この男の殺人に幻の女が絡んできます。しかし、最終的にはこの女は同じ側にたつ人間なのです。ストーリーではこの殺人は未解決のまま放置されてしまいます。
さて、ハードボイルドタッチと書きましたが、この事件で犯人は逮捕されません。なぜなら事件の解決の前に敵対グループに殺されてしまうからです。散々、ストーリーの中で登場してきた幻の女も、あっさりと自殺して死んでしまいます。一体どういう展開なんだと半ばあきれかえっていると、最後の最後にどんでん返しが待っています。何とも壮絶な殺人合戦です。事件を俯瞰すると、このストーリーで十津川警部達は事件の犠牲者を食い止めることができません。つまり、事件を追ってはいるのですが、いつも後手ゞの対応で殺人を食い止めることはできません。それを象徴するように最後は真のXに対峙した時、十津川警部達は逃げ出さずに入られません。
そして、誰も逮捕出来ないままこの事件は終結します。この事件の犠牲者は
コンパニオン派遣会社社長
私立探偵二人
カメラマン
雑誌編集長とその妻
和菓子店店長
幻の女
X
そして、法律事務所関係者 人数不明
和菓子店関係者 人数不明
ということで殺された人間は確認出来ないほどの死者が出ています。本来なら警察の対応の不備が追及されそうな事件ですですが、この小説は十津川警部たちが爆発から逃げる所で終わってしまいます。
コンパニオン派遣会社社長
私立探偵二人
カメラマン
雑誌編集長とその妻
和菓子店店長
幻の女
X
そして、法律事務所関係者 人数不明
和菓子店関係者 人数不明
ということで殺された人間は確認出来ないほどの死者が出ています。本来なら警察の対応の不備が追及されそうな事件ですですが、この小説は十津川警部たちが爆発から逃げる所で終わってしまいます。