
東京・上野でホームレスのテントが燃え、十六人が焼死した。
放火の疑いを持った新聞記者・白木は、火元の男性が岐阜・長良川周辺の出身と知り、調査を始めた矢先、凶弾に倒れた!白木の足跡を追い、岐阜へ乗り込んだ十津川と亀井は、二年前のある事件との接点を探り出すが、関係者の口は一様に重い。さらに岐阜県警までもが…。十津川警部、孤立無援の闘い。---データベース---
放火の疑いを持った新聞記者・白木は、火元の男性が岐阜・長良川周辺の出身と知り、調査を始めた矢先、凶弾に倒れた!白木の足跡を追い、岐阜へ乗り込んだ十津川と亀井は、二年前のある事件との接点を探り出すが、関係者の口は一様に重い。さらに岐阜県警までもが…。十津川警部、孤立無援の闘い。---データベース---
最初、上野でホームレスのテントが燃え、十六人が焼死した事件は警察は問題視していません。単なる失火として処理されてしまいます。しかし、この火事を取材で丁度目撃した中央新聞の白木という記者が不審に思って動き出します。中央新聞ですからデスクは田島という十津川警部の旧友です。白木の調査はある程度の生家はあったのですが事件性の決定的証拠は無いままで終了します。ところが、彼が殺されてしまいます。拳銃で射殺されるのです。当然田島は十津川警部に事の始終を知らせます。
ここから警察の登場ですが、今回はここまでの1/4で白木が概略の調査がありますので十津川警部が登場してもすんなりストーリーが進んでいきます。こちらも予備知識があり不審人物のあらましが分かっていますから非常に読みやすくなっています。
事件の舞台は長良川河畔の岐阜市ですが、高山下呂へと広がっていきますがあくまでも岐阜県内に限定されています。後の展開は舞台劇を見るような感覚です。登場人物の背後関係と相関図があぶり出されれば必然的に事件は収斂していきます。
ここでは殺された男の動機捜査が大きなポイントになりますが、それがやや弱い所がもう一つのめり込めない所でしょうか。死んだ男はホームレスになるのですが別に記憶喪失ではありません。ある程度権力を持っていた男がなぜそうなってしまったのかの背景が今ひとつはっきりしません。長良川の鵜飼船から突き落とされたのは分かるとしてその後の足取り捜査が欠落しているからです。
事件の解決に警察官が絡んでいる事で岐阜県警の捜査の足取りが重い事は分かりますが、合同捜査の方針も見えずただ一人捜査に協力してくれていた岐阜県警の児島刑事が射殺されてようやく重い腰を上げます。ここからは、一気に事件が進展しますがそれにしても、関係者が複数犯だった事は何か動機からして吹っ切れない部分があります。それも、ホームレスとされた男の妻までが絡んでいたとは・・・
解せないのは第4章で登場する岐阜の賢人としょうする人物です。この人物、白木という新聞記者が会った時には何の情報ももたらさない人物なのですが、十津川警部たちが訪ねた時はいろいろサジェスションをしているのです。この手もありますが、もう一つ、中央新聞の田島を通して岐阜支局を突ついた方がストーリーとしては纏まりがあるというものです。そして、岐阜新報というメディアが登場するのですが、これも不思議なもので十津川警部たちが偶然に訪れているんです。まあ、伏線としてはこちらの方が面白いかな。
表面上は事件はクールに解決されていきますが、その裏のどろどろとした人間関係がもう少し描かれていたならばもっと読み応えがあったろうにと感じずにはいられません。