ハイティンクのブラームス交響曲第4番
曲目/ブラームス
1.交響曲第4番ホ短調 Op.98
2悲劇的序曲Op.81*
指揮/ベルナルト・ハイティンク
演奏/ボストン交響楽団
録音/1992/04/25.27.05/01、1990/03/31-04/03*、シンフォニー・ホール、ボストン
P:フォルカー・シュトラウス
E:ウィレム・ヴァン・レーウウェン、エヴァート・メンティング、セース・ハイイコープ、ウルズラ・ジンガー*
1.交響曲第4番ホ短調 Op.98
2悲劇的序曲Op.81*
指揮/ベルナルト・ハイティンク
演奏/ボストン交響楽団
録音/1992/04/25.27.05/01、1990/03/31-04/03*、シンフォニー・ホール、ボストン
P:フォルカー・シュトラウス
E:ウィレム・ヴァン・レーウウェン、エヴァート・メンティング、セース・ハイイコープ、ウルズラ・ジンガー*
PHILIPS PHCP-10513
このハイティンクのブラームスは2度目の全集録音となるものの一枚です。初回は1970年代に当時の手兵だったアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団とそして、1990年代に今度はこのボストン交響楽団と、最近では2002年にロンドン交響楽団と3度目の全集を完成しています。しかし、近年はライブバージョンということでセッションとしての録音はこのボストンが最後のものです。
ボストン交響楽団は既に70年代に小澤とブラームスを録音しており、丁度この頃はサイトウ・キネンと2度目のブラームスを録音しており、その関係でハイティンクにお鉢が回ったようです。
ハイティンクは全集魔で、主だった作曲家の全集を片っ端から録音していますが、どちらかというと大器晩成型なのでこのデジタル録音によるディスクは完成度の高いものに仕上がっています。
ボストン交響楽団の響きはブラームスに合っているようで渋く重厚なサウンドがフィリップスの録音スタッフによって記録されています。それは、小澤、ボストンの70年代のグラモフォンの重たい音とはやや違い、弦のビロード・トーンを伴ったコンセルトヘボウの音に近い仕上がりです。
序奏がない第1楽章の入りでも渋いけれど艶のある弦の響きでオケはハイティンクの棒にぴったりと付いていっています。
アンダンテの第2楽章ではハイティンクは冒頭のホルンと木管の響きを意識的に強調させて演奏させています。この第1主題の扱いは再現部ではもっと劇的になり第2主題との音色の変化にくっきりとしたコントラストを与える演出を見せています。最後にはコラール風にホルンを響かせて壮大に締めくくっています。
第3楽章は珍しく、ドヴォルザークばりのスケルツォが元気に響きます。ここでのトライアングルの響きは出過ぎず引っ込み過ぎずで見事なバランスで鳴っています。こんなに心地よいトライアングルの響きはこのハイティンクの演奏で初めて出会いました。そして、ティンパニのエバレット氏の響きも抑制の利いたバランスの良いものでハイティンクのバランス感覚の素晴らしさの一端を垣間見ることができます。コンセルトヘボウとの演奏ではここら辺のところが今イチ整理出来ていなかったのでこの再録にはハイティンクも満足したのではないでしょうか。
つづく第4楽章のバッハのシャコンヌから借りた主題の変奏から成り立っていますが、各楽器のソロが優れていて聴き惚れてしまいます。特にフルートのソロは聴き物です。主音から出発して属音まで6つ上昇、オクターブ下降して主音に戻るという、ラ-シ-ド-レ-レ♯-ミ↓ミ↑ラの8つの音符からなる主題が展開部で戻ってくるとスピードが上がり快速アレグロで突き進んでゆきます。コンセルトヘボウ盤よりは遅くなっているのですが音の密度が上がっているので聴感上はそうは聴こえません。ただ、最後のコーダでちょっとためが不足しているのかあっさり終わってしまうのは期待はずれです。
しかし、その後に控える「悲劇的序曲」がこれまた充実した演奏で聴かせてくれます。冒頭から音の洪水で劇的な第1主題が奏されると異様な緊張感が漂います。交響曲の1楽章に匹敵するこの曲は単なるおまけの曲ではありません。もちろん当初のカップリングとなる交響曲第2番とのセッションも含まれていますが、ハイティンクはこの曲の録音に4日間をかけています。それだけに納得のいく演奏となったのではないでしょうか。第1主題と第2主題の強と柔の対比は見事ですし、その間をつなぐトロンボーンの響きも軽からず重からずでバランスの良い響きです。この曲ではティンパニがやや前面に出で劇性を強調していますが決して出しゃばり過ぎではありません。ここら辺の響かせかたはハイティンクの美点でしょう。
録音年 | 第1楽章 | 第2楽章 | 第3楽章 | 第4楽章 |
1972年盤/コンセルトヘボウ | 12:23 | 11:40 | 6:12 | 10:05 |
1992年盤/ボストン交響楽団 | 13:24 | 12:47 | 6:14 | 10:23 |
CD時代になってフィリップスの録音の良さが再確認出来ます。LP時代はデッカが突出していましたがCDでは逆転しているような気がします。まあ、今ではユニバーサルグループの1セクションでしかなく、DGが幅を利かせているのであまり目立たなくなったのが残念です。