
西村京太郎自選集③ 警視庁捜査一課・亀井刑事の姪で大学四年生の風見典子が、交際中の通産官僚・花井友彦と二人で、北海道一周旅行に出かけた。一方、千歳空港近くのモーテルで若い女の絞殺死体がみつかり、捜査の結果、花井が容疑者として浮上する。しかし、女が殺されたと思われる時間、花井には典子とともに釧路行きの特急“おおぞら3号”に乗車していたという鉄壁のアリバイが・・・・・・!?
時刻表トリックの妙を鮮やかに描いた「おおぞら3号殺人事件」や「急行『だいせん』殺人事件」等、厖大な鉄道推理の短編群から厳選された名品集。---データベース---
時刻表トリックの妙を鮮やかに描いた「おおぞら3号殺人事件」や「急行『だいせん』殺人事件」等、厖大な鉄道推理の短編群から厳選された名品集。---データベース---
「華やかな殺意」、「麗しき疑惑」に続く西村京太郎自選集の第3作にあたります。以下の六編が収録されています。
◆おおぞら3号殺人事件
◆死への旅「奥羽本線」
◆ATC作動せず(L特急「わかしお」殺人事件)
◆急行「だいせん」殺人事件
◆殺意を運ぶ列車
◆復讐のスイッチ・バック
◆おおぞら3号殺人事件
◆死への旅「奥羽本線」
◆ATC作動せず(L特急「わかしお」殺人事件)
◆急行「だいせん」殺人事件
◆殺意を運ぶ列車
◆復讐のスイッチ・バック
巻頭を飾るおおぞら3号殺人事件は亀井刑事の活躍する一編です。どうして姪の風見典子が旅行の相談を亀さんにするのかが合点が行かないのですし、上野駅まで親が見送りにいかないで亀さんが行くというのも変な設定です。が、まあ、それがきっかけでストーリーは始まります。現代的な姪の典子は母親には男と旅行するとは話さないで亀さんだけに彼氏を紹介します。はターン的にはここで紹介される花井知彦が一番怪しいということになります。
物語はまだ、青函連絡船が現役の頃の話です。読み始めてパターンが分かるので犯人の推測が付くので後はどうやって亀さんが推理していくのかという興味の問題です。北海道警察の事件ですが姪のために休暇を取って北海道に出かけます。そして、亀さんの捜査でトリックを見破り無事姪を救出します。しかし、「おおぞら3号」がこんな複雑な運行をしているとは知りませんでした。
2作目の死への旅「奥羽本線」にも亀さんが登場します。珍しく十津川警部はここでは出てきません。恋人が両親に結婚の承諾を貰うために郷里の秋田に一人で帰ります。この一人旅が片道切符になり宇都宮で殺されます。彼女は夜行で行ったはずですがどの列車に乗るとは誰にも話していません。容疑者は直ぐに浮かびますがアリバイの壁があります。群馬県警は独自に調べますが警視庁の亀井刑事が関連の捜査をするということで登場します。鉄道推理に絡む一編としてはこの列車の特性は見逃せません。男鹿行きの急行「おが」が事件の舞台となった列車です。ヨーロッパでは当たり前なのですが、こういう列車が日本に在るとは知りませんでした。そして、この列車ならではのトリックを見破ったところに亀井刑事の彗眼があります。
ATC作動せず(L特急「わかしお」殺人事件)は何ともお粗末な事件だなあという殺人で始まります。何しろ、事件を起こしておいていざ逃げようとしたら列車のドアが閉まり逃走出来なくなってしまうのですから。関東に住んでいないものにはちょっと分かりにくいのですが房総線は内房総と外房総に別れています。ATCが導入されるまでは循環して山手線みたいにぐるっと一周出来たそうです。問題はATCで一定方向しか作動しないと説明されています。ということで犯人に乗っ取られた電車はタイトル通りATCが作動しないから問題になるということらしいです。でも、そんなこといったら世の中の列車すべて一定方向しか走れないことになってしまいますよね。
そんなことを考えて読んでいると事件は身代金強奪事件へと発展していきます。ありゃ?と思っていると十津川警部はちゃんと犯人の目星を付けています。ちょっとひねった殺人事件の結末は意外で思わずにやっとしてしまいます。
そんなことを考えて読んでいると事件は身代金強奪事件へと発展していきます。ありゃ?と思っていると十津川警部はちゃんと犯人の目星を付けています。ちょっとひねった殺人事件の結末は意外で思わずにやっとしてしまいます。
急行「だいせん」殺人事件」は女の直感が冴える事件です。ここでは東京警視庁は登場しません。事件は島根県で起こります。時刻表にはいろいろなミステリーが潜んでいます。この事件も起こるはずが無いという先入観がトリックになっています。何で急行が普通電車に追いつかれるんでしょうね。
殺意を運ぶ列車にはダイイングメッセージが残されています。ショウワ、タイショウという言葉です。人名なのか、企業名なのか、殺された女のアパートでの手がかりでそれは知名だと分かります。愛知から岐阜にかけては明治村、大正村というのはありますが昭和というのはありません。まあ、最近観光施設として日本昭和村というのが出来ましたが・・・
調べると昭和村はこんなにあります。
昭和村 (福島県) - 福島県 大沼郡 昭和村
昭和村 (群馬県) - 群馬県 利根郡 昭和村
昭和村 (長野県) - 長野県 更級郡 昭和村(のち川中島町→現・長野市)
昭和村 (大阪府) - 大阪府 豊能郡 昭和村(のち西能勢村と村名変更→現・能勢町)
昭和村 (奈良県) - 奈良県 生駒郡 昭和村(現・大和郡山市)
昭和村 (広島県) - 広島県 安芸郡 昭和村(現・呉市)
昭和村 (香川県) - 香川県 綾歌郡 昭和村(のち綾南町→現・綾川町)
昭和村 (高知県) - 高知県 幡多郡 昭和村(のち十和村→現・四万十町)
昭和村 (熊本県) - 熊本県 八代郡 昭和村(現・八代市)
昭和村 (大分県) - 大分県 南海部郡 昭和村(のち弥生村と村名変更→弥生町→現・佐伯市)
この事件で関係するのは高知県の昭和村です。事件はその日のうちに解決するスピード逮捕です。しかし、操作の手順がいつもの手法と違うのでまどろっこしさを感じます。まず。バックわ改めません。金が奪われていないということは飛行機のチケットもハンドバックに残っていた可能性があります。また、男のアパートに行った時に実家まで分かったのですから関係県警に連絡して所在の確認を出来たはずです。
昭和村 (福島県) - 福島県 大沼郡 昭和村
昭和村 (群馬県) - 群馬県 利根郡 昭和村
昭和村 (長野県) - 長野県 更級郡 昭和村(のち川中島町→現・長野市)
昭和村 (大阪府) - 大阪府 豊能郡 昭和村(のち西能勢村と村名変更→現・能勢町)
昭和村 (奈良県) - 奈良県 生駒郡 昭和村(現・大和郡山市)
昭和村 (広島県) - 広島県 安芸郡 昭和村(現・呉市)
昭和村 (香川県) - 香川県 綾歌郡 昭和村(のち綾南町→現・綾川町)
昭和村 (高知県) - 高知県 幡多郡 昭和村(のち十和村→現・四万十町)
昭和村 (熊本県) - 熊本県 八代郡 昭和村(現・八代市)
昭和村 (大分県) - 大分県 南海部郡 昭和村(のち弥生村と村名変更→弥生町→現・佐伯市)
この事件で関係するのは高知県の昭和村です。事件はその日のうちに解決するスピード逮捕です。しかし、操作の手順がいつもの手法と違うのでまどろっこしさを感じます。まず。バックわ改めません。金が奪われていないということは飛行機のチケットもハンドバックに残っていた可能性があります。また、男のアパートに行った時に実家まで分かったのですから関係県警に連絡して所在の確認を出来たはずです。
それもせずに、十津川警部と亀さんはパトカーを羽田に放り出して高知まで行ってしまいます。本多捜査一課長が呆れるのも無理ありません。犯人は無事逮捕されますから問題はないのでしょうが著津とすっきりしない事件でした。
復讐のスイッチ・バックは九州は熊本から別府まで走る「火の山5号」で起こります。九州にもスイッチバックで登る鉄道路線が在るとは知りませんでした。そこで乗り合わせた女が殺されます。いわくありげな美人でしたが青酸化合物を注射で刺されての毒死でした。車内はすいていたので誰も気がついた人はいなかったのです。
女の対面に座っていた羽田も気がつきませんでした。しかし、彼が写した写真が後々重要な意味を持ってきます。羽田が自宅で襲われ写真を盗られたからです。ネガは無事でしたが、留守中に再度賊に入られ今度はネガも盗まれてしまいます。これで確信は写真にあると踏んだ十津川警部は九州に飛んで現場検証をします。駅員に写真を見せると意外な反応が返ってきます。現場の関係者にしか分からない事実です。事件は解決します。まさに復習のスイッチバックです。犯人の動機も分からなくはありませんが、その手口にはいくら列車が空いていたとしても気がつかないというのはやはり不自然な気がしないでもありません。
それと、地元の熊本県警にも写真を送ってあるはずなのですが写っていた人物だけの捜査で終わってしまっていたのが情けないですね。
それはさておき,この新書版の解説には十津川警部の事件がどの路線でどんな事件が発生したかの資料が図解で掲載されており参考になります。だらだら解説よりこういうものは役立ちます。ぜひ、読書の参考にこの一冊は座右に置いておきたいものです。