緋色の殺人-愛知県の秘密 | geezenstacの森

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緋色の殺人-愛知県の秘密

著者 斉藤 栄
出版社 中央公論新社 中公文庫

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 艶やかな緋に彩られた国宝級の〈天女の壷〉を修復中の工芸家が、名古屋で事故死した。娘の雅乃から、事故直前に美術品を狙う怪盗ファジーの予告があったと聞き、日美子は名古屋へ。だが、修復作業を引き継いだ雅乃の叔父が工房で刺殺され、その知人の美術評論家も毒殺される。それぞれの現場に残された食べかけのういろうときしめん!事件にまつわる名古屋名物の謎に挑む日美子の推理は―。タロット日美子“県名シリーズ”第1弾。

 斉藤栄の著書はまだ読み始めたばかりなので、詳しい事は知りませんがこのタロット日美子は結構なシリーズのようです。この作品が発表された1992年までに53作もあるそうです。
たまたま、副題に「愛知県の秘密」とありましたので真っ先に手に取った次第です。そして、この作品が県名シリーズの第1作目だということです。

 そんな事で興味を持って読み始めたのですが、なんか違和感があります。確かに殺人事件は起きます。日美子の旦那は神奈川県警の警部です。しかし、ほとんど絡んでは来ません。何せ、事件は名古屋で起きていますから手の出しようが無いのです。そして。ファジーなる怪盗が出没します。解説によると、アルセーヌ・ルパンと怪人二十面相をたして2で割ったような存在らしいのですが、国籍、年齢、性別まで不詳という存在です。国際手配中の美術品専門大物窃盗犯という設定はなにか荒唐無稽の感じすらします。そして、このファジーが日美子に電話をかけてきて犯人のヒントを喋るというのですから訳が分かりません。

 最初の殺人事件は工芸家の茂手木晃一が殺されるところから始まります。そして、次々に関係者の茂手木鉄男、柿山登が殺されます。そして、肝心のタロット占いはいいところで邪魔が入って肝心なところは占われません。2回目の占いも邪魔が入って最後まで占うことができません。これには伏線がありました。

 ということで、占いはいつも完全な形では行われません、そして、旦那の二階堂警部も登場しますが、何のために名古屋に来て何をして行ったのかはさっぱり解りません。ましてや、愛知県警の刑事たちはちっとも事件を捜査しているようには思えません。そこら辺が歯がゆいのです。

 事件は、最後に意外な結末を迎えますが、ういろうと桃山の謎はチョットした通でないと解けないなぞになっています。ここら辺は斉藤栄のセンスの見せ所ですが、肝心の殺人についてはちょっと納得出来ません。この事件にも病気が絡んできます。早発性痴呆症、一種の自閉症です。果たして。そんな人間にこれらの殺人が出来るものなのでしょうか。

 事件は解決したようで、解決を見ないままに終わっています。そう考えると読後感は何とも割り切れないものになってしまいました。