知らざれる指揮者シリーズ4 | geezenstacの森

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ユーリ・シモノフのマーラー「巨人」

曲目
マーラー/交響曲第1番「巨人」
第1楽章 16:47
第2楽章 8:36
第3楽章 11:41
第4楽章 19:44

指揮/ユーリ・シモノフ
演奏/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

録音 1994。ウェンブリーCTSスタジオ、ロンドン
ブリリアント 99549-1 TRING原盤

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 これは今をときめくブリリアント・レーベルの最初のマーラー交響曲全集に含まれる一枚です。今はインバルによる全集もでていてそちらのが主流になりつつありますからいずれ廃盤になるかもしれません。この全集はシモノフの他にホーレンシュタインやハンス・フオンク、ノイマン、マズア、ヘンヒエンといった指揮者人による寄せ集め全集になっています。アナログ、デジタルが混在していますが、中々侮れない内容になっています。うれしいのはこの旧全集、一枚づつプラケースに入っているので取り出して聴くには便利です。このセットは現在は廃盤の様で同じ内容で紙ジャケット仕様のものに変わっているようです。


 シモノフはこの第1番だけなのですがデジタル録音で音質も良好で聴き応えのある演奏になっています。デジタル初期に雨後の竹の子のように乱立したメーカーの一つ「TRING原盤」による音源をライセンスしたものです。

 でもって、シモノフですが以下のような経歴です。
「1941年旧ソ連のサラトフのオペラ歌手一家に生まれる。レニングラード音楽院でラビノヴィッチに師事し、その後レニングラード・フィルでムラヴィンスキーの助手を務める。
1968年、ローマのサンタ・チェチーリア指揮者コンクールでロシア人初の優勝の栄冠に輝く。翌年ボリショイ歌劇場に招かれ「アイーダ」でデビューを飾り、間もなく同歌劇団の首席指揮者として任命される。彼は同歌劇団史上最年少で就任した首席指揮者であるとともに、1985年までその地位につき最長在任記録をつくった。
ボリショイ時代は40年空白だったワーグナーを復活させ、また欧米、日本と各地の公演で喝采を浴びる。1982年にコヴェント・ガーデン王立歌劇場でデビュー。英国デビューの際、ファイナンシャル・タイムズは「完璧なるチャイコフスキーの理解者」と絶賛した。その後フィルハーモニア、ロンドン交響楽団等、英国主要オーケストラの指揮を行い、1986年にはコヴェント・ガーデンのシーズン初日にヴェルディの「椿姫」を指揮した。その後、ボストン交響楽団およびロサンゼルス・フィルの指揮で1989年米国デビューを果たす。翌年はオペラデビューを飾り、プラシド・ドミンゴ主演の「ドン・カルロ」、1993年にはルネ・フレミング主演の「エフゲーニ・オネーギン」等を指揮。
1994年以降はベルギー国立管弦楽団の音楽監督、1998年以降はモスクワ・フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者となり今に至る。同時にブタペストオペラ、ハンガリー国立劇場など、指揮者としてオペラ作品の新たな制作に携わる。モスクワ・フィルとは1999年に始まったアメリカツアーを始め、欧米各地は勿論、日本、韓国、台湾で公演を行っている。」

公式サイト http://www.yurisimonov.com/

 けっこう日本にも来日していて、既に来日歴17回以上ということですね。でも、メジャーレーベルから録音はほとんどでていないので一般にはあまり知られていません。近年では藤子・ヘミングの録音のバックを務めていたショパンのピアノ協奏曲のCDがユニバーサルからでています。そして、このロイヤルフィルを振ったものはロイヤルフィル・コレクションの中にも含まれていますが入手は難しくなってきているようです。

 さて、その演奏は録音の良さも手伝って極めて聴き応えのある演奏に仕上がっています。よく整理された見通しのいい演奏で各楽器の音が明瞭に聴き取れ、重量感のある演奏で所謂「爆演型」の仕上がりです。中型以上のスピーカーで聴けばマーラーの世界が爆発します。元々、オペラの人ですから聴かせどころは心得ているようで、非常にドラマティックな仕上がりです。

 第1楽章も終わりの盛り上げ方は素晴らしくロイヤルフィルも素晴らしいアンサンブルで期待に応えています。第2楽章のスケルツォはもう少し陶酔的な表情がほしいと感じられる部分もありますが、若々しいリズムで前進する勢いは魅力的です。

 第3楽章の葬送行進曲はもう少し深遠さが欲しいところですがソロ楽器のレベルが高いので聴き応えはあります。圧巻は最終の第4楽章です。出番とばかりにホルンが咆哮します。ティンバニの打ち込みに呼応して激しいバトルで盛り上がります。このクライマックスは興奮ものです。

 昨今のマーラーブームで交響曲第5番の方がよく取り上げられますが、小生としてはやはりこの1番が一番好きです。数ある交響曲の中でも1番が人気のある作曲家はブラームスとマーラー位ではないでしょうか。この1番はやはり、ワルターの演奏で開花しました。1960年代でまともにマーラーを録音していた指揮者はあまりいませんでしたからね。

 蛇足ですが、この年末のテレビ朝日系の「題名の無い音楽会2001」にはこのシモノフ指揮のモスクワ・フィルハーモニー交響楽団が登場しています。