◆ドヴォルザーク:交響曲第9番『新世界より』
(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団) 1959/10/5,6
イエス・キリスト教会,ベルリン
D:オットー・ゲルデス
P:E.シラー
◆コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』
(ベルリン放送交響楽団) 1961/11/3,4 ?
ベルリンRIAS交響楽団 1954/9/22-24
指揮/フェレンツ・フリッチャイ
DGG POCG-9824
(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団) 1959/10/5,6
イエス・キリスト教会,ベルリン
D:オットー・ゲルデス
P:E.シラー
◆コダーイ:組曲『ハーリ・ヤーノシュ』
(ベルリン放送交響楽団) 1961/11/3,4 ?
ベルリンRIAS交響楽団 1954/9/22-24
指揮/フェレンツ・フリッチャイ
DGG POCG-9824

初めに断っておきますが、2曲目の「ハーリ・ヤーノッシュ」は表記ではステレオ録音になっていますが、実際収録されていたのはモノラルです。フリッチィはこの曲を2回録音していますので、多分音源はその第1回目のものを間違って収録したものだと思われます。表記は1961年の録音となっていますが聴感上「新世界」より音の鮮度は落ちますし、モノラルゆえ聴き映えがしません。実はこの時の録音の直後にコンサートが開催されています。その映像が下記のものです。
そして、このコンサートの前のリハーサル風景も残っています。リハだけでなく本番でもフリッチャイは指揮棒なしで演奏しています。
なお、この番号のCDはジャケットにもあるように限定発売で現在は廃盤です。また、この組み合わせのCDは再発されていないところを見てもやはり、問題があったのでしょうね。ステレオの「ハーリ・ヤーノッシュ」は下記のジャケットで発売されています。
DGG 457745
フリッチャイとの出会いはヘリオドールから出ていたストラヴィンスキーの「春の祭典」のLPでした。これが所謂疑似ステと言われるモノラルを人工的にステレオ化したものでした。録音は1954ですから仕方がありませんが発売当時(グラモフォンLGM39)はレコ芸でも推薦盤でした。結構気に入っていた演奏でフリッチャイには一目置いていたものです。その後はいきなりベートーヴェンのオペラ「フィデリオ」に飛んでしまいましたが、素晴らしく躍動感のある演奏でこれもお気に入りです。
ということで、「新世界から」です。こちらは1959年の録音ですから正真正銘のステレオ録音です。フリッチャイというと一時、録音の時はベストテイクを求めて細切れに録音したという噂が流れていましたが聴いた限りではそんな事はありません。ただ。古い録音ですからテープヒスは結構目立ちます。当時は、病気から一時復帰しての録音でベルリン・フィルの屋台骨をしょっていましたからいい意味ベストの状態の録音です。ベルリン・フィルもまだカラヤン・カラーに染まる前のドイツ伝統のサウンドを聴かせてくれていて貴重な遺産となっています。たぶん、フリッチャイが白血病で倒れていなかったらDGはカラヤンではなくフリッチャイをとっていたのではないでしょうか。
この「新世界から」は結構テンポが揺れています。それはフルトヴェングラーのようですが聴いた感じはトスカニーニの「新世界から」を感じさせます。つまり、フルトヴェングラーの良さとトスカニーニの良さを併せ持ったような演奏なのです。ハンガリー出身の指揮者というとセルが思い起こされますがセルよりこの演奏の方が気に入ってます。
第1楽章は基本的に快速のテンポなのですがここぞというところはテンポをぐっと落としてメロディラインをくっきりと浮かび上がらせます。第2楽章はじっくりとラールゴを歌い上げしみじみと聴かせてくれます。第3楽章のスケルツォはこれまた、快速を基本にしながらテンポを巧みに動かし中間部は極端にスローテンポでくっきりと対比を描き出しています。そして、ティンパニの打ち込みの凄いこと。グラモフォンとしては珍しく音を拾いきれていないようで最強打では玉砕しています。テインパニの音が中央右手から聴こえてくるのも珍しい録音です。第4楽章は色彩感溢れる演奏で高らかにトランペットが吹き鳴らされ、各楽器の音も非常にクリアでコントラバスもギュンギュン響きます。
演奏時間は10:03 13:54 8:14 12:01で鈍足のジュリーニに比べれば早いですが、それでもカラヤンやケルテスに比べれば遅いです。しかし、聴感上は素晴らしくスピード感のある演奏です。
日本では欧米に比べて人気が今ひとつでないフリッチャイですが、この「新世界から」だけでも聴いてみてほしいものです。