小沢征爾とフランスのオケとビゼー | geezenstacの森

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小沢征爾/フランス国立管弦楽団「ビゼー/交響曲第ハ長調」他


ビセー/交響曲第ハ長調
序曲「祖国」
小組曲「子供の遊び」

録音 1982/04/2,3,5
サル・ワグラム,パリ
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EMI SERAPHIM TOC-7108

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 小沢のフランスとの結びつきは結構古いです。何しろ有名になるきっかけが1959年の「ブザンソン指揮者コンクール」だったのですから。でもって、フランスのオケを振る機会を与えられた訳です。初仕事はトゥールーズ市立管弦楽団との放送録音でした。商業録音としてはバリ管弦楽団、フランス国立管弦楽団、そして、パリ・オペラ座管弦楽団とのものがあります。

 この録音は1982年で、フランス国立管弦楽団との最初の録音です。それまでのパリ管弦楽団とはチャイコフスキーやストラヴィンスキーなどの作品を録音していましたから。フランスのオケということでフランスものを選んだということでしょうか。いや、そうではないんですね。この録音は恩師のシャルル・ミュンシュへのオマージュだと思います。同じ曲目をミュンシュは1967年にフランス国立放送管弦楽団と録音しています。改組はされましたがその同じオーケストラとの録音ということでビゼーを選択したと思えます。

 ビゼーの交響曲は他にもあったようですが破棄されてしまったようでね。この曲と「ローマ」と呼ばれる曲が4楽章なので交響曲として扱われる事があるようで、わざわざこの曲は第1番と呼ばれています。この作品は、オーボエが非常に目立つ曲です。
 四つの楽章全てに少なからぬソロがあり、なかでも第2楽章はオーボエ協奏曲ではないかと思えるほど、メロディーを延々と一人で吹きつづけるソロがあります。演奏者の名前こそありませんがこのソロがうまいです。まるで初夏の差しの中で陽炎が揺らめくようなイメージを感じさせます。フランスの管の巧さの伝統が生きています。

 さて、第1楽章から歯切れのいいリズム処理は師のシャルル・ミュンシュ譲りでしょうか、快調に飛ばします。こういう乗りの良さは小沢としては珍しいもので全体に躍動感ある演奏に仕上がっています。そういえば、この曲は、以前にバレエの振り付けで聴いた事があります。バレエにも合うということでしょうね。

 2曲目の序曲「祖国」はあまり演奏されない曲です。レコード時代にはB面の1曲目でしたが、一聴した限りではビゼーの作品とは分からないのではないでしょうか。

 作曲のきっかけは普仏戦争に敗退した祖国を嘆いて指揮者だったパドゥルーという人物に依頼され作曲したもので賑やかしい行進曲理リズムとともにコルネットやハープなども使われた大編成のオーケストラ作品です。曲は3つの部分から構成されていて組曲みたいになっています。ベートーヴェンの「ウェリントンの勝利」みたいでややまとまりに欠ける印象です。

 小沢の指揮も愛国心を鼓舞する風な演奏ではなく、純粋音楽として取り組んでいるので曲にのめり込むというわけにはいかないのですが渾身の指揮ぶりで、小沢のうなりが随所に聴き取れます。

 最後の「子供の遊び」は組曲ですが佳曲です。もともとはピアノ連弾曲を作曲者自ら編曲したもので全部で5曲からなっています。それぞれの曲のタイトルがピアノ曲と違うようで括弧内はピアノ曲のタイトルになります。

1.行進曲(ラッパと太鼓)
2.子守唄(人形)
3.即興曲(こま)
4.二重奏(小さい旦那様、小さい奥様)
5.ギャロップ(舞踏会)

 原曲のタイトルを知っていると納得のいく曲だと分かります。お国ものということでオーケストラはのびのびと演奏しいます。多分、演奏会と同じプログラムで録音されたものだと推察されますが、テンポは小沢任せ、演奏はオケ任せ的に曲は進みソロ楽器が思う存分鳴っています。

 小沢のフランスものというとグラモフォンに録音したラヴェルが筆頭に出てきますが、ビゼーも捨てたものではありません。このオケとは相性がいいのか一連の録音では、サンサーンスの交響曲第3番なんかもなかなかの快演です。

こちらの写真はミュンシュの演奏のLPのジャケット

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