憧れの絵師さんがXでおっしゃっていたアンドレの尋常ならざるオスカルさまへの愛の話。稚拙なペンですが小話妄想してしまいました。(;^ω^)

 

『ひとでなしの恋』

 

 

薄れる意識の中でオスカルの声が聞こえる。

なにを言っている?泣いているのか。泣かないでくれ、オスカル。

これは定めだ。

ずっと以前から。おまえを愛してからの俺の定め。

俺の身体は俺のものではない。俺のすべてはおまえだけのもの。

あのはじめておまえに出会った日から。

 

 

冷たい石畳の上に仰臥するアンドレを見てアランは心の裡に呟く。

常人じゃねぇと思った。

こめかみ掠めて銃弾ぶち込まれたときのあの眼、狂ってるって思ったもんだ。

俺たちの前で隊長を女らしいと平然と言ってのける。

おかしいだろ、従僕だぞ。

従僕が自分の主に恋をしていることをあからさまにできるもんじゃねぇだろ。

アンドレは普通の男じゃなかった。人外だな。ひとでなしだったんだ。

 

 

なぜだ、アンドレ、なぜついて来た?

なぜ見えぬ眼でわたしに、この戦地についてきたのだ?

なぜわたしに眼が見えぬことを言わなかったのだ?

なぜおまえの眼が見えぬことをわたしは見抜けなかったのか?

そうだ、なぜおまえは見えぬ眼でわたしの盾になったのだ?

わたしへの銃弾をその身で庇うことができたのだ?

 

俺が渡した毒ワインのグラスをおまえの指から俺自身がはじき飛ばした夜、俺のわがままで身勝手な恋情はもっと違うもっと深くてもっと大きなものに変貌した。

深層の中で俺は知っていたはずだった。知っていながら自分の欲に溺れていた。

オスカルの胸の鼓動、生命の輝きとその息吹が俺の醜く

ゆがんだ欲望を洗い流し清め去り昇華させたのだ。

俺は俺の定めを悟った。

俺の為すべきことはただひとつ。

オスカルの思いと同化し守り支え続けること。

オスカルがジェローデルと結婚するというならばそれもよし。

文字どおり影となって無言でおまえを守り続ける。

このまま軍に身を置いて死地に向かうというならば俺はおまえの盾となり身を呈して守り抜くまで。

俺の身体はおまえのもの。

 

泣くな、オスカル。

遠く海の深淵のように、広く果てない空のようにおまえだけを愛す。