漫画のキャラに「杏」という名前をたまに見かけます。音感がかわいいし、「あんず」でも「アン」でもすてき。リアルに綺麗な女優さんおられるし。(杏さん、応援しています)

 

 

大島弓子先生の漫画「夏のおわりのト単調」 主人公の名前は杏ちゃんではないのですが。

 

海外赴任する両親にはついていかず母親の妹の家にお世話になることになった高校3年生の袂(たもと)は両親と離れる寂しさもありますが嬉しさもありました。

叔母の婚家は果樹のある広い庭つきの大きな洋館。イケメン大学生とかわいい小学生の従兄兄弟。洋館にふさわしい優しいゆったりとした紳士な叔父。憧れの家、憧れの家族。けれど、袂の真っ直ぐな目は沼の湖面をすこしづつ透かしていくように真実を見てしまいます。

 

夜になるとたびたび抜け出していく叔父に気づいた袂はよく見てみようと杏の木に登ります。叔母に見とがめられるととっさに言い抜けをしました。

「お腹が減っちゃったからあんずの実を食べようと思って。そしたら、今、叔父さまが・・。」

「そんなもの、食べないで!仕方ない子ね、サンドイッチを作ってあげるわ。主人はちゃんと寝室にいますよ!」

サンドイッチを作る叔母さんの手が震えています。叔母さんはあきらかに嘘をついているのです。

 

叔父だけではない、従兄も叔母も。やがて袂の憧れは虚構として崩れていきます。崩れた後に叔母一家と袂の心に残ったものは・・・。

 

「女性の感性の漫画」と言われた大島弓子先生の漫画は哀しいだけではない余韻がいつも残ります。

 

杏の実と大島弓子先生の絵柄はとても合っている。

 

だけど、実際には、杏の実、そのままだと酸っぱすぎて、とても腹の足しにはならないと思います。滝汗