【症例】60代のやせた男性の膵頭十二指腸切除術。
合併症はHTくらいで肝腎機能問題なし、DMもなし。
膵臓なので胃切除術の麻酔に準じT8/9からのEpi。
やせている人だったので、paraで5cmで抜けた。
靭帯にはまった感じがはっきりしなかったが、指導医の先生が、
「(空気法で)抜けたガラスシリンジの内筒がスッと戻るその感じは入っていることが多いよ」
と言ってくださり、チュービングしてみると確かにするすると入った。
test dose注入後、スパイナルと同様にコールドロスで効きを確認してから導入。
コールドロスの反応がイマイチはっきりせず、1.5%XyE3ccをさらに追加したところ、はっきり効いている箇所がわかった。左右差もそれほどなさそう。
マスクを顔の上に乗せ、Propを入れてから入眠までの間にEpiから1.5%XyEを5cc追加し
すぐにアナペインの持続を開始。
挿管後はPEEPをかけ、肩枕を入れ枕を低くして頭低位にし、頭をやや左に向け、
エコーをちらっと当てて内頸静脈の走行を確認。ペタペタにつぶれる、脱水気味だ。
Epiと麻酔導入による血圧低下にいつも以上に注意し、エフェドリンで対処。
hypoと緊張で手は冷たく、導入ルートからの点滴はほぼ全開で。
CVはプリセップカテーテルを使用。男性なので15cm固定。
針糸で固定している間に血圧を見ながらベッドを水平に戻してもらう。
その間に看護師さんが18Gのボリュームルートをとってくれる。こちらも早目に落とす。
CVを入れてテガダームで固定したら閉じる左手からAラインを、フロートラックで。
すぐにガスをとってもらい、Kがやはり低値だったのでメインにアスパラKを2Aを入れる。
この頃には術野の消毒は終っており、執刀開始は間近。
硬膜外腔を広げるイメージで、硬膜外にフェンタニル50μgと1%Xy 5ccを追加したところで手術開始。
Epiがちゃんと効いているかドキドキしながらの手術開始だった。
バイタルは安定、効いているようだ。
麻酔をやや深くしてから胃管を挿入。
ミラクリッド20万単位をゆっくりiv、臓器保護目的のPGE1をCVから開始。
PGE1は静脈炎を起こすことがあるため、CVから。
しばらくするとレートが上がり、血圧が下がってきた。
SVVは10強だったので、サリンヘスを1本末梢から全開で落とすと、SVVが5に低下、SVも10近く上昇。
ついでにScvO2も上昇。
プリセップはあまり使ったことがなかったが、ボリューム入れるだけでもScvO2は改善するんだ。
以後SVVを見ながらHES、出血が400-500を超えたあたりでアルブミンを投与開始。
BP↓に対してはDOB2γで開始、それでも心臓悪い人でなく比較的若いので術中1-2γで済み、
退室時にはoffできた。これでダメならNAdを併用するところ。
ScvO2は73以上を保つと良いそうで下回るとRCCを入れるということになるが、
術中はずっと80台をキープできていた。
局麻を効かせてで麻薬を使わない主義のうちの病院では、どうしてもシバリングが起こってしまう。
今日は看護師さんが体の下に温水マットを敷いてくれており、術中体温低下は起こらなかった。
指先を触るとあたたかく、ちゃんと末梢が開いている感じ。
フェンタは導入時に1Aと、術中BP↑HR↑となったところでシバリング予防の意味も込めて1Aだけ入れた。するとHRもBPも落ち着いた。
アルチバは術中0.05γのまま、自発をなくし挿管刺激をとるにはこれくらいの量で充分。
輸液は不足しないように、でも入れすぎないように。
閉創時にロピオンを使用(もっと早く入れた方がいいのかも?)、いろんな工夫のおかげでシバリングせずに済んだ。
ガスでは酸素化は最初から悪くはなかったが、術野から圧排されるので無気肺ができやすい。
筋弛緩を入れるタイミングでリクルートメントを何度か繰り返した。
やせている人だったので、20-25も圧をかければ1300位のtidal volumeが確保できた。
手術は順調に終わり、出血も腫瘍切除前にじわじわと出たがそれでもtotalで700cc程度。
RCC、FFPは結局使わなかった。
手術終盤の腹腔内洗浄時にプチ腸管膜牽引症候群と思われる血圧低下あり。
ネオシネを切っていなかったのでエフェドリン10mgとアルブミン全開で対処。
手術終了後覚醒は良好、シバリングもなく、創部痛もなかった。
CVの刺入部から漏れがあり、1針ナートをかけた。
メスの皮切が大きすぎたようだ。患者さんナート痛くてごめん。
【考えごと】
特に合併症のない人のPDの麻酔は、導入が終わって鎮痛が十分なら、あとはvolume管理に尽きるといっていいかもしれない。
以前「周術期の輸液」という比較的新しい本を読んだ時にまとめたのが、こんな感じ。
・輸液は多すぎず少なすぎず、を目標に
・最初はある程度HES 500-1000位入れて血行動態を安定させた方がよさそう
・輸液どーっと入れてみてSV↑する=fluid responsivenessあり=さらに入れてみる価値あり
・あとは出血量に応じて、Alb、RCC、FFPを補充
・尿量は、気にしすぎないことが大事!
・ScVO2 ≧ 73% に保つと術後合併症↓(EGDTでは70でしたっけ)
最近これを意識してvolume管理をしていると、
totalの輸液量が以前よりもかさまなくて済んでいるような気がします。
結局、麻酔時間7時間弱でHES1000、Alb500、外液2500。尿700、出血700。
あまり絞ると末梢締まるし、たぶん、こんなものなんでしょうね。
HESを入れる時はどどーっと入れて、200とか300とか入れてSVVが改善したら一旦保温庫に戻して外液をポタポタ、またSVVが下がってきたらHESをどどーっと入れる、という感じで使ってるけど、悪くないように思う。
HESやAlbをどどーっと入れると見るからにSVVやSVが改善してくれるので、いいか悪いかは別としても、俺はちゃんと輸液管理をしてるぞ、っていう気分にひたることはできる。
【明日のために】
・メリハリの効いた輸液を。
・空気法で抜けた時、ガラスシリンジがすーっと戻ってくるようなら硬膜外腔に入っていることが多い!まだ固定されていないかも、とTuohy針を進めると悲劇が・・・
・メスの皮切は、ひかえめに。ダイレーターが入ればOKなのです。
合併症はHTくらいで肝腎機能問題なし、DMもなし。
膵臓なので胃切除術の麻酔に準じT8/9からのEpi。
やせている人だったので、paraで5cmで抜けた。
靭帯にはまった感じがはっきりしなかったが、指導医の先生が、
「(空気法で)抜けたガラスシリンジの内筒がスッと戻るその感じは入っていることが多いよ」
と言ってくださり、チュービングしてみると確かにするすると入った。
test dose注入後、スパイナルと同様にコールドロスで効きを確認してから導入。
コールドロスの反応がイマイチはっきりせず、1.5%XyE3ccをさらに追加したところ、はっきり効いている箇所がわかった。左右差もそれほどなさそう。
マスクを顔の上に乗せ、Propを入れてから入眠までの間にEpiから1.5%XyEを5cc追加し
すぐにアナペインの持続を開始。
挿管後はPEEPをかけ、肩枕を入れ枕を低くして頭低位にし、頭をやや左に向け、
エコーをちらっと当てて内頸静脈の走行を確認。ペタペタにつぶれる、脱水気味だ。
Epiと麻酔導入による血圧低下にいつも以上に注意し、エフェドリンで対処。
hypoと緊張で手は冷たく、導入ルートからの点滴はほぼ全開で。
CVはプリセップカテーテルを使用。男性なので15cm固定。
針糸で固定している間に血圧を見ながらベッドを水平に戻してもらう。
その間に看護師さんが18Gのボリュームルートをとってくれる。こちらも早目に落とす。
CVを入れてテガダームで固定したら閉じる左手からAラインを、フロートラックで。
すぐにガスをとってもらい、Kがやはり低値だったのでメインにアスパラKを2Aを入れる。
この頃には術野の消毒は終っており、執刀開始は間近。
硬膜外腔を広げるイメージで、硬膜外にフェンタニル50μgと1%Xy 5ccを追加したところで手術開始。
Epiがちゃんと効いているかドキドキしながらの手術開始だった。
バイタルは安定、効いているようだ。
麻酔をやや深くしてから胃管を挿入。
ミラクリッド20万単位をゆっくりiv、臓器保護目的のPGE1をCVから開始。
PGE1は静脈炎を起こすことがあるため、CVから。
しばらくするとレートが上がり、血圧が下がってきた。
SVVは10強だったので、サリンヘスを1本末梢から全開で落とすと、SVVが5に低下、SVも10近く上昇。
ついでにScvO2も上昇。
プリセップはあまり使ったことがなかったが、ボリューム入れるだけでもScvO2は改善するんだ。
以後SVVを見ながらHES、出血が400-500を超えたあたりでアルブミンを投与開始。
BP↓に対してはDOB2γで開始、それでも心臓悪い人でなく比較的若いので術中1-2γで済み、
退室時にはoffできた。これでダメならNAdを併用するところ。
ScvO2は73以上を保つと良いそうで下回るとRCCを入れるということになるが、
術中はずっと80台をキープできていた。
局麻を効かせてで麻薬を使わない主義のうちの病院では、どうしてもシバリングが起こってしまう。
今日は看護師さんが体の下に温水マットを敷いてくれており、術中体温低下は起こらなかった。
指先を触るとあたたかく、ちゃんと末梢が開いている感じ。
フェンタは導入時に1Aと、術中BP↑HR↑となったところでシバリング予防の意味も込めて1Aだけ入れた。するとHRもBPも落ち着いた。
アルチバは術中0.05γのまま、自発をなくし挿管刺激をとるにはこれくらいの量で充分。
輸液は不足しないように、でも入れすぎないように。
閉創時にロピオンを使用(もっと早く入れた方がいいのかも?)、いろんな工夫のおかげでシバリングせずに済んだ。
ガスでは酸素化は最初から悪くはなかったが、術野から圧排されるので無気肺ができやすい。
筋弛緩を入れるタイミングでリクルートメントを何度か繰り返した。
やせている人だったので、20-25も圧をかければ1300位のtidal volumeが確保できた。
手術は順調に終わり、出血も腫瘍切除前にじわじわと出たがそれでもtotalで700cc程度。
RCC、FFPは結局使わなかった。
手術終盤の腹腔内洗浄時にプチ腸管膜牽引症候群と思われる血圧低下あり。
ネオシネを切っていなかったのでエフェドリン10mgとアルブミン全開で対処。
手術終了後覚醒は良好、シバリングもなく、創部痛もなかった。
CVの刺入部から漏れがあり、1針ナートをかけた。
メスの皮切が大きすぎたようだ。患者さんナート痛くてごめん。
【考えごと】
特に合併症のない人のPDの麻酔は、導入が終わって鎮痛が十分なら、あとはvolume管理に尽きるといっていいかもしれない。
以前「周術期の輸液」という比較的新しい本を読んだ時にまとめたのが、こんな感じ。
・輸液は多すぎず少なすぎず、を目標に
・最初はある程度HES 500-1000位入れて血行動態を安定させた方がよさそう
・輸液どーっと入れてみてSV↑する=fluid responsivenessあり=さらに入れてみる価値あり
・あとは出血量に応じて、Alb、RCC、FFPを補充
・尿量は、気にしすぎないことが大事!
・ScVO2 ≧ 73% に保つと術後合併症↓(EGDTでは70でしたっけ)
最近これを意識してvolume管理をしていると、
totalの輸液量が以前よりもかさまなくて済んでいるような気がします。
結局、麻酔時間7時間弱でHES1000、Alb500、外液2500。尿700、出血700。
あまり絞ると末梢締まるし、たぶん、こんなものなんでしょうね。
HESを入れる時はどどーっと入れて、200とか300とか入れてSVVが改善したら一旦保温庫に戻して外液をポタポタ、またSVVが下がってきたらHESをどどーっと入れる、という感じで使ってるけど、悪くないように思う。
HESやAlbをどどーっと入れると見るからにSVVやSVが改善してくれるので、いいか悪いかは別としても、俺はちゃんと輸液管理をしてるぞ、っていう気分にひたることはできる。
【明日のために】
・メリハリの効いた輸液を。
・空気法で抜けた時、ガラスシリンジがすーっと戻ってくるようなら硬膜外腔に入っていることが多い!まだ固定されていないかも、とTuohy針を進めると悲劇が・・・
・メスの皮切は、ひかえめに。ダイレーターが入ればOKなのです。