最強!ボケ防止と不老長寿。
中国武術の気の力がスゴイわけ。
武術界最大の謎、気の力の秘密を誰にでもわかりやすく解説。太極拳が歳を取っても強い訳や不老不死の法と言われるのはなぜか?
週刊新潮の3月15日号に「万病を遠ざける究極の長生き健康法」として、五行の気という健康法が紹介され、話題になりました。
気の力というと、神秘的で非科学的なイメージがありますが、BUDO-STATIONで五行の気を指導する山田先生によれば、「五行の気は神秘的でも、非科学的でもなく、誰にでも効果がある、極めて科学的で実用的なもの」だそうです。
それは伝統の中国武術の知恵をベースにしている為、現実的な効果が求められるからです。生きるか死ぬかを競う武術はいつの時代、どこの国でもリアリティを基本にしています。
では、リアリティある武術の気とはどのようなものなのでしょうか?
なぜ昔から不老長寿の秘法、と呼ばれ、肉体や精神の強さを増幅することができるのか?その秘密に迫ってみましょう。
[週刊新潮 2018年3月15日号に掲載された山田先生の五行気功の若返り法]
理由その1 武術の本質は長生きすること
武術とは、戦いの体系ですが、その目的は何でしょうか?格闘技をテレビなどで見ている人は、当然敵を倒すこと、と思うかもしれません。しかし、それは武術のほんのひとつの側面にすぎません。
格闘技は試合場があり、審判が必ずいます。一定の試合時間が終わるとそこで判定が出され、勝ち負けが決まるわけです。しかし、武術はこうした試合時間も試合場も決まっていません。
護身の局面を考えると分かりやすいのですが、日常の戦いはいつ、どこで始まり、終わるのか分かりません。
身の危険は突然あなたを襲うわけですが、こんな時に必要な考えは、相手を倒すことではなく、危険な場から立ち去ること。
立ち去ることを邪魔されたら、初めてその障害を取り除く為に暴漢などと戦うことはありますが、その目的は暴漢を倒すことではなく、あくまでも危険から自分の身を遠ざけることです。
無事、家に帰りつくことが、武術の究極の目的であり、格闘技のように堂々と戦ったり、身の危険を賭してまで相手を倒そうとする必要はありません。
武術と格闘技は一見似ているようで、まるで考え方は違うのです。
死なずに生き残ることを主眼とする武術の考え方を発展させれば、究極の勝利は、長生きすること。どんな強い相手にでも、敵より長生きできれば、自分の勝利になるのですから。
そんな考えの伝統武術には、敵を倒すだけではなく、自分は健康で長生きする為の知恵が必ず伝えられています。
それも、実際に効果があり、有効な方法であると実証されているからこそ、今日まで伝え続けられているわけです。
リアリティを求める武術家が、現実に効果のない方法を選択するわけがありません。
これが、正しい武術が効果的な健康法である理由の第一です。
[太極拳は長寿法としても有名。毛沢東も国民の健康増進に24式太極拳を作らせました]
理由その2 武術は気の力で五臓の全てを武器化する
武術とは、いかに身体全体を効率的に使うかと言う体系が中心です。相手を倒したり、制したりする技術体系が中心になるのは、むしろ格闘技であり、武術はその前に自分に身体の使い方を学びます。
なぜなら、効率的な身体の使い方を知らずに技を覚えても、その技は実際には使えないからです。
考えてみて下さい。自転車の高度な運転技術も水泳の技術も、まず、自転車に乗れたり、泳ぐことができる人にとって、初めて有意義なものです。
武術もこれと同じで、非日常的な武術の身体操作は、日常の動きの延長では、なかなか身につかないものです。
しかし、スポーツ界のトップで活躍するような一握りの選手は、自力でこのような身体操作を習得し、活用している人もいます。だから彼らは天才と呼ばれるのであって、一般の人が努力でその境地に行くのはなかなか大変です。
[天才イチローの武術的な身体操作。誰にでもできるわけではありません]
そこで気の力が必要になります。気の力を使う中国の武術は、誰でも非日常的な身体操作を身につけられ、それを戦いにも健康法にも活かすことができます。
これは事実ですが、上のような表現は、武術を知らない一般の人達には大きな誤解を与える恐れがあります。
マンガの気のパワーのように、手を触れずに人を飛ばしたり、超人的な破壊力がすぐに手に入ると思ってもしようがありません。でも、そう言う意味ではないのです。
中国武術の故郷として、昔から有名なのが少林寺。武術だけでなく、様々な鍛錬法や健康法を僧たちが行なってきましたが、少林寺に健康法を伝えたと言われているのが達磨大師。
禅を伝えると共に、易筋経や洗髄経と言われる運動を伝え、僧たちの健康増進を促したと言われています。前者は全身の筋肉、後者は骨の髄まで綺麗にする運動として今日まで伝えられています。
もちろん伝説の域を出ませんが、中国では昔から、全身の筋肉だけではなく、骨まで鍛え、病気に負けない身体を作ろうとしてきた伝統があったと言うことは事実でしょう。
[達磨大師は日本でも有名な禅宗の開祖]
太極拳を初めとする中国の伝統武術は、筋肉だけではなく、骨の髄までコントロールし、自分の身体全体を若く保ち、いざと言う時には、全身をフルに活かして敵と戦います。
この場合の全身とは、中国の武術では、心、肺、肝、腎、脾胃の五つの臓器を中心にしたものです。西洋医学とは違い、道教哲学が元になった、いわゆる漢方の考えなので、五行の気と言います。
通常は自分で働きかけができない身体の奥の臓器まで、どうやって活性化するか?
そこに気の力が必要になります。
具体的には呼吸法と様々なイメージ、そして動作を一致させ、身体の奥に働きかけます。
中国の武術では、身体の五行と動作の五行が対応しているので、このような働きかけが可能になります。
皆さんがご存知の太極拳だけでなく、形意拳や八卦掌、八極拳など、内家拳と呼ばれる拳法は道教的哲学に影響を強く受けているので、こうした効果は顕著です。
自分の身体の奥の臓器や骨に働きかけるには、脱力し、姿勢を正し、呼吸とイメージと動作をあわせることです。
24式太極拳などを一度でもやったことのある人はピンとくるかもしれませんが、これらは太極拳の姿勢と動作の注意点と同じですね。
[身体の臓器を木、火、土、金、水の五行に当てはめ、互いに影響させ、全てのバランスを取るのが東洋の伝統的な考え]
大切なことは、必ず五行の臓器と動作を、結びつけることです。
なぜなら、気の力とはそれだけでは武術的に効果がある訳ではなく、体内の経絡や血管を経由して、五行に働きかける伝令役として活躍することで、初めて現実的な効果を生み出すからです。
だから手から気のパワーが出たりする訳ではありませんが、気を通して五行に働きかければ、結果として強くて素早い打撃が誰にでも可能になることは事実です。これを発勁と言いますが、決して神秘的なものではありません。
発勁にしろ、気の力にしろ、極めて現実的で具体的なものです。
自転車や水泳の例を上げたように、一度五行の気を使いこなせるようになると、一種の不可逆的な身体の変化が起こります。
自分は一瞬で強くて速い動きがいつでも可能になり、これに伴い相手の動きが簡単に読めるようになる。すると歳を取っても強さがあまり衰えず、むしろ増していくことさえ可能となります。
一度自転車に乗れるようになったり、泳げるようになれば、練習せず、久しぶりに行なっても身体が動くのと同じですね。
武術の気の力とは、実はこのようなものであったのです。気の力自体は筋力が概念にすぎないように、それだけではリアルな武術には必要とされません。
しかし、筋力トレーニングをして、重い物を持ち上げられるようになれば、それは筋力のアップを意味します。
同じように、五行の気が以前より身体で表現できるようになれば、それは五行の気がアップしたことを意味します。
気の力を通し、非日常的な動きがマスターできたと言うことは、肉体自体を後天的に変化させたと言うことです。
もちろん、毎日身体に働きかけ、肉体自体を変化させるには、五年、十年と時間がかかりますが、時間はかかっても、確実に効果がある事をリアリティを求める武術家は大切にします。
従って武術家の語る気の力は極めて現実的なもので、イメージだけで気を増やそうとする近年の気功法や自律訓練法、瞑想法、自己催眠法などとは一線を引かねばいけません。これらをひっくるめて気の力と言ってしまうと、曖昧で神秘的になり、実際の効果が薄いものになったり、ひどい時には偏差という、悪影響を脳に与えることさえあります。
こうした悪影響を無くして、確実に身体に働きかけることが可能に工夫されているのが、何百年も歴史があり、体験的に効果が実証されている武術の教えです。
道教では、人間は生まれた時から老いはじめると考えます。生まれ時に親から貰った先天の気は徐々に失われていきますが、五行の気では、後天の気を取り入れ、身体の奥まで、新鮮なエネルギーを充電し続け、若さを保ちます。
この方法が道教では不老不死の法と言われますが、五臓が常に働きかけることで交感神経や副交感神経を自己コントロールすることも可能となり、ほとんどの病気の原因となる自律神経の失調などがなくなります。
感染症以外の多くの病気の原因を排除し、免疫力を向上させるわけですから、これほど確実な長寿法はありません。
[人間は生まれた時から老いはじめる。でも、後天の気を養えば誰でも若がえると考えるのが道教思想。武術はこの知恵を最大限に利用します]
また、達磨大師が易筋経の他に洗髄経を伝えたと言われたように、若さを保つには五臓に加えて、骨の若さを保つことも大切です。
簡単に言えば、若い時にスッと伸びていた脊柱が、歳をとるほど前に丸まっていく。こんな姿勢ではいくら五臓を若く保っても内臓が悪影響を受け、様々な悪症状が出てくるのは当然です。
八卦掌を初め、内家拳では脊柱を伸ばしたり捻ったり、様々な刺激を与え続けて若さを保ちます。
[八卦掌で骨の髄まで若がえる]
また、このように、日頃から精緻で非日常的な動きを自分の身体に命じることは、恒常的に脳の運動野の血流を増加させることにつながります。
近年の研究では、運動野の血流の増減がボケ防止に大きく関わっている、と言われています。
始めに述べたように、武術の究極の目的は健康のまま長生きすることです。この目的の為に、武術の健康法は、文字通り命がかかっているため、深く、精緻に、効果的にならざるを得なかったのです。
いくら長生きすると言っても薬漬けや心がクヨクヨしながらでは楽しくありません。
常に脳と身体に刺激を与えながら、ボケも無く、病気も怪我も無く、生き生きと長生きしたいものです。そして、その為の知恵が武術には詰まっています。
お年寄りが増え、楽しく健康的な毎日を送ることが求めらている今日、古くから伝えられている東洋の武術の知恵を、ぜひもう一度見直してください。あなた自身の人生がきっと変わるはずです。







